引き際 公演情報 引き際」の観てきた!クチコミ一覧

満足度の平均 3.9
1-8件 / 8件中
  • 満足度★★★

    やりたい放題!笑
    序盤、4人の著名人たちがビップルームでポーカーに興じている場面から。これらは現在日本が置かれている大地震による環境と政治の混乱、金持ち達は海外へ脱出していくさまを風刺したものだ。

    以下はネタばれBOXにて。。

    ネタバレBOX


    そんな混乱の最中、東北の海岸に巨大な「海獣」の死体が何体も流れ着き、海岸を埋め尽くす。と、同時に各地で天変地異が多発し、新政府は放射能除去装置の開発に国家の命運を賭けていた。開発者は天才と謳われる亀田博士である。しかし亀田博士の倒病により、その道を隔たれた政府は放射能汚染の賠償を迫る国際社会と絶縁し鎖国してしまう。・・・とこう書くと、なにやら舞台はシリアスで物々しいように思えるが、実際は客いじりしながらのやりたい放題のはっちゃけたエンタメだ。苦笑!
    特に、柿乃花先生のちっちゃな人形を使っての腹話術のような一人舞台は失笑!の類。観客はやれやれ・・の表情だった。

    鎖国前夜。舞台は海辺の廃墟の町。その片隅にあるスナック「牛の腸」で出来事。人を殺しながら移動している鈴子は、ここでブスなママを殺して次の客が来たら殺そうと待ち構えていた。そこに海獣の内臓で作った不老不死の薬を売って闇商売をしている解体作業員のヒロシが、葱を背負った鴨のように現れる。

    鈴子はヒロシをなんなく殺し、次いで元自衛官のトラブル処理屋金本、超絶行商人の黒俣がスナック「牛の腸」にやってくる。鈴子は彼らを殺す機会を探りながらもヒロシが持っていたセンズのようなものをつまみ代わりに3人で食べていた。これが不老不死の薬だったのだが、この時点で彼らはまだ知らない。

    そんな折、ふとヒロシが生き返ってしまう。つまり以前から不老不死の薬を食べていたヒロシは死ねない体になっていたのだった。ヒロシが突如として生き返ったのを驚き、鈴子はまたも刺し殺すが、やはりヒロシは息を吹き返してしまう。ここで4人は殺し合いをするが、やはり全員が生き返ってしまうのだった。それらは不老不死の薬を食べたからだと理解した彼らは、今後、未来永劫、生き続けるのだと悟る。

    やがて彼らはずっと生きなければならない体を持て余すように海辺でくつろぐのだった。時間はずっと続く。来る日も来る日も同じ時間の繰り返しだ。人が死なないとどうなるか。テロも宗教も戦争もなくなる。時間は止まったままだ。それは地獄と変わらない、という。
    人は皆、永遠の命は恐いという。しかしワタクシは今の年齢がずっと続くなら、永遠に生きてみたいとそんな風に思う。

    病院では瀕死の天才亀田博士がヒロシの不老不死の薬を食べて永遠の命を授かり、空港では海外脱出を願うセレブたちが暇をつぶし、蝉時雨蝶子はリサイタルで熱唱し、柿乃花先生は、講演会で国家の未来を熱く語る。救われない日本がそこにある。

    しかしワタクシ達は精一杯生きるだけだ。なぜなら命は永遠ではないからだ。

    今回の表現はすこしふざけ過ぎた感があり、肝心の笑いもイマイチだった。しかしエンタメとして楽しめる。終演後、主宰のさららが自ら物販販売をしていたがひじょうに魅力的な女優だった。
  • 満足度★★★

    見ました。
    もうひとつの日本の混乱具合、とはいいながら、ほとんど現在日本の状況じゃないか、とも思えてしまう。
    若松さんの人形使いに苦笑いしてしまいました。

    月船さんの度胸の良さに感心したけど、よくよく考えてみれば宝塚ってもともと関西の劇団だし、「笑わせる」ことには長けてるんだろうな。
    出ている全員の色気と狂気と歌声を堪能しました。
    ただ、笑いと皮肉と風刺の話の展開の一部にちょっとついて行けなかった所もあり。

  • 満足度★★★★★

    予想外のmetroっぷり
    震災後のもうひとつの日本をブラックかつ痛烈に描いたコメディ作品。

    ある意味、荒唐無稽だが本当にそう言えるのか・・・既成概念が打ち破られたこの世界を思うと不気味なリアル感さえ浮かび上がってくる。

    各役者の怪演が際立っているし、ショー的センスも、客を楽しませることにも長けた快作だった。

    月船さららも魅力爆発だ!!!

