壊れた風景 公演情報 壊れた風景」の観てきた!クチコミ一覧

満足度の平均 4.0
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  • 実演鑑賞

    老舗の域になる神奈川の地域劇団だが、世代交替が実現している模様で活動の主体は若手。前に観たのが10年前、今回2度目であった。5年前に別役戯曲に挑戦していて、今回「壊れた風景」をやるというので久々に出かけた。スタジオHIKARIも暫くぶり。
    「壊れた風景」は私が別役作品の秀逸な世界観を知った最初の戯曲で、別役に「強い」名取事務所が周到に構築したシュールで怖い舞台だった。
    別役戯曲がその成立のために要求する役者力、演出力を、失礼ながら備えている劇団とは思わないながら、しかし意外に迫れているのではないか、との“若干の”期待もあった。当日は遅れて入場。野山を行く者が持主のいないシートに置かれた荷物と鳴り続けている蓄音機に目を止め、次第に集まって来る。何のかのとうまく正当化をしながら置かれている豊富な食べ物に手を出していく。別役らしい丁寧な言葉遣いによる会話全てが、さもしい自己正当化のために為されて行く光景は日本的な村社会の縮図であり、そして他人の物を奪う侵略の構図でもある。
    平常な会話は意外に(失礼ながら)面白く進んで行く。だがラストに至って浮かび上がるもの・・これが見えて来なかった。それはやはりそれまでのやり取りの中で欺瞞に満ちた人間の本質が伏線として表現し切れていない所にある。最後のオチは別役氏が作品を着想した実際の事件の顛末なのだろうが、この戯曲は冷や水を浴びせるような警官の報告を聞いて、死者たちの遺した(れっきとした持主が存在した)食べ物を食欲にあかして口にしていた、という己の行為を突きつけられ、動揺させられる風景でなければならない。そこを到達点とすると、やはりこれは一筋縄で行かない戯曲であった。
    会話のテンポは中々よく、アプローチによって芝居の核に迫れたのでは・・という感触は残った。

  • 実演鑑賞

    面白かったです。

  • 実演鑑賞

    満足度★★★★★

     舞台セットはコの字を左に90度回転させ空き部分を広げたビニールシートで蔽いその上にピクニックで用いる飲料、食材、それにレコードプレーヤー迄が置かれた空間を囲むようにホリゾント側に道が、コの字の上下(カミシモ)に階段が設えられ、これらの手前客席側が板の端になった構造で、無論回転させたコの字の空洞部分は横長で長方形を為しており、今作の内容と極めて調和的な、よく考えられた舞台セットである。作品は2部構成になっており、パート1と、パート2の内容が可成り異質ということもあって、尚更この舞台美術の意味する所が実に効果的に作られていることに感心させられる。パート1と2の合間に10分の休憩を挟みトータル105分程と尺も申し分ない。台風の中、土砂降り、ずぶ濡れになって出掛けた甲斐があった。

    ネタバレBOX


     別役作品は、作品を観れば作者がすぐ分るほどその作品の特徴が顕著であるが、この特徴は作家が学生時代に権力と対峙していた経験から来ているように思われる。権力というものは、無論抽象的には機能しない。必ずその末端には実力を以て権力を行使する暴力装置が存在し、これらの暴力装置は例えば法という形を採った抽象を具体的な犯罪なり、罪なり、刑なりを構築し、その実態と化してゆく為に働く。(言っておくが、被験者は政治犯のみを意味している訳ではない。広義に解釈すれば、あらゆる犯罪は、反権力的である)即ち軍や警察機構がこの任に当たる訳だ。必然的にその対象は、国家権力等の公権力に抗った者たちということになり、この罪等を構築する主体はあくまで軍・警察など公権力の末端側である。当然、対象とされる者たちとの間には、構成要件やその根拠を為すモノ・コト等を巡る丁々発止の遣り取りが存在する。そして、このような背景が示唆するもの・ことは極めて気味の悪い、時にグロテスクでさえある、人間存在そのものに対する侵害、暴虐、圧制、支配のオンパレードだ。確かに体制によって完全に馴致されるに至った者たちにとっては普段一切感じることもないグロテスクではあろう。然しながら本質に於いての反逆者たちにとっては日常茶飯の感覚なのであり、それがベースとなって作品化されていることによって日本を代表する不条理演劇の作家という評価が別役氏に与えられ作品に冠せられることになったのではないか? 筆者はそのように思っている。
     ところで、この「国」の政治及び上位裁判所裁判官らの多くが日常的に犯す犯罪的詭弁は、今作で終始曖昧で主体を誤魔化す話法によって自己正当化を図る倫理的退廃者たちのディスクールそっくりである。この事実の意味することこそ、今作のタイトルに凝縮された“壊れた風景”即ち壊れた健常な精神そのものだ。そう感じるのは筆者のみでないことを祈る。
  • 実演鑑賞

    満足度★★★

    台風で大雨警報の中、びしょ濡れになりながら集う人達。しかも別役実の不条理劇。

    鳴海悦子さんと浅川こころさんの母娘が山の散策の途中、道に迷う。地図と実際の風景がどうも合わない。自転車を置いて軽い口論。そこにはピクニック用のレジャーシートが広げられ、ピクニックテーブルの周りにはありとあらゆる食材が用意されている。ポータブルレコードプレイヤーからは掛けっ放しの明るいクラシックが流され、今にも楽しい食事が始まりそうな様子。だが、誰もいない。
    そのうちレコードは針飛びを起こし、同じ部分を無限にリピートし始める。イライライライラする不快感。和服姿の鳴海悦子さんはそれが気になってしょうがない。
    そこにトランク一つで通り掛かるのは薬売りの三上和之氏、駅に向かっている。何十年も通った道だから間違える訳がないと地図を手に取り、現在位置を教えようとするもどうもおかしい。更に大会途中で道に迷ったマラソンランナーの村上達哉氏も現れ、喧々諤々の会話が延々と続く。いや、そもそもその地図がおかしいんじゃないか?と思いつつ。

    永遠に続くような何とも言えない不毛な遣り取りは、第二幕から登場する夫婦(馬場大希氏と大谷友子さん)によって更なる加速を見、狂乱の宴の果てへと。

    ネタバレBOX

    ラストは演出の馬場秀彦氏が刑事役で登場して幕を閉じる。
    正直、何かが間違っていると思って観ていた。浅川こころさんと村上達哉氏はもっと強烈な個性を出した方がいい。人間関係のプロレスをやっているのだからキャラ立ちさせないと見ていて退屈。遣り取りに感情が見えた方がいい。「ああ、こういう奴いるな。」と観客に内面を覗かせていった方が。
    第二幕から勝手に他人の物に手を出して食いまくる流れになる為、食べ物をもっと美味そうな見栄えにするべき。劇の始めから、観客も演者もそれが気になって仕方がない程。一家心中の最後の晩餐にしてはヴィジュアルがしょぼすぎる。とにかくキンキンに冷えた飲み物を呷り、御馳走にむしゃぶりつく妄想を刺激させる。『千と千尋の神隠し』の両親が豚化するシーン、一度食い物に手を出したら止まらなくなる感じで。
    どんどん壊れていく人間模様は『家族ゲーム』っぽい。もっと酔っ払って暴力的でよかったのでは。堰を切ったように各々の人間性の醜さを決壊させて欲しかった。

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