満足度★★★
難しかったかも。
主演の松本幸四郎さんをちゃんと観るのは本当に初めてで、客層や、彼が登場した瞬間に起こる拍手などが、正に歌舞伎!といった感じ。カエサルという、ローマのリーダーにとても相応しいキャスティングだったのではないでしょうか。威厳とオーラたっぷり。ただ言ってることがちょこちょこわからなかったですね、歌舞伎訛り?
他キャストも健闘、かなと思いました。
水野さん、小澤さん、いっけいさんなどなど。
説明台詞が多いわりに伝わりにくいのが残念でした、滑舌ってほんと大事ですね~。
あと笑いどころがよくわからなくて、これは年配ばかりの客層のせいなのか…、はたまた私が民也演出が苦手なのか!うーん、どっちだったんだろう。
席は上手ブロックの上手通路近く、後方。
スピーカーがとても近く、民衆の声などをテープで表現してたので結構辛かったです。2階席の人が途中入場する度に光がかなり漏れるし、隣と後ろの私語やらガサガサ音が酷いし、連れがそれにずっとイライラしてるし…席はハズレでしたねぇ。席が、というより周りの環境が!ですけれども。
おじいちゃんおばあちゃんばっかりだったから仕方ないのかなぁ、やっぱり演目と劇場の雰囲気なのかなぁ、帝劇や新感線観たときの演舞場ではそんなことなかったから、残念です。礼儀正しい方々には申し訳ありませんが、歌舞伎ファンってこんなもんかーって印象持っちゃいました。
満足度★★
「ブルータス、お前もか」は無し
歴史に忠実なまじめな解釈の正統派ストーリーだと思いました。
でも、「ブルータス、お前もか」などの名場面をきちんと芝居で見せなかったのが非常に残念。
普通に行けば、あそこが見せ場に違いないのに、いつのまにか殺してた、みたいな展開で、すごくがっかりしました。
セリフ回しが古い口調なのと、セリフで状況説明をしていくような展開なので、難しくてもじっと聞いてないといけません。
人によってはちょっと眠くなるかも。休憩中に帰られた方も多く見られました。
小澤征悦が意外に長身で、目力も強く、松本幸四郎より存在感がありました。あと、渡辺いっけいもやはり上手いです。
満足度★★★★★
「2000年以上前に起きた」うねるような人間ドラマ。
松本幸四郎が渾身の演技で挑む、英雄ユリウス・カエサル(英語名ではジュリアス・シーザー)の半生。
ユリウス歴(太陽暦)をはじめ、7月の英語名ジュライの語源でもあったり、ルビコン河、「賽は投げられた」、「ブルータスお前もか」など、現在に至るまで様々な事柄にその存在を残した英雄カエサルの物語。
10月2日のゲネプロ観劇以来、いよいよ本公演の観劇です。
その時から公演回数を重ねてきているので、当然かもしれませんが、幸四郎さんをはじめ、みなさん役がしっくりきている感じがします。
中でも、瑳川哲朗さん演じるポンペイウス、勝部演之さんのクラッススとの三者会談での幸四郎さんが生き生きしてて良かったですね。
瑳川さんも、勝部さんもグレーの髪と衣装が実にしっくりきていて、そのまんまローマ人になってます。
特に瑳川さんの髪と立派なひげの自然な貫禄が印象的です。
さて、今回あらためて観ると、カエサルも英雄ではあれど、最善を尽くした普通のローマ人の一人にすぎない。
彼を暗殺する側にも一理があって、双方とも悪意があるわけではない。
キケロもブルータスも、誰もがカエサルの人間の大きさ、寛容さの前では、自分の矮小さをまざまざと突き付けられているように感じてしまう。
そのことが怖くなり、焦り、その結果、反発や否定してしまう。
しかし、その「独裁を許さず共和制を守るため」だったはずの暗殺が、結果的にはローマ帝国とローマ皇帝による真の独裁を生むことになったともとれるこの皮肉。
民衆の圧倒的な支持を得た、善意の優秀な英雄であっても、独裁は許されないのか。
能力や意識が低く社会が良くなくても、話し合いと合意による政治のほうが良いのか。
月並みな表現ですが、大きな時代の波に流されながら翻弄される人間の姿は、2000年以上前から変わっていないのだなぁと、しみじみ感じたのでした。
類型的な「ブルータスお前もか。」の名場面が無いのは、そんな陳腐なことでは、とても表現できないからだろう。
…深い。
満足度★★★★
お腹いっぱい
