THIS HOUSE 公演情報 THIS HOUSE」の観てきた!クチコミ一覧

満足度の平均 4.5
1-6件 / 6件中
  • 実演鑑賞

    満足度★★★★

    鑑賞日2025/11/22 (土) 13:00

    ちゃんと翻訳劇でちゃんとJACROW。会話の感じやビッグベンの文字盤(の一部)を配した装置の印象は翻訳劇っぽく、内容は「政治劇のJACROW(←プレトーク冒頭の中村主宰の名乗り)」で、「両親の遺伝子をきちんと継承した嫡子」みたいな(真顔)。
    で、作品に関する予備知識的な10分ほどのプレトークに続いて始まる本編、「このイントロはもしや?」なあの曲を出演者たちが歌う(!)のを始めとして4曲も歌が入り(2曲は戯曲指定、残り2曲は演出選曲とのこと)もうそれだけでも娯楽性十分。
    そうして描かれるのは1974年に労働党が少数与党として英国の政権を握ってから4年半の顛末、少数与党とか初の女性首相とか今の日本と共通項がありながら内容的には天と地ほど異なるのが面白いと言おうか情けない(毒)と言おうか……。
    また「いかにも政治家たち」な出演陣の役作り(衣装・メイク含む)も的確で見事。翻訳劇という「新たな武器」も得たのではなかろうか?
    ところで2~3回流れたイントロだけのあの曲はザ・フー「無法の世界」?

  • 実演鑑賞

    満足度★★★★★

    終わってみればじんわり沸々湧き出ずるものあり。
    近代民主主義発祥の英国で、二大政党である労働党と保守党(その他の少数政党もある)の法案審議の都度熾烈な駆け引きが繰り広げられる様を通して「民主主義」という錦の御旗(これを裏付ける権威として王室も機能している)をギリギリの所で守り抜いている国家の矜持がじんわりうっすらと浮かび上がる。
    どちらかと言えば労働党側に視点を置いて描写され、やがて不信任案の動議で政権が解体、サッチャー時代を迎える直前で芝居は終わる。そして短いテロップが流れる。経済重視の政策を推し進めたが格差は広がり人々は苦しむ事となった・・。作者の結論。明快だ。

  • 実演鑑賞

    満足度★★★★★

    鑑賞日2025/11/24 (月) 14:00

    座席1階

    政治をテーマにした劇では最早、右に出る者はないと思われるJACROW。今回、主宰の中村ノブアキが挑戦したのは初の翻訳劇で、座員がジェームズ・グレアムの作品を翻訳した。休憩を挟んで3時間を超える大作だが、JACROWお馴染みの俳優たちによる迫力ある熱演に時間を感じさせない。

    舞台は労働党政権の英国議会。ビッグベンの大時計を模した舞台美術が効果的だ。2大政党が多数を得られないハング・パーラメント(宙吊り議会)で、与党の法案を通すための多数派工作など議会の舞台裏を描いている。

    田中角栄のシリーズでも政争劇をリアルに展開したこの劇団の得意技。同じ多数派工作でも、英国議会の歴史と伝統を織り交ぜた慣習が示され、とても勉強になった。2大政党が病欠など欠員数を「ユージュアル・チャネル」と呼ばれる場で調整するなど、なるほど伝統の英国議会はこうなのかと何回も感嘆した。議場を閉鎖して中にいる議員だけで採決するのは日本も同じだが、興味のない法案採決には出てこない議員がいるからあの手この手で引っ張ってくるというのは面白かった。数の論理で政治が動くさまをリアルに体験できる。
    2大政党の議員だけでもかなりの数に上り、シアタートップスの最前列を俳優の待機場所にしているが、これが客席との一体感を生む迫力を醸し出している。2大政党両党の院内幹事室の舞台転換も、照明が当たらない方の俳優をストップモーションにしてすばやく切り替えるなど、なかなか切れのいい演出だ。
    一つだけ物足りなかったのは、数多く出てくる対決法案の具体的中身だ。日本人向けの舞台だから法案の名前だけでなく、もう少し背景を説明してもよかったのではないか。例えば社会保障法案にしても、労働党政権が出した法案がどんなものだったのか、保守党はどこがまずいとして反対したのか、単なる政争劇でなく当時の英国の社会情勢を理解できる助けになったと思うのだが。少しの説明でよいので加えてほしかった。

    鉄の女・サッチャー政権前夜の内閣不信任案可決までを追った舞台だが、納得感が得られるのはラストシーンの字幕だ。演出家の意図を十分に感じ、同意することができる。次回作にも大いに期待!

