オルガ・トカルチュクの『宝物』 公演情報 シアターX(カイ)「オルガ・トカルチュクの『宝物』」の観てきた!クチコミとコメント

  • 実演鑑賞

    満足度★★★★★

     あと2回公演が残っている。22日14時、23日14時である。観るベシ!

    ネタバレBOX

     今日は少し、前回書かなかったことを書いておこう。ピアノ演奏は無論生で、作品がポーランドのオルガ・トカルチュク(2018年ノーベル文学賞受賞)唯一の脚本ということもあり、演奏される曲は総てショパンの作品である。ショパンに詳しい人なら何故、「革命のエチュード」があれほど激しい曲なのかも充分理解していることだろうし、ポーランドが2世紀に跨る長い間、国土を失っていたことも、その間劇場と教会内のみでポーランド語の使用が許されたこと、このような歴史があるからこそ、未だにポーランド演劇は社会性、政治性が作品に顕著に見て取れることも。この傾向はポーランドのみならず、チェコや、ハンガリーにも見られるが。
     何れにせよ、日本の事大主義に則って作られる多くの作品とは根底が全く異なる。皆、命賭けである点が異なるのだ。この「宝物」でもポーランドが味わってきた苦く地を這うような歴史の頸城が背景にあるのは無論のことだ。然し日本人に彼らの味わってきた苦悩を具体的に理解することは不可能だろう。事大主義で凝り固まっている典型的日本人なら分かるハズが無い。原理的に理解できないのだ。
    「宝物」は極めてポエティックな作品である。踏み潰され、蹂躙され、差別され地を這いながら血を吹き青空をその上澄みで染めてきた彼ら・彼女ら、そしてその子供たち、孫や曾孫たちが殆ど総てを奪われることによってアイデンティファイの何たるかを知り、以て自らの血と汗と苦悩という形の思考を通して到達した地平で、こう問うことを誰も止められない。曰く、我らは何処から来て、何処へ行くか? 我ら、ヒトとは何か? この根源的な問いを真っ直ぐに問うことで断片化された生を今迄とは異なる方法で問い、再び何らかの出会いを齎す為に夢を夢見る。そのような存在の裸形をこそ今作は垣間見せていると言えよう。

    0

    2022/10/22 04:24

    0

    1

このページのQRコードです。

拡大