満足度★★★★★
千秋楽・素晴らしき挑戦・・・幸四郎!&吉右衛門
今月昼夜ともにそれぞれ2度目の公演へ・・・幸四郎が、170年ぶりの悪の二役をやるのって、もう見られないかも・・・と思うだけで、いてもたっても行かずにはいられなかった!(もちろん夜公演の吉右衛門の、懐の深い芝居の演技は言うことがない!私は本来・播磨屋・吉右衛門!)
隣席に座られた高麗屋(幸四郎の屋号)に特段に詳しい方がいて、幸四郎が三枚目を演じるのは、歌舞伎の世界では本来は許せないことなのだとか・・・!?(〇〇さ〇りがAVにでるようなものだと・・・?)そのことからも、70歳になる幸四郎が、伝統へ挑戦する意欲は素晴らしいということなのだ!!
(その方も吉右衛門を褒めていた・・・。短い登場で兄・幸四郎の舞台へのエールを贈る姿勢は素晴らしいと・・・。夜公演だけでも出ずっぱりで大変なのにって・・・同感!播磨屋サポーターとして嬉しい!)
最終章のかたき討ちシーンから拍子木が入って・・・「本日千秋楽に付き・・・・・」で舞台上からのご口上・・・・・。その後に幕が下りたが、スタンディングオベーションしたのは自分だけだったみたい!?
日本の演劇にはスタンディングオベーションは根付かないのかな・・・?
何処へ行っても、みなさんとてもおとなしいよね!良くも悪くも感情は素直に伝えたいね・・・・!
満足度★★★★★
「必見」といって良い昼公演。
これは絶品の舞台!
「通」の方々には、幸四郎丈の天保年間以来となる一人二役あたりが魅力なのかもしれないが・・・それを抜きにしても、この芝居の面白さは強烈だ!
大まかな内容は、仇討ち。
善役が、不正をした悪役を切腹に見せかけ殺害。
その悪役の家臣が、善役を殺害。
で、善役の息子達が、悪役家臣を仇討ちにすべく追いかけるが・・・いろいろある(かなりのカンナン辛苦あり)。。。ってのが粗過ぎる粗筋(笑)
幸四郎丈は、「悪役家臣」と「善役息子の家臣」の2役。
この演じ分けは見事。
「悪役家臣」の悪の貫禄は、見ていて惚れ惚れとしちゃう程。
「善役息子の家臣」は、仇側に寝返るという極悪軽薄人なのだが・・・なんとも間抜けな一面もあり・・・不思議なキャラ。憎めない一面がある。
最後に、仇討ちされるんだけど、万事休した場面でも軽口をたたく(←強がりなんかじゃなくて、そういうキャラなのだ!)あたりが、ものすごくおもしろい。
江戸時代の初演当初は、仇討ち物だけあって「善役息子達」が主人公だったのが、この小悪党を主人公にする演出家が登場、これが大当たり!それくらい魅力あふれる「小悪党」なのだ!!!
ラスト。
最終的に「悪役家臣」が万事休するのだが・・・
ここで「とざいとうざい~(観客の皆々様~みたいな意味)」の掛け声で、出演者全員で客席にお辞儀。そして幕。
こういう「陰惨な場面(ま、仇討ちだから、ある意味スッキリはする「殺人」ではあるのだが)は、想像にお任せ」という歌舞伎独特の演出は、この芝居ではバッチリはまってた。それだけ、敵役にも魅力があふれていたということなのかなあ。
と、長々と書いていたが、この芝居の魅力の3百分の一も表現できていません・・・その辺りは『敵討天下茶屋聚』で検索したら、ちゃんとした識者や通の方々の文章をお読みになれると思いますので、勘弁願うとして。。。
今月は、明治座の花形歌舞伎に流れる方も多いようで、良席のチケットが取りやすいと思います(大金持ちでないボクが、とちり席のド真ん中で見られるってのは、年に一度あるかないか)。
この芝居は、初心者の方にもおすすめ!
