壊れた風景 公演情報 劇団かに座「壊れた風景」の観てきた!クチコミとコメント

  • 実演鑑賞

    老舗の域になる神奈川の地域劇団だが、世代交替が実現している模様で活動の主体は若手。前に観たのが10年前、今回2度目であった。5年前に別役戯曲に挑戦していて、今回「壊れた風景」をやるというので久々に出かけた。スタジオHIKARIも暫くぶり。
    「壊れた風景」は私が別役作品の秀逸な世界観を知った最初の戯曲で、別役に「強い」名取事務所が周到に構築したシュールで怖い舞台だった。
    別役戯曲がその成立のために要求する役者力、演出力を、失礼ながら備えている劇団とは思わないながら、しかし意外に迫れているのではないか、との“若干の”期待もあった。当日は遅れて入場。野山を行く者が持主のいないシートに置かれた荷物と鳴り続けている蓄音機に目を止め、次第に集まって来る。何のかのとうまく正当化をしながら置かれている豊富な食べ物に手を出していく。別役らしい丁寧な言葉遣いによる会話全てが、さもしい自己正当化のために為されて行く光景は日本的な村社会の縮図であり、そして他人の物を奪う侵略の構図でもある。
    平常な会話は意外に(失礼ながら)面白く進んで行く。だがラストに至って浮かび上がるもの・・これが見えて来なかった。それはやはりそれまでのやり取りの中で欺瞞に満ちた人間の本質が伏線として表現し切れていない所にある。最後のオチは別役氏が作品を着想した実際の事件の顛末なのだろうが、この戯曲は冷や水を浴びせるような警官の報告を聞いて、死者たちの遺した(れっきとした持主が存在した)食べ物を食欲にあかして口にしていた、という己の行為を突きつけられ、動揺させられる風景でなければならない。そこを到達点とすると、やはりこれは一筋縄で行かない戯曲であった。
    会話のテンポは中々よく、アプローチによって芝居の核に迫れたのでは・・という感触は残った。

    0

    2023/06/17 14:54

    0

    0

このページのQRコードです。

拡大