粛々と運針 公演情報 iaku「粛々と運針」の観てきた!クチコミとコメント

  • 実演鑑賞

    満足度★★★

    幾何学的なデザイン。ステージと客席はシームレス。大きな円形の輪っかが天井から吊り下げられている。バックには左右から登る階段と中央の谷間、その上に白く長いシーツが被さってM字を描いている。開演すると円形の輪っかが斜めに降りて来る。階段を登って鄭󠄀梨花(チョン・リファ)さんと林英世さんが左右に腰を下ろし、白い布を手に取り縫い物を始める。チクタクチクタクと。運針=並縫い。輪っかの下りた中央がステージ。その外では椅子に座って出番まで待っている役者達。

    中山義紘(よしひろ)氏と佐々木ヤス子さん夫婦の物語。オカマを掘られて首にコルセットを着けている中山義紘氏。夢だった一軒家を建てローン返済の為にもバリバリ働く佐々木ヤス子さんは課長代理38歳。家の周囲で子猫の声がする。猫を見付けたい。中山義紘氏は小動物が苦手で見付けた所でどうするの?と口論になる。変な空気。佐々木ヤス子さんはある相談をする。

    花戸祐介氏、鈴鹿通儀氏兄弟の実家。家を出て結婚もしている弟と40過ぎても高校出てずっとコンビニのバイトを続けているだけの兄。母親が膵臓癌で入院、手術が必要。本人は尊厳死を望むと言う。それに肯定的な弟と絶対に許せない兄の口論。

    三組の会話が並行して語られる。
    佐々木ヤス子さんは38歳設定にしては若すぎる。井上貴子と福田麻貴をフュージョンさせたような感じ。凄く魅力的な女優。
    中山義紘氏は村野武範の若い頃みたい。

    テーマは「生と死と自分と他人」。ずっと自分のことも含め考え続けてしまうような舞台。
    是非観に行って頂きたい。

    ネタバレBOX

    運針の手を止め、林英世さんが鄭󠄀梨花さんに話すのは実家の川沿いに立つ桜並木の思い出。春に満開の桜が咲き誇り桃色の花びらが風に舞って飛ぶ様。川に降り落ちる花びらを筏に乗り法被を着た職員が笊で掬う風物詩。今では桜の樹は全て切り倒され川にはフェンス。当時の面影の欠片もない。個人的にはこのエピソードが一番好き。

    花戸祐介氏が母親に孫の顔を見せてあげたいからと弟に子作りを求める。その論理に無理があってイマイチのれない。(作品展開上の都合みたいで)。

    佐々木ヤス子さんの抗弁が光る。世間的に「正しい」とされていることは果たして「正しい」のか?観客が求めるのは所謂「正しさ」のハッピーエンド。それで安心する。だがそれは思考放棄した所謂「正しさ」、現実とは繋がらない。嘘じゃなく本当が欲しいんだ。

    生きている人間の世界外にいる存在がチクタクと時間を縫って進めていく。どんな答が出ようが出まいが時間だけは過ぎていく。100%の正解なんて何処にも見付からないまま、小さな選択を繰り返して生きていく。それが正しかったのか間違っていたのかさえもう誰にも解らない。

    まだ産まれてもいない鄭󠄀梨花さんの存在が微笑ましい。

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    2026/04/10 18:29

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