ヤマモトさんはまだいる 公演情報 ヤマモトさんはまだいる」の観てきた!クチコミ一覧

満足度の平均 3.9
1-7件 / 7件中
  • 実演鑑賞

    満足度★★★★

    デーア・ローアー戯曲と聞いて予想される範疇であり、中々重層的で重厚であったが、「ヤマモトさん」という固有名詞から想像した「一つの物語」という想念を消し、違う人物が出てきたら違う物語、くらいに割り切ってエピソード集として最初から観るのが良い、と思った。前の場面とどう関連があるのか、という注意で見ているとその注意に引っ掛からないので脳内での整理が(コンディションが悪いと尚更)追いつかなくなり、睡魔となる(今回は短時間襲われた程度で乗り切った)。
    理解が及ばない場面もあったが(パンフにあるキャストのコメントからして「台詞が指示する具体を探っている」とある位で)、かくありたい生を示唆し想起させる「言葉」それ自体が脳内に投げ込まれ、明滅を起こす。現実の皮相さの中での、人の緩やかな繋がりが匂って来るような。

    現代か近未来チックなユニークな音楽は、何と池辺晋一郎(音程が明確な旋律ではあるが(楽譜には落せそうだ)、コード展開がなく打楽器音的に響かせている)。

    出演者の数は多く、パンフには所属が書かれていないが客演俳優も結構居たのでは(私が認識できたのはOn7の宮山女史。彼女はシヅマがやった同作者の「最後の炎」に出演していた)。

    高い壁で仕切られた四つの空間を反時計回りに盆を回して場面転換をするが、同じ方向へ、淡々と為されるのが段々とシステマチックに見えてしまったのは私の集中力のせいか。様々な人物たちがいて、多方向に想像力を稼働するから、並列に存在している各組が持つ特徴、というか性格付けの+αが欲しい気がした。

    詩人が二つ目の詩を読む終盤に、それがヤマモトさんに向けたものだとは認識出来なかった(指示する何かを見過ごしたのだろう)。具体的なヤマモトさんを通じて、あるいはそこに居ない誰かを介して繋がっている人々の群像を作者はやはり見せたかったに違いない。
    詩を読む時間、その詩には書かれていないか、読まれずに終わるテキストが、背後に流れる。その流れて行く言葉が、いや、たとえ表れずとも青年の中でこうした言葉が反芻され推敲されただろう事実が、胸に迫って来る。
    それだけに「誰に向けた言葉か」「その人との関係は」を知りたくなる。だが、誰であろうと成立するでしょうに、という作者のチクリ指摘が聞こえる気がしなくもない。

  • 実演鑑賞

    満足度★★★★★

    ひとこと、すごい!です。正直、ストーリーをちゃんとフォローできたわけじゃありませんが、でも、すごく楽しめましたし、面白かったです。そのように感じられたのも、おそらく、舞台の形式面が際立っていたからだと思います。つまり、舞台の内容がよくわからなくても舞台の形式というか構造がしっかりしていると十分楽しめるということです。これは個人的に大きな発見でした。舞台は内容がすべてではないということです。あと、衣装、かなり凝っていましたね。色使いとか秀逸です。それと、ラジカセの音もめちゃくちゃ色っぽくてよかったです。あ、スポンジのベーグル投げすぎですw なにはともあれ、劇団のポテンシャルをすごく感じられた最高のパフォーマンスでした。ぶっちゃけ、観る人の力量が試される高品質の舞台です。

  • 実演鑑賞

    満足度★★★

    ドイツを代表する劇作家デーア・ローアーの文明批評、人生観のエッセイみたいな作品。東京演劇アンサンブル創立70年の為に書き下ろしたものでスイス・チューリッヒ国立劇場との世界ダブル初演。この後、ドイツ・シュツットガルト州立劇場での上演も控えている。
    音楽は晩年の黒澤明映画を支えた池辺晋一郎氏81歳!
    「貴方方はヴァーチャルな仮想空間をせっせと創り、そこに魂を移そうとしている。全ての欲望が充たされる夢のような嘘の世界。その嘘に依存して醜い“現実”を捨て去ろうと。正気?You talkin' to me?」

