演出の力
夫を戦争で亡くしてただ嘆くばかりの日々を暮らす未亡人の元へ、夫の同僚だったという男が尋ねてくる。彼は夫に貸した金を返してほしい、明日までに銀行へ利子を払わなくてはならないと言う。しかし未亡人は、今は手元に金がないから明後日まで待てと応える。承知できない男はそのまま居座ろうとするが‥‥。
約40分の短編で、基本的に喜劇だ。ルドルフは普通の舞台セットで最初から割と喜劇的な雰囲気を出す演出だったのに対し、このしたやみは極めてシンプルだが何か象徴的な舞台セットで、演出も喜劇的要素は控え目だった。
どちらが優れているか決めるようなものではないので両方それなりの楽しみ方が出来たが、何より演出次第で同じ戯曲がこれほど違うものになることを見せつけられたのが心地よかった。同様な試みは昨年2月にも「人は死んだら木になるの」でも実施されて、その時もこのしたやみは参加している。今後もこういうスタイルの上演は観てみたい。
満足度★★★★
同じストーリーというだけ
2つの団体によるチェーホフ「熊」の上演。同じストーリーというだけで、全く違う芝居。前者は男性の演出家、後者は女性の演出家、ってことをちょっと思ったりする演出の異なり方でした。見た順は「このしたやみ」→「ルドルフ」。
「このしたやみ」の「熊」は、純粋に二人芝居。会話しているようで、会話してない。空間も同じのようにもみえるし、同じじゃないようにも見える。
最初の長い語りで、若干睡魔に襲われなくもないし、早口でまくし立てられると何を言ってるかわからなくなったりもするし、二口さんが落語をやってるようにも見えてくる。必死で可笑しい、いとおしい熊さん。最後はご褒美、かな。まぁ、相手も人間なんだけど。
と、私は見ましたが、良くも悪くも京都の前衛系。
「ルドルフ」の「熊」はなんとなくロシアな雰囲気を出そうとしてるかもしれないセットに、純日本歌謡から。ただし、それ以外は比較的普通?に進む。チェーホフっぽいダルさとかはあんまりなくて、カラっと気持ちよく見てられるテンポ。
途中、テンションあがってきた後、ラストまでの引っ張りは色々な面でお見事。That's小劇場。なぜかでてきた感想は「オタク系チェーホフ」だったけど、理由は不明。
なので、次は三人姉妹か桜の園をやってください。
同じ芝居を演出違いで見せる上演形態は、過去に京都で何作か見ましたが、どちらにしろ面白いですね。
休憩中(20分)に販売してたボルシチは美味しかったけど、夜とか雨とかだったら寒そう・・・と、思いました。
ルドルフ×このしたやみ 「熊」
2010/1/23 アトリエ劇研にて
ルドルフ(演出:筒井加寿子):岩田由紀 駒田大輔 中嶋康喜
このしたやみ(演出:山口浩章):二口大学 広田ゆうみ
満足度★★★★
一度見て二度美味しい的な
正確に言うと、1つの戯曲(チェーホフの『熊』)を「ルドルフ」と「このしたやみ」という2つのグループがそれぞれ上演する企画。違った趣向を持つ演出で見て、それぞれを比べながらチェーホフを味わうのはあまりない体験ではないだろうか。話も分かりやすい。休憩をはさんでそれぞれ45分程度の上演。寒さ対策は必要です。