原作者の塩野七生さんは、カエサルを描くために全15巻(単行本で。文庫本だと倍くらい。)の物語を書ききったと仰っているようですが、それだけ魅力ある、そして、〝ローマ帝国〟には重要な人物(本人は共和制を推進)。
回想の中でさらに回想が差し込まれるので、できれば観る前に舞台の構成を知っておくと、途中で置いていかれないで済むかもしれません(パンフレットは少々高目の1,500円)。
ほとんどの人がカエサル(シーザー)の最期は知っているわけで、ルビコン河やクレオパトラとのエピソードも有名過ぎるし、外せないしで、2時間半でもとうてい足りない感じですが、よくまとまっていると思います。
大劇場で大役者(幸四郎)主演なので、脇役も豪華過ぎてもったいない。そんな中、青年座の檀さんと佐藤さんの健闘に拍手です。
満足度★★★
ずっしりときた
塩野七生さんのローマ人の物語が原作、これは読もうと思いつつ実現できないままに、本作を見ることになりましたが、松本さんのカエサルはさすがというべきか堂々としていて、圧巻でした。ブルータス役の小澤さん、クレオパトラ役の小島さんも見ものでした。その中でもキケロ役けの渡辺いっけいさんが出色のできばえでした。
満足度★★★★
松本幸四郎渾身の演技でシーザーの半生に挑む.水野美紀も大活躍!(ゲネプロ観劇)
松本幸四郎が渾身の演技で挑む、英雄ユリウス・カエサル(英語名ではジュリアス・シーザー)の半生。
ユリウス歴(太陽暦)をはじめ、7月の英語名ジュライの語源でもあったり、ルビコン河、「賽は投げられた」、「ブルータスお前もか」など、現在に至るまで様々な事柄にその存在を残した英雄カエサルの物語。
まず目についたのが、通路に敷き詰められた、当時の服装をイメージしたような白い木綿か麻の絨毯。
幕も同じ素材が素朴な感じで縫い合わされ吊るされている。
冒頭、行き交う多数の民衆の影がシルエットが、幕に映されて効果的なビジュアルから始まる。
そして、カエサルが戦士たちを鼓舞する演説の場面に。
この演説が戦士の心をとらえる様子から、人心掌握に長けた英雄の一面をのぞかせ、この後も、政治家としての策略ぶり、愛人との関係では英雄色を好む姿など、様々なエピソードを通じて、カエサルの人間性を描いていきます。
しかし、誰もが知っている有名なその最期は、終始影を落としています。
これに並行して、政敵のキケロと、愛人の子であり側近となるブルータスが逐次登場し、やがて観ている者の興味は「その時」に向かって、カエサルに対する心情がそう変わっていくのか、なぜ「そうなった」かに収束していきます。
共和制が揺らぎだしていたローマ。
カエサルは民衆の絶大な支持を得ていたが、その独裁がゆえに暗殺に至る。
それでも後継者によって「ローマ帝国」が築かれたという歴史の大きな流れを改めて認識。
松本幸四郎さん演じるカエサルは、幸四郎さん自身の人格がにじみ出て、人種を越えた人物として感じさせてくれます。
いくつかの場面だけで、人間カエサルを描くにはもう少しエピソードが厚いほうが良かったかも。
そこを本人の人間が埋めている。
瑳川哲朗さん、勝部演之さん、ご両人はさすがの存在感。
あの短時間のみ、主に一幕のみの出番では非常にもったいない。
そして、小島聖さんがクレオパトラだったとは!
美しさと存在感とその貫録に、勝気でありながら憂いを持ち、王でもあった姿を好演。
高橋惠子さんはいつになく、ふくよかで穏やか、でも芯は強く。
全編いかつい話の中で、ユーモラスで気が抜けるのは、渡辺いっけいさんと、水野美紀さん。
特に水野美紀さんが大活躍!
これまで延々と「踊る大捜査線」の雪乃役の大人しいイメージの役ばかりでしたが、今回ばかりは、自身が立ち上げたユニット・プロペラ犬公演での役に近いコメディエンヌぶり。
本作での笑いの部分を、ほとんど一人で背負っているのではないか。
それだけにともすると浮いてしまいそう。
しかも笑いだけではなくて、メインキャストではほとんど唯一、市民以下の奴隷の立場から、カエサルとローマ社会を見ている、観客の目線に最も近いとっても重要な役です。
その真価は、本公演で大勢の観客がいてこそ、わかるものだと思う。
第一幕1時間5分、休憩20分、第二幕1時間5分、計2時間30分。