オルガ・トカルチュクの『宝物』 公演情報 オルガ・トカルチュクの『宝物』」の観てきた!クチコミ一覧

満足度の平均 4.8
1-4件 / 4件中
  • 実演鑑賞

    満足度★★★★★

    鑑賞日2022/10/20 (木)

    ポーランドのノーベル文化賞受賞者オルガ・トカルチュク (Olga Tokarczuk) の作品
    シンプルな舞台美術と生ピアノの音楽(転換にのみ使われていたと思う)にまず魅了された。
    とにかく観て感じて欲しくて知り合いに紹介しました。それくらいインパクトがありました。
    シアターχの関連企画はきっと観た方が良いと思いました。

  • 実演鑑賞

    満足度★★★★

    ポーランドとの所縁を温めるシアターX独自の上演企画。
    ノーベル文学賞受賞(2018年)の女性作家オルガ・トカルチュクの作品との事だが、アフターミーティング(シアターX主催公演では上演後会場との交流を行なう)で知った所では、この作品はかつて発表した小説(連作短編の一つらしい)ではあるが、本国で近年これをTVドラマ化するために脚本化したものをプロデューサー上田美佐子が入手、伊在住の井田邦明が演出した。
    戦後間もないポーランドのある地方の一家の日常。が、主人公の娘クリシャが夢の中で自分に呼びかける男を探して旅に出る・・。占領から解放された人々の貧しさと酷薄な現実をベースに、寓話性を粉末でまぶした味わいがあり、短編小説らしさがある。ストーリー自体よりも、人々の生活風景と心象風景に、何か惹かれるものがあった。
    美術が簡素ながら作品世界を過不足なく満たし、ピアノの生演奏は場面を象徴するクラシック曲を印象的に提示して、作品にマッチしていた。

    ネタバレBOX

    余談。ポーランドと言えば・・と自分との接点を探してみると、まず何と言っても映画。まず名作と言われるアンジェイ・ワイダ初期、抵抗三部作の一つ「地下水道」(モノクロ)は鉄板として、リアルタイムで観た「悪霊」に心酔。当時若手だったクシシュトフ・キエシロフスキの「殺人に関する短いフィルム」「トリコロール」三部作のどれか一つを公開当時に。そしてロマン・ポランスキー。本国で撮った「水の中のナイフ」「袋小路」等は割と最近になって観たが、わが映画鑑賞史的には「チャイナタウン」が断トツ。古い名作「尼僧ヨアンナ」は名のみで鑑賞の機会がない。小説では勅使川原三郎を通してブルーノ・シュルツを知った程度であった。私の中で大きかったのはある論考で、地勢的に大国の干渉や占領時代を経験したポーランドは朝鮮半島と共通するものがあり、底辺から物を見つめる目線が人間社会の本質の理解に影響し、それらは芸術作品に反映している、といった趣旨が記されていた。私のポーランド観のベースになった。
    境遇が人格や思想を規定する、という事であるが、今ふと思い出したのは沖縄辺野古の座込み運動を揶揄した某氏(これはひどいというしかないが某氏の信奉者は意外に多いようで)。氏の言動には「下から見る目線」というものが全くない事に思い当たる。結果、偏狭と言うしかない思考の中で、論拠と言えるものは突き詰めれば「好き嫌い」しかない、という状態に無自覚になる(主張の根拠というものは究極「好き嫌い」の次元でしかないと思うが、論者ともなればそれなりに説明できる論拠を持とうとし、それが普遍性に近づく担保となる)。正邪より好き嫌いが優位に来た場合、「議論の無意味化」をもたらし、多様な意見の衝突の場は、いつしか同一意見を確認する場(少数意見の持主は少数派である事を忌避して沈黙する事になる)へと変質して行く。これはファシズムそのもので、日本はその完成形まで折り返し地点を超えたと私は思ってるが、権利意識の減退は若い世代になるほど加速している感がある。美徳のはき違えは身体感覚に刷り込まれ、改良には彼らの人生の長さをかけるしかない(私も親と時代から受けた洗脳を脱するためには長い時間が必要だった)。従って教育を変え、次世代に託す態度が必要だが、この教育の方向性も数十年かけて「権利より義務」「公権力への絶対視」「管理主義」へ一歩ずつ漸進して来た。押し返した試しがない(新しい教科書をつくる会編纂の歴史教科書の採択運動が地方自治体で起きたりもしたが、これは科学的知見の問題で自然な流れで採用例希少となっている)。
    沖縄に対する本土人の差別意識が解消される契機は、国が沖縄に手を差し伸べ態度を改めること、以外には考えにくい(自ら認識を改めるなんて事は教育の現状では起こり得ない)。
    話は飛躍しまくったが自分の中ではなぜだかさほど違和感がない。ご静読感謝。
  • 実演鑑賞

