満足度★★★★★
上質な芸術
やっと遅ればせながら「春琴」谷崎ワールドを堪能。
徹底的にこだわり抜いた独特で上質な芸術ですね、これは。
サイモン・マクバーニー…鬼才と言われるだけある。
シンプルで上質な舞台美術、役者、照明、音、映像、人形。
どれもすばらしかった。
もう一回観たい!
満足度★★★★★
陰影の奥
物語が春琴抄、全体のビジュアルコンセプトが陰翳礼讃、というイメージ。
クライマックスになだれ込んでいくくだりは春琴抄の文体そのものの、句読点や改行が省かれていても、けっして躍動的というのではなく、じわじわ上り詰めていくあの感じが見事に舞台に乗っていて美しい。
薄暗く湿り気をおびて光る、役者、人形、畳、着物。鳴くように響く三味線。サイモン・マクバーニーは、作品解釈や演出手法を見せるよりも、わたしたちが美的感覚を研ぎ澄まして谷崎の作品を「感じる」ようにしてくれたみたいだった。
すばらしいのだが
評判通り、緻密で繊細で美しくて、申し分ないのだけれども、カーテンコールの充実感とともに、なにか、全部去っていくような、たぶん来月にはなにも自分の中に残ってもいない、影響を与えられても変わってもいない、そんな気も・・。
光と音は、電気モノと生が共生。加えてタバコ臭。いろいろと刺激は多かったのですけれども、満腹感しか残らなかったのは、ちゃんと主題をつかめてないってことなのか、そういう演出なのか。
大人の人形になった生身の女優さんの身体、均整がとれていて美しすぎ。人形よりも人形らしい。
満足度★★★★★
芸術作品です。
ただただ涙が出ました。
前回より演出が少し過剰になっていましたが、演出・美術・音楽・演じる人たち・そして空気・光と影(陰翳礼讃)、の全てに魅了される、ほんとうに素晴らしい作品です。
とくに深津ちゃんの素晴らしさと言ったら言葉では上手く言えません、文字にできません。ぜひ、ご覧になって凄さを感じていただきたい!!初めての方は「春琴抄」だけでも読んでいったほうがいいと思います(読んでいなくてもストーリー通りですが、わかっていたほうが強く五感が刺激されるかも)。前に観たときにすごく濃密なイメージだったので3時間くらいあった気がしていたのですが、1時50分という短い舞台でビックリ。なので体もラクです(笑)なので、立ち見でもぜひっ!
満足度★★★★★
三度目の観劇でも色褪せず
初演から毎回見ているので、これで三度目の「春琴」でした。
でも、何度見ても全く色褪せなくて、何度でも見たくなってしまう不思議な魅力の舞台です。
満足度★★★★★
素晴らしい
見逃していたこの作品を今回ついに体験。素晴らしいの一言。心から満足した。ごくシンプルであったり、けして奇をてらっているわけではないはずのひとつひとつの演出的アイディアが、非常に研ぎ澄まされていることで、極上の演劇的瞬間を生み続ける。俳優達の演技は無理がなくかつ芳醇で深く、上質な絹のような時間を過した。作品にも演者にも一切の邪念がなく、カンパニー力も素晴らしい。高貴なくらいだった。
満足度★★★★★
鮮烈な演劇的イリュージョン
谷崎潤一郎の『春琴抄』を映像、身体表現、人形などを駆使して幻想的に描き、実験的でありながら美しくて品のある素晴らしい作品でした。度重なる再演や海外公演が行われているのも納得です。
単純に『春琴抄』の物語が演じられるのではなく、ナレーターによって読まれるラジオドラマや谷崎潤一郎のモノローグ、『春琴抄』の登場人物の回想といった異なるレイヤーが同時進行する構成が巧妙で、フィクション性とリアリティが両立していました。
ビジュアル面では同じ谷崎の『陰翳礼讃』からインスパイアされていて、全編に渡ってステージ上が全て明るくなることはなく、暗いシーンがほとんどで幻想的な雰囲気が出ていました。映像はただ壁に投影するのではなく、様々なものに投影して、幽霊のような不思議な存在感が出ていました。セットも非常に簡素でありながら、少ない物と人による「見立て」で多様なものを表現していて、豊かな空間になっていました。
そして、春琴を演じる/操る深津絵里さんの演技が圧巻でした。いかにも主役といった前に出てくる演技ではなく、控えめな感じなのですが、幼少の頃から大人の女性まで巧みに声色を使い分け、強い存在感がありました。
様々な演出のアイディアが必然性を持って使われ、耽美的な物語との組み合わせが非常に上手く行っていて、舞台芸術だからこそ表現可能な独特の質感が強く感じられました。