実演鑑賞
満足度★★★★
鑑賞日2024/09/13 (金) 14:00
劇団創立70年の記念公演2作目。劇団と交流があるドイツの前衛劇作家デーア・ローアーの書き下ろし。ブレヒトを演じ続けた東京演劇アンサンブルがどのようにして世代交代を果たしていくのかが注目されるが、劇団代表の志賀澤子がパンフレットに書いているように、この戯曲は劇団の70年そのものだという。次世代がメーンとなり背負う舞台はこれからのお楽しみというところなのかも。
ドイツの劇作家が「ヤマモトさん」というのは面白いが、舞台は欧州である。同じアパートの住人たちがヤマモトさんという高齢女性に関わっていく様子が、回転舞台による頻繁な場面転換で語られる。欧州でも独居高齢者は増えていると思われるが、ヤマモトさんは今の日本の世相を代表するようなキャラクターだ。
ヤマモトさんが半生を語る場面が印象的だ。何だが、ヤマモトを演じる志賀が劇団の後輩たちにとうとうと語っているような、そんな感じがした。ヤマモトさんは製材所に勤めた経験があるのだが、その中で「伐採」という言葉への反発を強く語る。あまりにも殺伐とした語感という中身だが、客席もこれは共感できたのではないか。
淡々と進む舞台だが、難解な部分も多い。これもパンフレットにあったのだが、演出の公家義徳が「劇団で上演される作品はブレヒトだとかチェーホフだとか、何が面白いのかさっぱり理解できないものばかり」と入団した当時の感想を書いていた。公家さんでも「さっぱり理解できない」んだと、何だかホッとしてしまった。今作で、なぜこの場面があるのか、舞台上の会話は何を意味しているのか、分からないまま過ぎてしまったところが複数あったのだが、まあ、それはそれでよいのかと演出家のモノローグに救われた思いで劇場を後にした。