蝉追い 公演情報 劇団桟敷童子「蝉追い」の観てきた!クチコミとコメント

  • 実演鑑賞

    満足度★★★★

    メチャクチャ面白い。井上ひさし的でもある。東憲司氏の何度目かの最盛期が来ているのか。作家の狂い咲きをリアルタイムで味わえる観客は幸運だ。もう座組がオールスターに見えてきた。かなり笑いをまぶしている。

    時代は1986年、雨の中、実家を見張る三姉妹(板垣桃子さん、もりちえさん、大手忍さん)の姿。一人暮らしの父親(山本亘〈せん〉氏)に女(鈴木めぐみさん)の影が。かつては夏蜜柑を栽培する農園(梁瀬農園)だった。一体何者か?

    板垣桃子さんは高市早苗に似てきた。
    井上莉沙さんの存在は大きい。若い娘がいるだけで作品世界が広がる。今回の引っ込み思案の少女役のキャラクターも見事。
    親方の瀬戸純哉氏はもりちえさんの旦那でもある。プロレスラーのパイナップル華井(現Ken45)っぽい。
    「ですよね〜」三村晃弘氏は助演男優賞もののキャラ造形。

    山本亘氏と鈴木めぐみさんがMVPだろう。
    山本亘氏82歳!!素晴らしい。鈴木めぐみさんのキャラの強さと妙なリアルさ。

    桟敷童子はチケット取れたら一度は観ておいた方が良い。ちょっと凄い所まで来ている。『父と暮せば』みたいな永遠に残る作品が生まれそうな雰囲気がある。観客の期待値も高く磁場がバチバチ起きている。

    ネタバレBOX

    1914年(大正3年)、福岡県田川郡方城町(現・福智町)で起きた方城大非常がモチーフ。日本最大の炭鉱爆発事故で死者は671人。当時の迷信でガスを中和すると信じられてきた夏蜜柑を集められるだけ集めて坑内に投下した。

    36年前、娘三人を置いて他の男のもとに逃げて行った母親。9歳だった長女は妹二人の面倒を見て暮らした。決して母親のことを許しはしなかった。36年後の復縁、それを平気で受け入れるお人好しの父親も許せない。何もかも許せないことだらけ。死別した夫に何の感情も持てなかった長女、浮気相手に本気になって挙げ句の果てに捨てられた次女、中学の教師になるも辞めてしまいこれから何をしていいか判らない三女。

    amazarashi「とどめを刺して」

    ねえ二度と泣かないように 君を見くびる君にとどめを刺して
    僕と逃げよう 潔白ではいられなかった人生呪いながら

    ※今作は家族を捨てた鈴木めぐみさんと捨てられた三姉妹(板垣桃子さん、もりちえさん、大手忍さん)の物語。実は惚けた父親の方城大非常の記憶は背景でしかない。重要なのは絶対に許せなかった母親の行動も人間故であった所以をこの歳になった板垣桃子さんは理解出来てしまうこと、その葛藤。最後の鈴木めぐみさんの土下座が今作の肝。そこを汲まずしてストーリーだけ追っても勿体ない。

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    2025/05/28 14:51

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