公演情報
「蝉追い」の観てきた!クチコミ一覧
実演鑑賞
満足度★★★★
似通った設定や劇世界との指摘は承知の助、「大体3つ位のパターンを順繰りにやってる感じ」と東憲司氏本人が言うように、今回は炭鉱の話だが、毎回の作劇の着想や強調点の微妙な(そして決定的な)違いは今作にもあった。「形やテンポで見せるノリの芝居」と「リアリズム演技」の浸食のし合いという視点が自分にはあって、リアリズムとの劇的な邂逅の舞台として音無美紀子との二度の共演が記憶に刻まれている。
今回は作劇上の特徴にハッとしたのだったが、時間が経ってしまって今思い出せない(よーく細部を反芻しないと)。
役者としては前々作が増田薫であった実力を問われる脇の役どころの位置に、今作では三村晃弘氏。
炭鉱と言えば、落盤事故の際、被害が広がらないよう水を流し込むというのがある。救出は絶望的と判断され、救出の可能性を断つ無慈悲な措置。先日観た「三たびの海峡」にもこのモチーフがあった。桟敷童子の今作では「そろそろ呆けの始まった一人暮らしの男」(山本宣)の奇行の源を探って行く過程でその事実に行き当る。
冒頭、男が暮らす実家に三人の女がやって来る。男と疎遠になった三姉妹だが、近頃見知らぬ女が出入りしているとの噂を聞いて真偽を確かめに来た。この三姉妹が長女板垣、次女もり、三女大手このコンビが何とも良い(美味しい)。
群像劇としては一人一人の役の担う重量が今回やや軽く、その分人物同士の繋がりの線が薄く、もう一掘り描写が欲しい実感はあったが、こういう回もあるのかと逆に新鮮であった。
実演鑑賞
満足度★★★★★
鑑賞日2025/05/29 (木) 14:00
老齢の父に何やらアヤしい女が付きまとっているとの噂を耳にした三姉妹が様子を伺っていると……な物語。
冒頭場面から笑いも多く、その後の展開もいつもの「重悲劇」と趣を異にする。
老父の認知症の度合いが次第に深まってゆくのはおそらくは大多数の人が経験するであろうことであり確かに切ないが「受容できる」感じ。
そして幕切れも状況の進展(とはいえ「好転」ではない)なのでいつもよりマイルドに感じたのかも。
そしてその中に親子の情をしっかり描いているのはやはり桟敷童子と言えようか。
こういうのもイイなぁ♪
実演鑑賞
満足度★★★★★
郷愁を誘う音楽・照明がどこか懐かしくも切ない雰囲気を演出。物語となる話自体は、とても身近であり、普段見慣れた、これぞ桟敷童子の本領発揮的なスペクタクル演劇とは一線を画す。それでも役者の熱演と舞台装置が相俟って、非日常で、終始夢見心地な観劇体験を堪能。
実演鑑賞
満足度★★★★★
鑑賞日2025/06/03 (火) 14:00
座席1階
舞台のタイトルになっている「蝉追い」は、セミを夏の神様に見立てて手作り灯籠で行うお祭り。福岡地方の習俗なのかどうかは分からないが、ずっと地面に潜っていて地上で生きるのはわずか1週間。セミは、地中で作業する炭坑のメタファーであり、地元で起きた悲惨な炭鉱事故がモチーフとなっている。炭坑三部作と称される作品の一つ「オバケの太陽」や「泳ぐ機関車」を思い出した。
今作の舞台美術。開演前、客席の階段まで劇場は夏らしく青々とした木々、葉っぱで埋め尽くされている。物語の中心となる家族は夏ミカンの農家をしていたということで、登場する夏ミカンの色が緑に映えた。桟敷童子の舞台はこうした作り込みが魅力であり毎回楽しみにして元・倉庫の劇場に出かけていくのだが、今回も期待を裏切らない。
先人も書いていたが、今作のMVPは鈴木めぐみ。3人の幼い姉妹を捨てて駆け落ちをし、30数年ぶりにちゃっかり戻ってきたおばあちゃんを演じている。その夫役は客演の山本亘。ミカン農園主だったが、今や農園は荒れ果て、3人の娘も寄り付かない。そして、舞台が進むに連れて出てくる認知症状。この描写が実にリアルだ。