    満足度★★★★★

     あと2回公演が残っている。22日14時、23日14時である。観るベシ!

    ネタバレBOX

     今日は少し、前回書かなかったことを書いておこう。ピアノ演奏は無論生で、作品がポーランドのオルガ・トカルチュク(2018年ノーベル文学賞受賞)唯一の脚本ということもあり、演奏される曲は総てショパンの作品である。ショパンに詳しい人なら何故、「革命のエチュード」があれほど激しい曲なのかも充分理解していることだろうし、ポーランドが2世紀に跨る長い間、国土を失っていたことも、その間劇場と教会内のみでポーランド語の使用が許されたこと、このような歴史があるからこそ、未だにポーランド演劇は社会性、政治性が作品に顕著に見て取れることも。この傾向はポーランドのみならず、チェコや、ハンガリーにも見られるが。
     何れにせよ、日本の事大主義に則って作られる多くの作品とは根底が全く異なる。皆、命賭けである点が異なるのだ。この「宝物」でもポーランドが味わってきた苦く地を這うような歴史の頸城が背景にあるのは無論のことだ。然し日本人に彼らの味わってきた苦悩を具体的に理解することは不可能だろう。事大主義で凝り固まっている典型的日本人なら分かるハズが無い。原理的に理解できないのだ。
    「宝物」は極めてポエティックな作品である。踏み潰され、蹂躙され、差別され地を這いながら血を吹き青空をその上澄みで染めてきた彼ら・彼女ら、そしてその子供たち、孫や曾孫たちが殆ど総てを奪われることによってアイデンティファイの何たるかを知り、以て自らの血と汗と苦悩という形の思考を通して到達した地平で、こう問うことを誰も止められない。曰く、我らは何処から来て、何処へ行くか? 我ら、ヒトとは何か? この根源的な問いを真っ直ぐに問うことで断片化された生を今迄とは異なる方法で問い、再び何らかの出会いを齎す為に夢を夢見る。そのような存在の裸形をこそ今作は垣間見せていると言えよう。
  • 実演鑑賞

    満足度★★★★★

     一時、日本の新劇をリードし一世を風靡した劇団の人々は観ておくべき作品だろう。原作はポーランド出身で2018年にノーベル文学賞を受賞したオルガ・トカルチュク。今作は彼女の唯一の戯曲だが「昼の家、夜の家」という彼女の小説をTV用に再構成して戯曲化した作品である。作品の特徴は、因果律等の必然性を背後にした文脈からある意味離れ、而もベケット流不条理とはならず、寧ろ無という概念的零を目指すも実際には至り着けない無限の希薄とか、宇宙で完全な概念としての真空を目指しても実際には究極の真空には到達できない物理学の実際に経験させられる事実とかを表象するに近い。極めて知的で知的探求心にも富み、該博な知にも支えられながら実際にはイデアとしての零にも、即ち無にも辿り着けない我ら人間の知の限界にも竿さしつつ、遥か向こうで笑っている何か、人間の知等を遥かに凌駕した無限の知力の夢を夢見るような世界に開かれているかも知れない新しさが感じられる。

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  1. 話題の公演 5.0(11) BALBOLABO/テノヒラサイズの人生大車輪2022~10/23まで 4.7(3) シアターX(カイ)/オルガ・トカルチュクの『宝物』~10/23まで #東京観劇カレンダー

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  2. 話題の公演 5.0(4) BALBOLABO/テノヒラサイズの人生大車輪2022~10/23まで 4.7(3) シアターX(カイ)/オルガ・トカルチュクの『宝物』~10/23まで #東京観劇カレンダー

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