日本語を読む その3~ドラマ・リーディング形式による上演~『熱帯樹』 公演情報 日本語を読む その3~ドラマ・リーディング形式による上演~『熱帯樹』」の観てきた!クチコミ一覧

満足度の平均 3.7
1-5件 / 5件中
  • 201005051900

  • 満足度★★★★

    大輪の花のような
    深紅の薔薇か、花粉まみれの百合か、とにかく大輪の花の匂いに噎せかえるような、濃密な時間だった。台詞の点が、集まって線となり、密度を増して、織り上がった面が迫ってくるような、勢いのある演出。
    上演すると、なんだかうごめく生きものみたいになるよね。三島由紀夫って。ライフワークのように三島作品を演じる"役者"さんは幾人かいらっしゃるけれど、作品全体を正しい充実感で満たせる"演出家"さんというのは、極めて少ないのではないだろうか。
    役者さんの中では特に久世星佳さんが、それこそ宝塚音楽学校のころから今に至るまで、ストイックに声と身体とドラマティックでゆたかな語彙を鍛えてこられたことが伺いしれる、すばらしい演技でした。

    ネタバレBOX

    作品とは直接関係ないけれど、この企画全体を観て思ったこと。
    たぶん『ドラマリーディング』と『朗読劇』と『台本を持った状態の立ち稽古』が、日本の俳優たちの体内で、まだ未分化であるのだ。それが演出の及ぶ範囲以外の、俳優の身体にダイレクトににじんでいるのを感じる。
    今後、そのへんの理論を自分で構築したうえで締め上げて作品をつくっていく演出家さんが増えて、リーディングがもっとおもしろくなるといいな。
  • 満足度★★★

    日本語を「読む」ということ
    「日本語を読む」
    という企画にばっちりドストライクな芝居。

    ネタバレBOX

    三島由紀夫の戯曲、聞いているとシェイクスピアを連想させられる。

    この『熱帯樹』は『ハムレット』と『マクベス』が見え隠れするようで、
    リーディングなのだけれどとてもダイナミック。
    ダイナミックかつ、繊細な世界観がなかなか心地よかった。

    今流行の現代口語による戯曲とはかけはなれた、
    セリフで聞かせる三島由紀夫の文体が、
    リーディングという形にピタリとはまっている。
    動きも最小限に絞ってあり、文字通り、
    まさに「日本語を読む」正統派リーディングだ。

    リーディングとなると難しいのは、どこまでやるか、じゃなかろうか。
    稽古を重ねるうちに役者は動きたくなってくるだろうし、
    演出家もきっとどんどん欲が出てくる。
    「リーディング」という形式を見失わずに上演にこぎつけるのは
    なかなか難しいことのように思う。

    その点、この『熱帯樹』は動きが邪魔になることなく、
    むしろ少ない動きを効果的にキメていたのが印象に残った。
    リーディングの背骨を「言葉」と「戯曲」に持ってくるのは、
    きっと簡単そうで一番難しい事だ。

    二人だけが共有する秘密、とか
    それが明るみに出ちゃう、とか
    そういうシーンがとてもセクシーに見えたのは、
    演出家・谷賢一がアフタートークで語った「H」が重要なんだろうな。

    どっぷり三島由紀夫の日本語を味わえたが、
    ちょっとセリフ早い感じがする、とか、
    ちょっとテンション高すぎでは…ってなシーンがあったように思えるのも事実。
    やはりリーディングってのは難しい。
  • 近親相姦・兄妹編
    なにしろ三島由紀夫の戯曲「熱帯樹」が初めてだったので、内容的には最後まで飽きることがなかった。偶然だろうけどこの戯曲、5月5日から9日まで、劇団Ort-d.dも池袋のアトリエ・センティオで上演する予定。

    出演者は5人(石母田史朗、久世星佳、中村美貴、松浦佐知子、吉見一豊)。役者が台本を手にしてのリーディング公演。これは私だけの感じ方かもしれないが、リーディングの場合は何よりもまず、発声の明晰さを優先してほしいと思う。感情を込めてしゃべることで台詞が聞きづらくなるくらいなら、むしろ棒読みでしゃべったほうがマシ。もちろん聞きとりやすくてなおかつ感情がこもっていればいうことはないのだが。
    その意味では、父親役の吉見一豊がよかった。

    若手演出家3人によるドラマ・リーディング。その第1弾である今回はdull-colored popの谷賢一が演出を担当。それほど特徴の感じられる演出ではなかった。むしろオーソドックスというか。

    間に10分ほどの休憩が入る。正味2時間半の長い作品。

  • 満足度★★★★

    本物志向!
    将来有望な若手演出家の競演ということで、リーディングとはいえ、それぞれどんな策略を巡らせてくるのかと思ったが、谷賢一はあくまで正攻法で三島由紀夫に対峙した。

    三島の戯曲の持つ言葉のリズムをとても大切にした演出。2時間半という長丁場だったが、素敵な音楽を聴いているような気分だった。

このページのQRコードです。

拡大