THIS HOUSE 公演情報 JACROW「THIS HOUSE」の観てきた!クチコミとコメント

  • 実演鑑賞

    満足度★★★★★

    鑑賞日2025/11/24 (月) 14:00

    座席1階

    政治をテーマにした劇では最早、右に出る者はないと思われるJACROW。今回、主宰の中村ノブアキが挑戦したのは初の翻訳劇で、座員がジェームズ・グレアムの作品を翻訳した。休憩を挟んで3時間を超える大作だが、JACROWお馴染みの俳優たちによる迫力ある熱演に時間を感じさせない。

    舞台は労働党政権の英国議会。ビッグベンの大時計を模した舞台美術が効果的だ。2大政党が多数を得られないハング・パーラメント(宙吊り議会)で、与党の法案を通すための多数派工作など議会の舞台裏を描いている。

    田中角栄のシリーズでも政争劇をリアルに展開したこの劇団の得意技。同じ多数派工作でも、英国議会の歴史と伝統を織り交ぜた慣習が示され、とても勉強になった。2大政党が病欠など欠員数を「ユージュアル・チャネル」と呼ばれる場で調整するなど、なるほど伝統の英国議会はこうなのかと何回も感嘆した。議場を閉鎖して中にいる議員だけで採決するのは日本も同じだが、興味のない法案採決には出てこない議員がいるからあの手この手で引っ張ってくるというのは面白かった。数の論理で政治が動くさまをリアルに体験できる。
    2大政党の議員だけでもかなりの数に上り、シアタートップスの最前列を俳優の待機場所にしているが、これが客席との一体感を生む迫力を醸し出している。2大政党両党の院内幹事室の舞台転換も、照明が当たらない方の俳優をストップモーションにしてすばやく切り替えるなど、なかなか切れのいい演出だ。
    一つだけ物足りなかったのは、数多く出てくる対決法案の具体的中身だ。日本人向けの舞台だから法案の名前だけでなく、もう少し背景を説明してもよかったのではないか。例えば社会保障法案にしても、労働党政権が出した法案がどんなものだったのか、保守党はどこがまずいとして反対したのか、単なる政争劇でなく当時の英国の社会情勢を理解できる助けになったと思うのだが。少しの説明でよいので加えてほしかった。

    鉄の女・サッチャー政権前夜の内閣不信任案可決までを追った舞台だが、納得感が得られるのはラストシーンの字幕だ。演出家の意図を十分に感じ、同意することができる。次回作にも大いに期待!

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    2025/11/24 17:58

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