春琴(しゅんきん) 公演情報 世田谷パブリックシアター「春琴(しゅんきん)」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★★

    鮮烈な演劇的イリュージョン
    谷崎潤一郎の『春琴抄』を映像、身体表現、人形などを駆使して幻想的に描き、実験的でありながら美しくて品のある素晴らしい作品でした。度重なる再演や海外公演が行われているのも納得です。

    単純に『春琴抄』の物語が演じられるのではなく、ナレーターによって読まれるラジオドラマや谷崎潤一郎のモノローグ、『春琴抄』の登場人物の回想といった異なるレイヤーが同時進行する構成が巧妙で、フィクション性とリアリティが両立していました。

    ビジュアル面では同じ谷崎の『陰翳礼讃』からインスパイアされていて、全編に渡ってステージ上が全て明るくなることはなく、暗いシーンがほとんどで幻想的な雰囲気が出ていました。映像はただ壁に投影するのではなく、様々なものに投影して、幽霊のような不思議な存在感が出ていました。セットも非常に簡素でありながら、少ない物と人による「見立て」で多様なものを表現していて、豊かな空間になっていました。

    そして、春琴を演じる/操る深津絵里さんの演技が圧巻でした。いかにも主役といった前に出てくる演技ではなく、控えめな感じなのですが、幼少の頃から大人の女性まで巧みに声色を使い分け、強い存在感がありました。

    様々な演出のアイディアが必然性を持って使われ、耽美的な物語との組み合わせが非常に上手く行っていて、舞台芸術だからこそ表現可能な独特の質感が強く感じられました。

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    2010/12/04 13:22

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