3人姉妹は桟敷童子の看板である板垣桃子、もりちえ、大手忍だが、今作でもその実力を遺憾なく発揮している。東憲司の世界観を体の底からよく理解しているからだろう。「お父さんが不審な女を連れ込んでいる」と耳にして3人そろって帰ってきてそっと状況を伺うという場面からスタートするが、両親への思い、特に自分たちを捨てた母親への複雑な胸の内の変化を涙が出るほどうまく表現している。また、3姉妹それぞれに苦悩を重ねた人生の物語があって、これが家族の群像劇として深みを与えている。
お約束のラストシーンは派手さはないものの、桟敷童子ならではの終幕だ。3姉妹が使っていたというミカンの図柄の茶わんなど、細部にもきちんと目をかけた演出だ。
あまりにスキがない感じもするが、今回も秀作だ。見逃さないようにしたい。
実演鑑賞
満足度★★★★★
今や油断してるとあっという間に予約がいっぱいになってしまう劇団さん
物語性を追うというより作演が経験した認知症への戸惑いを追体験するような作品
高齢層の方々は認知症に成る側と世話する側のどちら目線で観てたのか気になりました
夏の日差しが眩しかったです
セミの鳴き声は鳴き出したらうるさいだけだから意識させなかったんでしょうか
帰りに見たスカイツリーがだいだい色でした
実演鑑賞
満足度★★★★★
作家が創り出す世界観に各俳優が実に巧く溶け込んでいる。客演の藤吉久美子氏まで劇団員の一人であるかのようにすっかり溶け込んで突出せず、その役を果たしている。何と見事なチームだろうと感嘆させられる。安定した実力を遺憾なく発揮できる劇団と作家。
実演鑑賞
満足度★★★★
メチャクチャ面白い。井上ひさし的でもある。東憲司氏の何度目かの最盛期が来ているのか。作家の狂い咲きをリアルタイムで味わえる観客は幸運だ。もう座組がオールスターに見えてきた。かなり笑いをまぶしている。
時代は1986年、雨の中、実家を見張る三姉妹(板垣桃子さん、もりちえさん、大手忍さん)の姿。一人暮らしの父親(山本亘〈せん〉氏)に女(鈴木めぐみさん)の影が。かつては夏蜜柑を栽培する農園(梁瀬農園)だった。一体何者か?
板垣桃子さんは高市早苗に似てきた。
井上莉沙さんの存在は大きい。若い娘がいるだけで作品世界が広がる。今回の引っ込み思案の少女役のキャラクターも見事。
親方の瀬戸純哉氏はもりちえさんの旦那でもある。プロレスラーのパイナップル華井(現Ken45)っぽい。
「ですよね〜」三村晃弘氏は助演男優賞もののキャラ造形。
山本亘氏と鈴木めぐみさんがMVPだろう。
山本亘氏82歳!!素晴らしい。鈴木めぐみさんのキャラの強さと妙なリアルさ。
桟敷童子はチケット取れたら一度は観ておいた方が良い。ちょっと凄い所まで来ている。『父と暮せば』みたいな永遠に残る作品が生まれそうな雰囲気がある。観客の期待値も高く磁場がバチバチ起きている。
実演鑑賞
満足度★★★★★
面白い、お薦め。
九州の或る旧炭鉱街を舞台にした家族の物語。誰もが避けて通れない老い、それを遠い過去の痛ましい事故とその地域の風習を絡め、情緒豊かに描いた傑作。
昭和61年 梅雨から夏にかけての時期、梁瀬家(農園)が舞台。冒頭、老いた男女をつけてくる女3人の軽妙な会話で、一気に物語へ引き込まれる。桟敷童子らしい舞台美術、そして効果的な音響・音楽や照明の諧調は実に見事。また毎公演 驚かされるラストシーンも…。何といっても、梁瀬農園の主 梁瀬守男を演じた山本亘さんのラストシーンの演技が圧巻で、熱いものが込み上げてきた。
さて 痛ましい事故は事実、そしてフライヤーの絵柄にある 夏みかん が重要な役割を果たしている。まさに虚実綯交ぜにした舞台で、見応え十分。ちなみに、当日パンフに次回新作公演が「一九一四大非常」とあり、公演のラストシーンに現れる装置にも「19141215」とある。この数字が意味を持ち、本作と次回作の関連をうかがわせるような気も…。
(上演時間1時間45分 休憩なし)