玄朴と長英 公演情報 玄朴と長英」の観てきた!クチコミ一覧

満足度の平均 4.0
1-6件 / 6件中
  • 満足度★★★★

    好感が持てる真摯なチャレンジ
    小劇場の若手が眞山青果の戯曲を取り上げるとあって、楽しみにしていた。

    元禄忠臣蔵のような大作は観ているが、本作は初見。

    夏の演劇界は、昔から若手の勉強会が多く開かれてきたが、この公演も若手が難物に真っ向から取り組んだ有意義な二人芝居で好感がもてた。

    青果ファンにも、青果を知らない人にもお勧めしたい。

    これを機に、眞山青果に興味を持って、新歌舞伎の公演も観てもらえたらうれしいのだが。

    この会場、多いときは週3回くらい前を通り、工事中も見ていたが、画廊に改装されたとは知らなかった。

    まさか、ここで上演するとは思っていなかった。

    外から見ても戸が閉まっているとわかりにくいのだ。

    このことを含め、詳細についてはネタばれで触れます。

    ネタバレBOX

    開演前、出演者2人が洋服姿で立っていたのには驚いた。時代劇で上演するとばかり思っていたので。

    出演者は開演前には出てこなかったほうがいいかなとも思う。

    何しろ、長英の八重柏泰士は顔左半面ケロイドのメークをしているのだし。

    ストーリーは公演ページに書いてあるので、省略します。

    青果の劇は独特の台詞術で、歌舞伎俳優でさえ、技量を問われ、誰でも演じきれるというわけではない。

    お2人も苦心されたろうと思う。

    息の合った劇団員同士、伊東玄朴を岩崎雄大、高野長英を八重柏と、白と黒、オセロのようで、両者の色に合った配役で楽しませてもらった。

    現代の服装で演じたので、所作に気を配る必要もなく、俳優は台詞に没頭できたと思う。


    現代の煙草を吸ったり、ワインを飲んだり。特に煙草を吸う場面は、芝居の流れで間を持たせる効果もあり入れたのかと思うが、やはり仕草から現代劇のように感じて、話の内容との違和感を覚えてしまうのだが。

    八重柏の長英は、終始ワイルドなラテン系の男みたいで、「うざい!」と言ったのにはびっくり。

    だが、役を彼のものにしていて、不思議な説得力を感じた。

    岩崎は日舞や狂言を習得しているだけに、洋服を着ていても歌舞伎俳優のような風情があり、なかなか見せる。

    お互いに尊敬できる部分、反発し合う部分を相手に感じながらも、微妙な連帯感や友情で結ばれ、それゆえに苦悩も背負っているということを1時間という短時間の芝居で伝えたのは、原作が優れていることはもちろんだが、川口典成の等身大的な演出のなせる業といえよう。

    人間関係が希薄で特定の人間と関わりを持ちたがらない傾向にあると言われるツイッター世代の若者に観てほしい佳品だ。

    こういう公演は、劇団の意図は知らないが、私は劇団の常連ファン以外、日頃演劇に縁が薄い人や学生にこそ観てもらいたいと思うのだが、いくら中身が濃くても1時間の芝居に当日3000円の料金は、演劇通なら気にしなくてもそういう層には割高感が否めないと思う。
    ギャラリーでの実験的公演だけに上限2000円くらいで気軽に見せてほしいと思う。

    ツイッターで劇団関係者が宣伝ツイートをしきりに行っていたが、時間ばかりで料金は書いてなし、指摘するまで場所の説明もなかった。

    多くの人に観てもらいたいとツイートしながら、宣伝の仕方がよくないと思った。

    会場前も特別の催事があるのかなという感じで、受け机だけで、フラッと入れる雰囲気ではなかった。

    今回、DMも来なかったのでチラシも手にしてないのだが、コリッチの公演情報と重複しても、当日、コピーの紙1枚くらい配布してもよいのでは。

    私なら、簡単な作家紹介や時代背景の説明くらいはした印刷物を配る。それだけの料金を取っている公演なのだから。

    この劇団、前身の学生劇団の頃から、ソフト面が不親切というか「勝手に観なさい」と言われているようなところがあって気になっているが、現代は多少のサービス精神は必要だと思う。
  • 満足度★★★★

    濃厚な2人芝居!
    前回公演の「ダンシング・ヴァニティ」で独特の世界観に衝撃を受けたが、
    今回はすごい濃厚な二人芝居だった!
    自分の中では、目を離せない劇団となった。
    公演時間は1時間。あとはネタばれで。

    ネタバレBOX

    今回公演は、劇場ではない場所(画廊とかの跡地?)であった。
    入口はガラス貼りのため、外の人の動きが見え集中できるか
    心配したが、芝居開始とともにシャッターが閉められた。

    伊藤玄朴と高野長英との物語は初見。
    2人の衣装は、現代風(ワイシャツ姿)で、演出でタバコを吸ったが、
    特に違和感なく観劇できたのは不思議。
    あとケンカのシーンも、大きな音をたてて物を叩きつけたり、2人が本当にケンカしているかのごとく、もみ合いになったり、かなり迫力があった。
    役者が上手いと場所や衣装は関係ないと思った。
  • 満足度★★★★

    瞬間やられたー!
    着席して顔を上げると場内案内をしている八重柏さんがいて、その瞬間にやられたーと思いました。

    ネタバレBOX

    会場にはソファーとテーブルが置かれていてムムッ。そして会場にいる洋服姿の八重柏さんを見て、幕末を現代で表現するのかと斬新さに驚きました。

    訪ねてきた長英はノーネクタイで着崩したスーツ姿、玄朴は家にいてもきっちりしているのか上着を脱いだスーツ姿でした。

    長英は結構身分に関して差別的な思想の持ち主で、玄朴も西洋の平等思想を知った割には体制を壊すことには躊躇していましたが、当時の人の大勢はそうだったのでしょう。

    長英の本音は金を借りること、激しい議論の最中にふっと上の空になるのが愉快でした。玄朴は、江戸の人のため、そして自分の生活を守るために長英との接触の証拠を残したくなく、きっぱりと長英の無心を断りました。