    廻り舞台で基本時計回りに回る。白い部屋、黒い部屋、白い部屋、黒い部屋と4つ。登場人物やシチュエーション、会話の内容に脈絡がないので初め観客は混乱していく。ある街の人間模様のスケッチのような。

    ドイツのアパート、空き部屋を見に来た林亜里子(ありす)さん。半開きのドアから入ってみると、そこはガランとした空室。だがそこにいたニノ(永野愛理さん)がこの部屋は空いていないと言う。「ヤマモトさんはまだいます」と。

    隣室のヤマモトさん(志賀澤子さん)と会った話をパートナーのエリック(雨宮大夢氏)にするニノ。身体の衰えた孤独な老婆。その内に家に招待する。引きこもりの姪(福井奏美さん)もやって来てヤマモトさんの半生を聴く。別れた夫は製材所を経営、フリークライミングが趣味だった息子は山で亡くなったという。

    永野愛理さんは美青年、大股開きでどっかと座る。衣裳・稲村朋子さんのセンスなのかシャツとズボンとスニーカーの色合いが抜群。濃いブルーをアクセントに。
    雨宮大夢氏はガリタ・プロデューサーみたいなメイク。二人の設定はゲイのカップルなのか?男装女子みたいなのも普通にあるのでよく判らない。
    宮山知衣さんが凄くいい女だった。
    仙石貴久江さんが出ていないのが不思議。

    ネタバレBOX

    印象的なシーン。

    ラジカセで曲を流しながら自作の詩の朗読をする男(菊地柾宏氏)。やたらメモの順番を間違える。

    三木元太氏と原口久美子さんが社交ダンスのポーズを決めながらの会話は子供が大受けしていた。

    林亜里子さんと宮山知衣さんが鴨に餌をやるというシーン、スポンジで出来たベーグルを観客席に千切っては投げ千切っては投げ。客席大受け。

    ギルバート・オサリバンの『アローン・アゲイン』が延々と掛かる中、電話で友人と話し続ける宮山知衣さん。窓から見える向かいの部屋の男に恋をしているようだ。

    事業で成功した女(原口久美子さん)が青木鉄仁氏にセラピーを受けている。貧しかった未成年の頃、母親の命令で男達の家を回って性的奉仕をしていたこと。その中の一人、裕福な盲人の引き出しから金を盗もうとして捕まったこと。しかもその告白にも嘘があるようだ。

    煙が上がる自動車をじっと眺める宮山知衣さん。手助けに入ろうとした二宮聡氏は制止される。「保険が下りるまで燃え上がるのを待っている」と。炎上する車をぼんやり眺める二人。

    辺鄙な地で小さなレストランを始めたニノ。店に侵入され落書きされている。「こいつら豚野郎」と。何かカウリスマキの『浮き雲』を思い出した。

    デーア・ローアー作品は『宇宙のなかの熊』、『 黒い湖のほとりで 』を観ていて凄く面白かった。まさか今回、この系の作品とは···。いやこれ映画ならカットの切り替えで何とかなったかも知れないが演劇としては難解。巧くやればウディ・アレンやジム・ジャームッシュ、エミール・クストリッツァになったかもなネタ。それには笑いが不可欠。とにかく力技で観せて、後々全体像を納得させるしかない。力が足りないと中期ゴダール、評論家以外は皆寝る。笑いとエロと暴力は寝させない為の調味料。哲学談義は忍ばせないと意味がない。ただ断片が舞っている。
  • 実演鑑賞