    ネタバレBOX

    月船さららが演じる蝉時雨蝶子のシャンソンショーをかぶりつきで観られただけで十分かも!?
  • 洗練されたアングラ
    ひとことでいうと洗練されたアングラ芝居。
    赤坂のハコで巧い役者が演るから、観に行ける。
    怖いものみたさを刺激する、不思議な芝居。

  • 満足度★★★★

    きもちわるいけどきもちいい
    しかも笑えて。あの内容とかキャスティングとかすごく感情移入しやすく、構成も面白かったです。芸達者といってはいけないのかなぁ?舞台上の4人の関係性とか自然で、しかも日本が鎖国するなんて。。。当日券で入りました。観て良かった。

  • 満足度★★★★

    すごい芝居だ!
    これはホントすごかった!こういうモノやっていいんだ…ていうか、こういうモノをこういう形でやれちゃう空気に世の中なったんだ!
    皮肉っぽい会話や一見バラバラで唐突に見えるシーンからも伝わるものがちゃんとあって、ヘンに重く描かれてないのもすっごく良い!
    各シーンが全体の世界観をよく表していて、ホントに絶望している世界というのはきっとこんなブルース的な明るさが満ちてるんだろうなっていうリアリティがあってすごかった!
    今だからこの舞台なのかなって、しみじみ感じさせてもらえて、感慨深いものがあった。
    あまりに素晴らしかったので、12日もう一度観にいっちゃいます。

  • 満足度★★★★

    近未来の日本
    賭け事の引き際、色々な引き際、苦手な分野、どうする日本人。それでー。

    ネタバレBOX

    シリアスな雰囲気でスタート、時計までは分かるとして靴をテーブルに置いたあたりから変わりました。

    原発はいたるところで壊れ、外国から損害賠償請求を受けたり、セレブの海外脱出が増えたため鎖国にした日本の話。

    海溝にある地獄の扉が開いて、怪獣が日本に打ち上げられる状況にその後のシリアス路線の展開を期待しました。結局、地獄怪獣の内臓が不老不死の薬だということが分かり、国策として日本人全員が食すことになりました。エコにはなったけど環境汚染と食糧不足の日本、死んでも生き返るゾンビと化した日本人はさぁどうするんだろ?!

    仕事などしない、緩ーく、ピクニックですか。
  • 満足度★★★★

    もう一つの日本の物語
    『この物語は、もう一つの日本を舞台にしている』
    脚本の天願大介氏が『引き際』作品解説なるものを用意していてくれました。
    そこにはお芝居のキーワード、「レイズ」「ウディ・ガスリー」「野馬台詩」「方丈記」について解説がありました。

    ウディ・ガスリーの説明に『でたらめで自由で時に不道徳』とあったのが、何だかこのお芝居にぴったりだと思いました。
    人によっては眉をひそめるような(そのほうが道徳的)、下ネタやブラックなネタもありましたが、私も一緒に見た友人も、ただただ笑ってました。

    若松武史さんの演技がすごかったです。柄本時生さんがむしろフツーに見えました。
    月船さららさんは、お綺麗でかつ男前でした。蝶子の歌唱力はさすが元宝塚。終演後、自ら売店に立たれてのはっちゃけた売り子ぶり。ちょっとファンになりました。

    話は、途中のでたらめな勢いに比べると、後半ちょっと尻すぼみ。でも、全体通して満足です。

    ネタバレBOX

    【あらすじ】
     鎖国前夜。逃げ惑う人々の間では様々なうわさが流れていた。
    不老不死の薬になるという不気味な「もの」の噂、人を殺しながら移動している「スナックの美女」の噂・・・・・・。
     海辺の廃墟の町。その片隅にあるスナック「牛の腸」。不気味な名前のこの店に、落ち葉が吹き寄せられるように名も無き男女が集まってくる。解体作業員のヒロシ、元自衛官のトラブル処理屋金本、超絶行商人の黒俣、そして謎の女鈴子。
    四枚のカードが揃ったとき、呪われた運命が発動する。
     病院では瀕死の天才亀田博士があるものを待ち続け、空港では海外脱出を願うセレブたちが暇をつぶし、蝉時雨蝶子はリサイタルで熱唱、柿乃花先生は、講演会で国家の未来を熱く語る。果たして「日本」は救われるのだろうか?そもそもこんなことになってしまった原因は何なのか?そして私たちはどこに行こうとしているのか?
     その晩「牛の腸」はすべてを呑み込んで驚くべき未来を提示するのである。
    (天願大介氏『引き際』作品解説より転記)



    「驚くべき未来」というのは、そんなに「驚くべき」でもなかったです。途中でわかるから。
    人間のたくましさというのが伝わってくるオチでした。
    引き際・・・・・・引くに引けずに来ちゃったら、開き直るしかない。
    こんなときだから、不道徳でも笑って歌ってたくましく生きたいですね。

    方丈記も読み返してみようかな。

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