    長英が刀を差していることを説明する言葉が途中ありましたが、現代の様式で表現するなら別に不要じゃないかと思いました。

    ところで、二人芝居は常にしゃべりまくる宿命があるのでしょうか。いつも感じます。静の時間があればなと思います。玄朴の奥方が心配してふすまの向こう側まで来ていました。会話もありました。それならば具体的に奥方も登場させ三人芝居にした方が、動と静のメリハリが付くのではないかと思いました。
  • 満足度★★★★

    台詞に重点が置かれた緊密な芝居
    この日の会場は、劇場と言うよりも、普段は画廊なのか、
    あるいは元々は美容室か洋品店だったような小さなスペースで、
    道路側に、ショーウィンドーのような大きなガラスと、
    やはりガラスが嵌め込まれた扉があり、
    そのままならば道路側から中を覗くこともできるし、
    逆に内側から道路を歩く人を眺めることもできる。

    ネタバレBOX

    さて、それまで前説やお客さんの案内などをしていた2人の男性が、
    道路側の2つのシャッターをいきなり下ろし、
    外側と完全に遮断されるところから、この芝居は始まる。
    (余談だが、したがって遅刻したら正規の入口(?)からは入れない。
    あるいは裏口があるのかもしれないが?)

    舞台(というか客席と同じ空間で、
    椅子が無くスペースがあるだけだが)には、
    2人座れる大きさのソファなどがあるだけ。
    そして、2人とも洋装で、いきなりつかみあいから始まる。
    んん?これは前衛ものだったっけ?と思ったり……。
    しかし、つかみあいが終わり、2人の対話が始まる。
    基本的に、この芝居は対話のみによって成立している
    と言っても過言ではない。
    台詞は前衛ものとは全く異なった、至極真っ当な(?)時代劇風のもので、
    もしこの芝居を、時代に合った舞台装置と衣装で演じても、
    (多少月並みかもしれないが)立派な一つの演出となったと思う。
    私も、正直、最初のうちは、白熱した言い合いには満足しながらも、
    「なぜ、洋服とソファでやるの??」と若干の違和感が……。
    しかし、観ているうちに、なぜかそのことが全く気にならなくなってしまった。

    私の勝手な推測だが、やはり台詞と役者の表情の力でこの芝居を成立させたい、という考え方で、あえて、衣装や装置をニュートラルに
    したのではないか? そんなことを思った。

    音楽も抑制的で、時々クラシック調のものが流れる程度。
    こういう控え目な使い方もむしろ効果を上げていたように思う。
    ということで、緊迫感ある大変良い芝居を観ることができた。
    まあただ、台詞に重点が置かれた緊密な芝居なので、
    少々のトチリでもできれば無い方が良いし、
    振りについてもより磨きをかけてくれれば、ということで、
    5Pではなく4Pとしました。
  • 満足度★★★★

    チャレンジングな劇団だなぁ・・・・・
    というのが第一の感想です。前公演のダンシング・ヴァニティもそうでしたが、尖った演出や今回の息詰まるような会話劇など、並の神経ではやれない。劇団の視線がはっきりと演劇の進化や革新に向いているのを感じます。全く性格や生き方の違う二人の男の会話劇なのですが、大正時代に発表されたとは思えない斬新さを持って迫って来ました。玄朴と長英という江戸時代の人間を描きながらも、普遍的な人間のぶつかり合いを表しており、今はもうこんな濃密な人間関係は望んでも得られないのかもしれないな、と最後の玄朴の独白を聞きながら思いました。現代人もこのような人間関係に憬れているのだろうな、と思わざるを得ないようなお芝居です。これを一日に三公演ですか・・・・・。体力的にもチャレンジングだなぁ。

  • 満足度★★★★

    拍手がなりやまない
    深層心理をえぐるような濃密な二人芝居だった。幕後、会場から拍手が鳴り止まないので八重柏泰士が手で制したほどの素晴らしい舞台。
    伊東玄朴と高野長英の二人が真山青果の筆によって議論を戦わせる緊密な対話劇。


    以下はネタばれBOXにて。。

    ネタバレBOX

    1845年(弘化2)3月末、江戸・御徒町の蘭学医・伊東玄朴の家を、火災のため伝馬町の獄を一時釈放となった旧友高野長英が訪れる。長英は帰郷するための旅費を貸せと迫るが、玄朴は拒む。理想家肌で激情に駆られ尊大な長英と、現実家肌で冷静な玄朴との対立は、蛮社の獄や渡辺崋山の死をめぐってさらに深まり、喧嘩のすえに長英は金を借りずに去っていく。しかし玄朴は「俺の心の底の底まで入ってきて心を苦しめるが、それで同時に一粒の寂しい種を置いていく奴なんだ・・。」と長英を思いやる玄朴の友情は変わらない。

    金を借りる側の長英が半ば威張って強引に暴力的に「金を貸せ!」とのたまい、金が借りられない状況に陥ると今度は母親をダシに泣き落とし作戦で借りようとする傲慢さに思わず笑った。一方で長英の自分の思い通りに吹く笛に踊らされまいと、頑なに断る玄朴の情景が哀れだった。

    観劇前に本を読んだことが効を奏して解りやすく楽しかった。性格対比な2人の対立はある意味、恋人同士の争いにも似た会話の攻撃があって、面白かった。



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