満足度★★★★
2012年9月8日。初めてのシアター・オーブ。
オールディーズ・ファンにはよく知られた「ミリオンダラー・カルテット」のエピソードをベースにしたミュージカル。舞台は'56年12月、メンフィスのサン・スタジオ。カール・パーキンスのレコーディング・セッションに、まだ売り出し前のジェリー・リー・ルイスがピアニストとして参加、そこにジョニー・キャッシュがやってきて、更にサンからRCAに移籍したエルヴィスがガールフレンドのダイアンと一緒に現れ、そこでセッションが始まる…だけの話と言ってしまえばそれまでだが、バッキングのドラムとベースを含めて、演奏は全て出演者本人たちによるライヴ。
オーナーのサム・フィリップスの回想で、各人がサン・レコードにやってきた頃の話も入り、演奏曲全てがあの日の録音として残っている内容と同一ではないとはいえ、コロンビアへの移籍を考えているジョニー・キャッシュとカール・パーキンス、ジェリー・リー・ルイスの野心など、うまくこの一幕にまとめたもんだなあという舞台。
満足度★★★★
5人目の主役
ロックンロール黎明期のある一晩を描いた作品で、タイトル通りに、当時あるいはその後のスターの4人の演奏が中心となっていますが、その4人を発掘したプロデューサーにも焦点が当てられていて、ただの再現ライブではなく、ドラマ性が強く感じられました。
この人達の曲は数曲しか知らなかったのですが、迫力のある演奏と切ない物語に引き込まれ、とても楽しめました。
いかにもアメリカ的なジョークを含んだ開演前のアナウンスの後に始まる前半は、スタジオに訪れるミュージシャンのセッションが続き、ミュージカルというよりコンサート的な内容ですが、後半になると若き才能を見つけたのに彼らが大手レコード会社に引き抜かれて取り残されるプロデューサーのサム・フィリップスの悲哀が浮かび上がってきて、心を打たれました。
4人の演奏中はサム・フィリップスは奥のコントロール・ルームに入っていて窓越しにしか見えないのですが、踊ったりしながら演奏を楽しそうに聴いている姿が印象的で、後半の切なさが引き立っていました。
物語自体は寂しげにあっさりと終わるのですが、その後に続くアンコール的なシーンでの客席を含めた盛り上がり方が爽快でした。
物語の中で実際に歌うシーンでのみ歌い、楽器演奏も全てステージ上の役者によって行われるという、ある意味ストレートプレイ的なリアリズムに沿って進行するので、普通のミュージカルのような盛り上がった所で急に歌い出す形式が苦手な人でも、違和感を持たずに楽しめると思いました。
4人のスターを演じた役者達は、演技も歌も楽器の演奏も素晴らしく、ブロードウェイの役者の層の厚さを感じました。特にジェリー・リー・ルイス役を演じたリーヴァイ・クライスさんは激しいピアノ演奏とコミカルな演技が際立っていて、流石この作品でトニー賞助演男優賞を受賞しただけあると思いました。
満足度★★★★★
陰の名プロデューサーの悲哀に涙
たぶん、日本広しと言えど、こんな気分で、泣きながら、この舞台を観ていたのは、私一人だけかもしれない。
この歴史的一夜の出来事は、私がまだ2歳の冬。ですから、当然、この出来事に個人的思い入れも皆無なら、プレスリーを、当時、テレビ映像で観た以外は、後の3人の歌手のことはほとんど知りません。
では、何故、こんなに、涙が頬を伝うのでしょう?
それは、この作品が、陰の名プロデューサーの悲哀をきちんとドラマ化しているからだと思うのです。
祖父や父や叔父や主人を通して、これまで、たくさんの無名な名プロデューサーのその世界(出版界、演劇界、映画界、音楽界)への愛情と悲哀の歴史を、山ほど見聞して来ました。
先日も、演歌界のゴタゴタのニュースを見たりしました。
だから、この舞台に登場する、サン・レコードのサムが、私には、祖父や父や夫の姿に見えました。何もかも、心の琴線に触れて、涙を堪えることができませんでした。
ロックンロールの上手い下手はよくわからないのですが、キャスト陣、噂に違わず、超一流揃いでした。
もっと、物真似ショー的なステージを想像していたのですが、さにあらず!
本当に、素晴らしい人間ドラマでした。
何だか、宣伝が、画一的で、ロックンロールファンでないと、観る価値がなさそうに感じる宣伝の下手さが、この作品の素晴らしさを一般に伝えていない気がして、非常にもったいないなと思いました。
経済とHの佐藤さんが、現地でご覧になった感想をネットで発表されていて、大絶賛はされていなかったので、逆に、観てみたいと思ったのですが、行って本当に良かった!!劇場も、大変観易くて、素敵でしたし、これは音楽ファンでない方にも、是非おススメしたい舞台でした。