壊れた風景 公演情報 劇団かに座「壊れた風景」の観てきた!クチコミとコメント

  • 実演鑑賞

    満足度★★★

    台風で大雨警報の中、びしょ濡れになりながら集う人達。しかも別役実の不条理劇。

    鳴海悦子さんと浅川こころさんの母娘が山の散策の途中、道に迷う。地図と実際の風景がどうも合わない。自転車を置いて軽い口論。そこにはピクニック用のレジャーシートが広げられ、ピクニックテーブルの周りにはありとあらゆる食材が用意されている。ポータブルレコードプレイヤーからは掛けっ放しの明るいクラシックが流され、今にも楽しい食事が始まりそうな様子。だが、誰もいない。
    そのうちレコードは針飛びを起こし、同じ部分を無限にリピートし始める。イライライライラする不快感。和服姿の鳴海悦子さんはそれが気になってしょうがない。
    そこにトランク一つで通り掛かるのは薬売りの三上和之氏、駅に向かっている。何十年も通った道だから間違える訳がないと地図を手に取り、現在位置を教えようとするもどうもおかしい。更に大会途中で道に迷ったマラソンランナーの村上達哉氏も現れ、喧々諤々の会話が延々と続く。いや、そもそもその地図がおかしいんじゃないか?と思いつつ。

    永遠に続くような何とも言えない不毛な遣り取りは、第二幕から登場する夫婦(馬場大希氏と大谷友子さん)によって更なる加速を見、狂乱の宴の果てへと。

    ネタバレBOX

    ラストは演出の馬場秀彦氏が刑事役で登場して幕を閉じる。
    正直、何かが間違っていると思って観ていた。浅川こころさんと村上達哉氏はもっと強烈な個性を出した方がいい。人間関係のプロレスをやっているのだからキャラ立ちさせないと見ていて退屈。遣り取りに感情が見えた方がいい。「ああ、こういう奴いるな。」と観客に内面を覗かせていった方が。
    第二幕から勝手に他人の物に手を出して食いまくる流れになる為、食べ物をもっと美味そうな見栄えにするべき。劇の始めから、観客も演者もそれが気になって仕方がない程。一家心中の最後の晩餐にしてはヴィジュアルがしょぼすぎる。とにかくキンキンに冷えた飲み物を呷り、御馳走にむしゃぶりつく妄想を刺激させる。『千と千尋の神隠し』の両親が豚化するシーン、一度食い物に手を出したら止まらなくなる感じで。
    どんどん壊れていく人間模様は『家族ゲーム』っぽい。もっと酔っ払って暴力的でよかったのでは。堰を切ったように各々の人間性の醜さを決壊させて欲しかった。

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    2023/06/03 13:57

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