でも・・・イヤホンガイドは利用したほうがよろしいかと。
この600円は、かなり価値のある600円になりますので!笑
満足度★★★★★
幸四郎・170年ぶりの挑戦・・・昼公演
松本幸四郎が初役に挑む「敵討天下茶屋聚」(かたきうちてんがぢゃやむら)の演目は、慶長14年西暦1600年に備前の国(岡山)宇喜多秀家(芝居では浮田家)のお家騒動で、闇討ちにあった父の無念を、遺子が9年後の1609年大阪の天下茶屋で実際に敵討ちを遂げた事件を題材に、奈河亀輔が本を書下ろして江戸中期の天明元年1781年に初演された狂言である。
上演当初の評判はイマイチのようだったが、天保6年西暦1835年に四代目大谷友右衛門が工夫を凝らして、江戸中村座で敵役を主人公にした設定で舞台を演じて喝采を博した。その後繰り返し上演されて敵討ち狂言の傑作と言われている!
しかし、今回演じる松本幸四郎は初役であり、しかもその四代目友右衛門が天保14年西暦1843年に、二人の悪人安達元右衛門と東間三郎右衛門の一人二役を通し狂言で演じ分けて以来、170年ぶりの挑戦である。幸四郎は来年70歳。初役でしかも170年ぶりの一人二役。伝統を守りながらも現代感覚の人物描写で自ら挑戦して芸と向きあう姿勢はとても素晴らしい!
幸四郎は時代背景と登場人物の性格描写の他味わいある台詞などを綿密に練り上げ、悪役ながら二役の一方・東間は陰で画を描き人を操る大悪な首領役で、一方の元右衛門は盗人猛々しく小悪を重ねながら三枚目役と対照させるように上手く演じ分けており、四代目友右衛門が人気を博した江戸時代の舞台を、現代感覚の解釈で再現している。
初役ながら、序幕から大詰めまでの全五幕190分を、通しで二役を演じた幸四郎の挑戦する心意気は素晴らしく、改めて人生は生涯学習と感じる!
伝統と向き合う幸四郎の舞台を、実弟の中村吉右衛門が敵討ちを支える人形屋幸右衛門役、敵討ち立ち会い助っ人補佐人役坂田正三郎を八代目大谷友右衛門に演じさせて、粋な「敵討天下茶屋聚」だけに、妙で不思議な因縁を感じながら、言葉で表せない深い感動で観ていた!詳細は、ネタバレBOXにて・・・
満足度★★★★★
演劇の非日常性・・・夜公演
籠釣瓶花街酔醒(かごつるべさとのえいざめ)。中村吉右衛門が、元禄九年吉原百人切りの実話を題材とした明治時代の上演から絶えていた場面を百有余年ぶりに復活し、発端より大詰まで上演するという話題の舞台。ここの籠釣瓶は、籠で作った釣瓶は汲んでも水が溜まらないことと同じように、人を切っても血糊も付かぬ切れ味落ちずに血を吸い足らない名刀の意である。その名刀を吉右衛門演じる次郎左衛門が持ち、吉原一の花魁八ツ橋を演じる中村福助の艶やかさとの調和が見事だ!吉右衛門の演技やせりふは言うまでもなく懐深く大きな演技・数々の引き出しがみられるが、福助にも、縁切りの場の名セリフ「つくづく嫌になりんした」は八ツ橋自身の境涯ともとれ、名女形への進化成長など・・見どころ満載とても楽しめ嬉しい舞台だった。
それにしても感じたのは、演劇の持つ、善にも悪にも花が咲き喝采を浴びる非日常性である。
天候に晴れもあれば雨もあり、台風もあれば大吹雪もあるように、人の心も日々不順である。人は一人では人間と言わない。芝居も同じで人が演じるのであるから、たとえ同じ演目同じ役者でも、同じものが出来る筈がない。昨日の芝居と今日の芝居、明日の芝居は同じではない。芝居に関わる人が増え、人と人との間ではじめて間合いが生まれ、舞台の作品が成熟していくのである。そして、同じ作品でも役者が変われば違う作品になリ、味を工夫し得意が生まれていく。演劇に情熱を持ち挑戦し続けることから伝統が生まれ、昇華して後世に残ることになるのである!演劇を志した以上、どのジャンル演劇集団も未来へ継承するよう努力をして欲しい!