音響劇『ドグラ・マグラ』 公演情報 音響劇『ドグラ・マグラ』」の観てきた!クチコミ一覧

満足度の平均 4.5
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  • 実演鑑賞

    満足度★★★★★

    鑑賞日2025/05/06 (火) 14:00

    日本探偵小説三大奇書の1つを地の文の語り・役になっての演技、ムーブメントに歌/ラップなど様々な手法を使い、その場での墨流し映像を背後に投射して主に打楽器的な効果音も加えるというあの手この手、至れり尽くせりで原作に忠実な……というより整理し(当日パンフレットには相関図まである!)分かり易くしての(私見)演劇化。
    それを池上本門寺の子院の本堂で三方囲み客席で上演するので雰囲気も絶妙。
    この「奇蹟」の場に立ち会うことができて幸甚。
    で、これ、「モダン・アングラ」あるいは「ネオ・アングラ」と呼称して良いですか?
    いや、気分的には「シン・アングラ」が一番なんだが……(笑)
    (「シン・」は一連の庵野秀明監督作から既成のものを尊重しつつイマの要素を加えた温故知新系の作品名に冠する接頭辞的なものと認識)

    ネタバレBOX

    欲を言えば終幕は「…………ブウウ――――――ンンン――――――ンンンン………………」であって欲しかったが、観客を入院患者に見立てた本作もアリと思ったので文句ナシ。
  • 実演鑑賞

    満足度★★★★

     言うまでも無く原作は夢野 久作。今年は刊行90周年に当たるということもあって、大田区池上本門寺の直ぐ傍にある本妙院という寺の本堂での公演が企画・上演された。墨流しで得られた形象をコの字を時計回りに90度回転させた空白部分に当たる壁面に映し出し、ドグラ・マグラが発するものを映し出す。これに鐘や和太鼓等様々な音響効果を加えた音響劇として上演したのである。因みに客席はコの字を構成する各直線部分に設えられている。華4つ☆

    ネタバレBOX

     物語が紡がれる場は九州帝国大学精神病科の7号室。現在では日本でも遅ればせながら多少存在するようになった精神科解放病棟の一室である。今作では天才的帝大教授であった正木 敬之教授が初めて提起した狂人の解放治療の実施がこの病室の患者・呉 一郎に対して行われる模様を通して一郎が犯したと疑われる殺人事件の解明をも目指す正木の同級生でもあった若林 鏡太郎の治療実践を通した事件解明の模様が描かれる。何故正木ではなく若林がこの任に就いたのか? 正木は後を若林に託し自死してしまったからである。若林が一郎の治療を通して理解したことは一郎の祖先であった唐の天才絵師・呉 青秀が、皇帝の愛妾狂いを諫める為に描いた呉家に伝わる絵巻物(類稀なる美女が死んでから腐敗し遂には骸となる迄を詳細に描いた傑作)が、一郎が犯したとされる殺人事件と関係があるらしいこと。その理由。現在記憶を失くしている一郎が記憶を取り戻せば殺害された彼の婚約者の魂の救済にも繋がり一郎の回復にも通じることが期待されている。という推理小説的展開を通じたドグラ・マグラという作品構成要素以外に、この絵巻物を描いた青秀の作品を通して芸術の持つ力をアピールしたかった夢野 久作の念をも同時に表出したかったと思われる。無論、因縁話的な要素を盛り込む為に呉 青秀とその妻黛子(双子の姉妹芬子との関係)と一郎の母千世子と姉八代子、その娘で婚約者であったモヨ子との血の繋がり(DNA的繋がり)と史的繋がりの綯交ぜ。何れにせよ、解毒阿保陀羅経の如く折に触れて囃される文言の齎す茶化しのインパクト等が、今作の横糸を為し、縦糸には個体発生が系統発生を繰り返すという生命誕生時の発生学的知見を縦糸に解釈するなら、今作は極めてシンプルな様相を呈するに至る。大団円も素直に受け取ることができよう。
     難解とされる原作を極めて明快な作品として提示した点に今回上演の意味があろう。

  • 実演鑑賞

    満足度★★★★★

    音響劇墨流しに惹かれ、夢野久作の代表作のドグラ・マグラを板にかける挑戦に興味を持った。ドロドロした妖気を乾いた話しに転換出来たと感じた。鍛えられた肉体、眼光で、空間を支配し、墨流し、静かな打楽器で、場面転換を知らせ、和製ラップで場のあらましを告知する。90分間全てを楽しめた。有り難うございました。

  • 実演鑑賞

    満足度★★★★

    「狂気」と背中合せの原作に、中川佐織女史の一人芝居は見合っており、「一人で演じる」という形態と「巡って自分に帰って来る」原作の構図もフィットしていた。その点で見ると今回はその要素が「薄まった」とは言える。
    ただ今回の「音響劇」の趣向への挑戦は、買える。本坊院の本堂らしき空間で、金色の装飾品が天井から吊され、正面(内側)に豪奢な物々が積まれた奥に僧侶の像(これが玩具っぽい)が鎮座。
    音と映像(水に墨を落した水面を背景に映す)を担う人は、僧侶の像の逆側のステージ側(正面扉を閉めた面)の脇に控え、俳優は女性五名と男性二名。二方客席に挟まれた8畳程度の床と、脚立で高低を用いるステージ側の狭いエリアを頻繁に行き来し、動き、物々しい声を発して一章から五章までを語り演じて行く。
    趣向の構成は、恐らくは原作通り、各章が描く世界を最終的につなぎ合せ、記憶喪失の主人公が見た夢として振り返り、その中の人物がじつは自分自身であったとの認識に至る顛末(だったと思う・・以前映画で見た時の記憶と若干ズレる気がするが)、これを順序立てて語り上げるという、堅実な構成であった。

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