公演情報
「焼肉ドラゴン」の観てきた!クチコミ一覧
実演鑑賞
満足度★★★★★
最初に見た9年前の三演の感動が大きかった。今回はそれをなぞるような味方になったが、でも新しい発見もあった。
ムードメーカーの太った常連客の櫻井章喜が目立った。また歌手志望の三女もよかった。歌もうまいし、笑いを取る。これが知らない俳優だが、何と韓国の女優。日本語もうまかったので、日本の女優と言われても驚かないくらいだった。父が片腕だったのをすっかり忘れていた。父役は新しい韓国俳優、母役は初演・再演と同じコ・スヒで、ふたりともよかった。
前回の中学生の大窪人衛、哲男の高橋務が印象深い。
実演鑑賞
満足度★★★★★
鑑賞日2025/10/23 (木) 13:00
腹の底から搾り出すような、やり場のない怒りと悲しみの台詞に圧倒される。
怒涛のように笑っても歌ってもつかみ合いの喧嘩をしても、
深いところには涙の川が流れている。
宿命とか運命とか言ってあきらめるにはあまりにも過酷な人生。
国って何だ? 人を幸せにしない国って何なんだ?
それに耐えて生きている人々の姿に、ただ泣いているだけの自分が情けなくなる。
実演鑑賞
満足度★★★★★
鑑賞日2025/10/22 (水) 13:00
日韓国交正常化60周年記念公演『焼肉ドラゴン』作/演出 鄭 義
舞台の伊丹市とほど近い神戸に住んでいた。時代は1969年から71年、中3から高2だっただったか。小中、特に小学校では韓国出身のクラスメイトが多かった。台湾ルーツの子供も。通学経路には朝鮮学校があった。社会人になって鶴橋の焼肉屋にはたまに行っていた。焼肉の匂いに包まれる街。
時代を切り取る流行語や、上演前のアコーディオンで弾いていた曲達は懐かしかった。
在日韓国人、直接的には描かれてなかったが、差別。そして居住している劣悪な環境の地区。
戦後を生きて来た両親、そこで育った子供達、三姉妹、彼が生きた 3年を描いた 2時間45分の上演。私立中学での韓国人へのいじめ、自死を選んだ彼。時生はちょうど同じ世代だ。生きて欲しかった。我々の世代はいじめはほとんどなかったのだけど、小学校時代、同級生は何人とか何も気にしていなかった。
劇中、台詞にあった済州島での事件のこと、あとで調べてみるが、島民の惨殺/虐殺。
次女夫婦の北朝鮮への移住。在日の帰還事業の結末を知っている訳で、あの出発がどういうことを意味するのか、悲しい気持ちを抱く。
そういったことを背景に、厳しい時代を生きて来た夫婦の姿、家族、時生の姿に最後は涙が止まらなかった。
でも、あの最後のシーン、笑いを生んでいた様に、次へのスタート、辛いことになるのだけど、次へと歩き出す姿だと受け取った。未来への消えていったのだと
実演鑑賞
満足度★★★★
第一幕90分休憩15分第二幕75分。
チェーホフの『三人姉妹』をだぶらせる人が多いと思う。立ち昇る諦念は『ワーニャ伯父さん』や『桜の園』にも。人生を蹂躙される不合理を運命だ宿命だと無理矢理受け入れ生きていかざるを得ない。無力なんだ、人間は。でもそれだって気持ち次第だろう。気持ちの持ちようで何とか生きていける。それはどんな気持ちなのか?一体どんな?
飛行機が近くを飛ぶ度に轟音と振動、桜の花が音を立てて散ってゆく。ピンクの雨がスラムのトタン屋根を染め上げる。少年はそれが好きで好きで堪らなかった。明るかった少年は日本人ばかりの私立中学校に入れられ差別と虐めで失語症を患う。登校拒否で日がな屋根の上に登り自分の世界に浸った。こんな町は大嫌いだ!こんな連中は大嫌いだ!自分の出自を呪うように汚らしいゴミの町を睨みつける。そんな町を一瞬にして桜吹雪が塗り替えてくれる。
1969年春、大阪国際空港に近い伊丹市中村地区、国有地を不法占拠して暮らす在日韓国人の集落。太平洋戦争で左腕を失くした隻腕の男、金龍吉〈キム・ヨンギル〉(イ・ヨンソク氏)の営む「焼肉ドラゴン」。妻(コ・スヒさん)、右足の悪い長女(智順〈ちすん〉さん)、次女(村川絵梨さん)、クラブで働く三女(チョン・スヨンさん)、中学生の長男(北野秀気氏)。
常連客の太った陽気な櫻井章喜(あきよし)氏、アコーディオン奏者の朴勝哲(パク・シュンチョル)氏、韓国太鼓(チャング)奏者の崔在哲(チェ・ジェチョル)氏。櫻井章喜氏の親戚であるキム・ムンシク氏が時折顔を出す。彼はリヤカーにドラム缶二つ載せて5km離れた豊中まで豚の餌としてうどんの茹で汁を貰い受ける仕事をしている。
次女の婚約者、千葉哲也氏、大学出だが仕事が続かず遊んでばかりいる。
三女の働くクラブ支配人、石原由宇氏。かっぽれが持ちネタで多才な男。歌手を夢見る三女は彼に夢中。
砂利をトラックで運搬して羽振りのいい韓国人、パク・スヨン氏は舞の海似。
1970年に大阪万博が開催される為、都市開発の名のもとに朝鮮部落の解体が強制執行、1971年までの物語。
お父さん=アボジ、パパ=アッパ。
お母さん=オモニ、ママ=オンマ。
「これが私の宿命なのか···。」といつも嘆いているコ・スヒさん。
「たとえ昨日がどんなでも、明日はきっとえぇ日になる。」と自分に言い聞かせるように呟くイ・ヨンソク氏。
「帰るところはない。日本で生きていくしかないんや。」
キャスティングが神懸かっている。当て書きとしか思えない。この中で暴れ回る千葉哲也氏は日本代表の貫禄。
必見。