  • 実演鑑賞

    満足度★★★★★

    鉄の女サッチャー首相が誕生する前日談を
    対抗勢力から描いたイギリス国会ものの芝居でした
    お時間ある方はぜひ

  • 実演鑑賞

    満足度★★★

    T.REXの「Get It On」の合唱からスタート。
    Get it on, bang a gong, get it on
    ヤろうぜ、ゴングを鳴らせ、ヤろうぜ。

    よっぽどグラム・ロックが好きなんだな、と思っていたがデヴィッド・ボウイの「Rock ‘n’ Roll Suicide」も「Five Years」も戯曲の指定だそうだ。

    1974年2月イギリス総選挙にて労働党が政権を握る。全635議席(過半数318議席)中、労働党301議席、保守党297議席、その他36議席。法案を通すには常に少数政党の協力を仰がねばならないギリギリの事態。院内幹事=執行部はあの手この手で政権の維持を図る。

    谷仲恵輔氏から幹事長の後継者に指名された熊野善啓氏は労働党政権を維持する為に試行錯誤し苦しみ抜く。自分の器に余りある仕事、だが泣き言を言っても誰も助けてはくれない。次から次へと造反、スキャンダル、病気···、トラブルの雨あられ。

    保守党(俗称・トーリー党)、党のカラーは青。中流階級出身が多数。
    佐藤貴也氏、今里真氏、小平伸一郎氏。

    労働党、党のカラーは赤。労働者階級、労働組合出身が大多数。
    谷仲恵輔氏、狩野和馬氏、熊野善啓氏、芦原健介氏、福田真夕さん。

    ユージュアル・チャネル(Usual channels)=「通常の経路」と隠語で呼ばれる非公式の取り引き。与党と野党の院内幹事が議会前にするオフレコの打ち合わせ。これがあることで最低限の信頼関係が得られた。

    ペアリング(Pairing)=重要な採決に参加出来ない議員がいた場合、ユージュアル・チャネルで互いの欠員数を揃えるように調整する非公式の取り引き。

    奇矯な発言と突飛な行動で世間を混乱させる三原一太氏。山里亮太や鈴木もぐらっぽいか。
    病身を押し老体に鞭打ち、党に身を捧げる大竹周作氏は大泉滉や本田博太郎っぽい。

    どこの国でもやってることは一緒。所詮人間。
    是非観に行って頂きたい。

    ネタバレBOX

    1979年5月の総選挙でマーガレット・サッチャー率いる保守党が政権奪取、初の女性首相に。1990年11月まで11年君臨した。

    「Rock ‘n’ Roll Suicide」
    Rock ‘n’ Rollの美しい高揚は現実生活との折り合いが付かず自死へと向かう。惨めでナルシシスティックな自己完結。だがボウイはこの歌で必死にそれを阻止しようとする。  

    聞いてくれ、苦しんでいるのはお前だけじゃない
    お前がどう生きて、何処の誰であって
    どんな人生を経てきようがそんなの構わない
    この世の全てのナイフにズタズタに切り裂かれる痛み
    それは俺も同じなんだ、痛みなら分かち合える
    それはお前だけじゃないんだ 

    「Five Years」
    滅亡まであと5年と宣告された地球。ニュースでそれを知らされた者達が町中でそれぞれの反応を示す。泣いても笑ってもあと5年。5年経ったら皆消えて失くなってしまう。

    これを谷仲恵輔氏が真っ赤なスーツで熱唱、美声で聴かせる。イギリスの政権の最長任期が5年である為、解散総選挙さえ阻止すれば5年間政府を維持出来る。労働党の院内幹事達の意地でも5年乗り切ってやる、という歌になっている。

    ブルーハーツの「イメージ」のイントロみたいな曲は何だろう?モット・ザ・フープルか?

    ※イギリスは二院制を採用しているが庶民院(下院)が貴族院(上院)よりも優位とされている。庶民院は選挙で選ばれるが貴族院は貴族の中からの任命制である。

    ※The Who「無法の世界」
  • 実演鑑賞

    満足度★★★★★

    JACROWで翻訳物を初めて観たが、まるでJACROWオリジナルのようなテイストになっている。舞台設定はまさに今の日本の状況と見紛うほどだが、ストーリーはかなり面白いし、政治的駆け引きだけでなくちゃんと人間ドラマになっている。長大な歴史や政治の芝居は下手すると筋を追うだけの退屈な劇になりかねないものだが、本公演は字幕の使用や歌、俳優たちの動線など演出が良く考えられていて飽きさせない。こういう作品はJACROWが本当に巧い。

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