カエサル 公演情報 松竹「カエサル」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★★

    「2000年以上前に起きた」うねるような人間ドラマ。
    松本幸四郎が渾身の演技で挑む、英雄ユリウス・カエサル(英語名ではジュリアス・シーザー)の半生。
    ユリウス歴(太陽暦)をはじめ、7月の英語名ジュライの語源でもあったり、ルビコン河、「賽は投げられた」、「ブルータスお前もか」など、現在に至るまで様々な事柄にその存在を残した英雄カエサルの物語。

    10月2日のゲネプロ観劇以来、いよいよ本公演の観劇です。
    その時から公演回数を重ねてきているので、当然かもしれませんが、幸四郎さんをはじめ、みなさん役がしっくりきている感じがします。

    中でも、瑳川哲朗さん演じるポンペイウス、勝部演之さんのクラッススとの三者会談での幸四郎さんが生き生きしてて良かったですね。
    瑳川さんも、勝部さんもグレーの髪と衣装が実にしっくりきていて、そのまんまローマ人になってます。
    特に瑳川さんの髪と立派なひげの自然な貫禄が印象的です。

    さて、今回あらためて観ると、カエサルも英雄ではあれど、最善を尽くした普通のローマ人の一人にすぎない。
    彼を暗殺する側にも一理があって、双方とも悪意があるわけではない。
    キケロもブルータスも、誰もがカエサルの人間の大きさ、寛容さの前では、自分の矮小さをまざまざと突き付けられているように感じてしまう。
    そのことが怖くなり、焦り、その結果、反発や否定してしまう。
    しかし、その「独裁を許さず共和制を守るため」だったはずの暗殺が、結果的にはローマ帝国とローマ皇帝による真の独裁を生むことになったともとれるこの皮肉。
    民衆の圧倒的な支持を得た、善意の優秀な英雄であっても、独裁は許されないのか。
    能力や意識が低く社会が良くなくても、話し合いと合意による政治のほうが良いのか。
    月並みな表現ですが、大きな時代の波に流されながら翻弄される人間の姿は、2000年以上前から変わっていないのだなぁと、しみじみ感じたのでした。
    類型的な「ブルータスお前もか。」の名場面が無いのは、そんな陳腐なことでは、とても表現できないからだろう。
    …深い。

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    2010/10/29 02:03

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