実演鑑賞
満足度★★★★★
これは面白いです。忠臣蔵は世の中知らない人がいないくらい有名ですが、吉良さん側から見たのは、初めてでした。見る方向によって全く話は異なる典型ですね。語りも生演奏もお芝居も素晴らしかった。秀逸の作品ですね。拝見できてよかったです。ありがとうございます
実演鑑賞
満足度★★★★★
手当たり次第にあれこれ芝居を見始めた頃、あの気分は震災後のまだ余震を錯覚してしまうような時期だったが、はじめて遊戯空間を見たのもそんな時期で、とある寄席で行われた「仮名手本忠臣蔵」全通しがそれだった。
その後和合氏の詩の劇や、その他ユニークなパフォーマンスを観た。私が何に惹かれているのか、と自問してもうまく言えないのだが、伝統的演目でも現代詩でも、原典に対する折り目正しきリスペクトと、飽くまでもそこに立つ所から必然的に生まれる演出趣向に留めている事(という感触)、要はストイックさと言えるか。
「吉良屋敷」も飽くまで遊戯空間のその在り方をベースに、であるが、贅沢な舞台であった。吉良邸内という閉じた場での悲喜劇として描いた井上ひさしの作とは、同じ「吉良邸内」でも趣きが異なり、最終的に吉良側にシンパシーを覚える描き方をしている。そのあたりは意見は様々かも知れないが、閉塞感よりもむしろ広がり、多彩な場面から吉良邸の日常(と言ってもこの日はハレの日に当たるがそれも含めて)が浮かび上がり、趣向の数々が贅沢かつストイックに舞台を彩っている。
雪が降っている、と読み手が伝える。「その日」であると分かる。その瞬間までの十数時間が、それとは言及される事なく(なぜなら吉良邸の者はその日が何の日になるかを知る由もない)、淡々と時が過ぎる。
実演鑑賞
満足度★★★★★
面白い、お薦め。
日本三大仇討の一つである忠臣蔵を 敵役である吉良家の視点でとらえた野心作、と思っていたが現代に警鐘を鳴らすような秀作。当日パンフに美術・上演台本・演出の篠本賢一氏が「江戸幕府百年、当時は、物価の高騰、生類憐みの令によるしめつけで庶民の鬱憤はたまっていた」と、そして劇中で 自分(吉良上野介)が討たれることが鬱憤晴らしになると いった旨の台詞がある。失政を別の関心へ逸らし、町民はそれに乗っていたずらに風評を流してしまう。それは 現代においても同様で、視点を変えれば価値観が180度変わるかもしれない。例えば、インターネットで真偽があやふやな情報が拡散され、それによって選択や判断が大きく変(影響)わる。江戸 元禄時代と違って情報過多の中で真を見極めることの難しさ。
篠本氏は故観世榮夫の下で能を学んでおり、本公演は随所にその様式美(ある意味 時代物のような)ものが観てとれ 時代劇にはマッチしていた。また 物語(展開)としては拍子木を鳴らし場面転換、時の経過といった分かり易さ。伝統演劇と現代演劇を融合したような斬新であり新鮮さを覚えた。そして舞台美術は簡素にして機能的といった優れもの。勿論 討ち入りの場面も観せるが、視点が吉良屋敷にあることから一律に<赤穂浪士>というだけで個々の名は記さず、感情移入もさせない。そして<語り>と独特の<殺陣>は、舞台に釘付けするほどの魅力がある。役者陣の卓越した演技によって、骨太でありながら繊細な公演になっている。
(上演時間1時間45分 途中休憩なし) 追記予定