    満足度★★★★

    面白いシーンと、よく分からないシーンが混在していたが、セットも含めてなかなか刺激的な舞台。

    ネタバレBOX

    正直に言うと、池辺晋一郎氏の劇伴が個人的にちょっと苦手な感じだった。だだし、全てというわけではなく、ニノとエリックのカップルのシーンで使われた劇伴だけ、油断していると睡魔に襲われそうになって困った。他のシーンの劇伴では問題ないのに、彼らが登場してあの劇伴になる度にまた…といった具合で、ある意味すごいとも言えるが。
  • 実演鑑賞

    満足度★★★★

    鑑賞日2024/09/13 (金) 14:00

    劇団創立70年の記念公演2作目。劇団と交流があるドイツの前衛劇作家デーア・ローアーの書き下ろし。ブレヒトを演じ続けた東京演劇アンサンブルがどのようにして世代交代を果たしていくのかが注目されるが、劇団代表の志賀澤子がパンフレットに書いているように、この戯曲は劇団の70年そのものだという。次世代がメーンとなり背負う舞台はこれからのお楽しみというところなのかも。

    ドイツの劇作家が「ヤマモトさん」というのは面白いが、舞台は欧州である。同じアパートの住人たちがヤマモトさんという高齢女性に関わっていく様子が、回転舞台による頻繁な場面転換で語られる。欧州でも独居高齢者は増えていると思われるが、ヤマモトさんは今の日本の世相を代表するようなキャラクターだ。
    ヤマモトさんが半生を語る場面が印象的だ。何だが、ヤマモトを演じる志賀が劇団の後輩たちにとうとうと語っているような、そんな感じがした。ヤマモトさんは製材所に勤めた経験があるのだが、その中で「伐採」という言葉への反発を強く語る。あまりにも殺伐とした語感という中身だが、客席もこれは共感できたのではないか。

    淡々と進む舞台だが、難解な部分も多い。これもパンフレットにあったのだが、演出の公家義徳が「劇団で上演される作品はブレヒトだとかチェーホフだとか、何が面白いのかさっぱり理解できないものばかり」と入団した当時の感想を書いていた。公家さんでも「さっぱり理解できない」んだと、何だかホッとしてしまった。今作で、なぜこの場面があるのか、舞台上の会話は何を意味しているのか、分からないまま過ぎてしまったところが複数あったのだが、まあ、それはそれでよいのかと演出家のモノローグに救われた思いで劇場を後にした。

  • 実演鑑賞

    満足度★★★★

    鑑賞日2024/09/12 (木) 19:00

    価格4,300円

    創立70周年記念にベルリン芸大出身の劇作家、デーア・ローアーさんが本劇団の為に書き下ろした世界初演に出会えた事は非常に光栄。音楽監修には国内でクラシック音楽を学んだ事がある人なら誰もが知っているであろう池辺晋一郎氏。台詞の中に、間に絶妙な楽器の効果音。単に大きく盛り上げる訳でもない「品のある」丁寧な音響効果。回転する4つの舞台装置。まさに「アンサンブル」として、優れた芸術の世界を垣間見ることが出来ました。

    ネタバレBOX

    前衛的劇作家デーア・ローアーさんの作品を観るのは初めて。
    まず感じたのは、ドイツらしい哲学的な台詞のやりとり。どのような感情表現で観客側に訴えかけるか…と言う意図よりも、デーアさんの持つ世界観そのままを私たちが見つめている。詩の中で役者が動きを付けるようなアカデミックな系統に向かった作品に感じた。
    思わずソーントン・ワイルダーの「わが町」を思い出し、この2時間15分を集中して観るものもいれば、何だかよく分からず寝てしまうものもいるだろうな…と評価が二分する印象。

    芝居に関して、役者は非常に注意深く台本と向き合っているように感じました。
    台詞で魅せる…という事が性質上難しいので、目線や間の使い方、距離感など色々練りながら創っていった作品だと思います。お客様目線というより、役者自身すごく学びになる舞台だったんじゃないかなと。特に学校で演劇を専攻している人には観てもらいたいですね。
    パンフレットは買いました♪
  • 実演鑑賞

    満足度★★★

    鑑賞日2024/09/12 (木) 19:00

    145分。休憩なし。

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