お勢、断行 公演情報 お勢、断行」の観てきた!クチコミ一覧

満足度の平均 4.0
1-4件 / 4件中
  • 実演鑑賞

    満足度★★★★

    五年前に、乱歩の知られざる悪女・お勢が舞台に颯爽と登場した。お勢を軸におどろおどろしい乱歩の恐怖と幻想の物語作品が、百年後の現代の舞台になった。好評だった「お勢登場」を受けた第二シリーズの「お勢断行」は、ゲネプロが終わった日にコロナで上演中止が決まった。それから二年ようやくの幕開きである。主演は第一作のお勢が黒木華から倉科カナに変り、原作をとどめて短編がコラージュされていた脚本は、お勢を主人公とする長編のオリジナル悪女物になった。新作と言ってもいい。
    まず、その功罪。物語は資産家の松成家の相続争い.筋立ては、当主を精神病という事にして蟄居させ、後妻(大空ゆうひ)とその資産を狙う代議士(梶原善)と医師(正名僕蔵)が横取りしようとたくらむ。その三悪人を操ろうとするお勢(倉科カナ)と千歳の娘(福本莉子)。彼らの手先となる女中(江口紀子)、その縁者の電気工事の若者(粕谷吉洋)、コメディリリーフ的に出てくる当主の姉(池谷のぶえ)。悪人揃いの足の引っ張り合いである。良い方から行くと、かなり複雑に入り組んだ利害関係、人間関係がはじめは時間経過も前後して分かりにくいのだが、やがて、スルスルと納得でき、それぞれのキャラクターもよく見えてくる。この作りのうまさは大したもので、倉持裕、いつの間にか大劇場が開くくらいにうまくなっている。
    しかし、構成はうまくても、登場人物の悪のキャラは、それぞれに見せ場はあるものの、大したことはない。一口で言えば、悪人としても小物で、小物なりの面白さも薄い。だから、ドラマの進行は、面白く見られるものの薄味である。そこが、乱歩原案と謳っていながら乱歩の毒から離れてしまった残念なところだ。前面に大きなパネルの障子を八枚それをスライドさせて戦前の日本家屋の雰囲気を出したり、女優たちの和服のデザインが今ふうなのに決まっていたり、音楽の斎藤ネコの歌を福本莉子が歌ったり、といろいろ洒落てはいるのだが、これで乱歩?と言う感じである。百年前の作品だから、現代の舞台で上演するにはそれなりの工夫が必要だが、どこか乱歩を料理する方向性が決まっていない。それは、例えば、乱歩の世界とはそぐわない喜劇的キャラクターやギャグを取り入れているところにも表れている。その戦前の社会の乱歩趣味が生きていないと、折角のお勢という新キャラクターも生きてこない
    で、キャステキングになるが、倉科カナがまずいということでは全くないのだが、前の黒木華が良すぎた.虫も殺さぬ顔の普通の女が、平然と夫殺しに走るところがガラにもはまって絶妙だった。倉科は損をしたのだが、お勢を毎回変えるという趣向もある。さらに言えば、この本なら、もっと商業演劇的配役でもよかったような気がする。
    世田パブは昼間から満席。こういうシリーズ悪女物は企画としてもユニークで面白いし、ジャニタレ頼みでない興行もいいのだから、あまり凝りすぎずにぜひ続けてもらいたい。



  • 実演鑑賞

    満足度★★★★★

    倉持さんの演出最高!
    倉科カナさんの演技も最高でした!
    この二人が関わる作品は今後も追っていきたいです。

  • 実演鑑賞

    満足度★★★

    2017年2月、シアタートラムで上演された『お勢登場』が素晴らしかった。黒木華主演で8本の乱歩の短編小説を一つに纏め上げたピカレスク・ロマン。やはりそれを期待して今作のチケットを取ったが2020年2~3月公演は緊急事態宣言で中止。しかも公演の二日前の発表。そして今回ようやく上演される運びに。無垢で天真爛漫、そして天性の犯罪者。お勢を倉科カナさんがどう演じるのか?

    きつい和装美人の大空ゆうひさん、アイドル顔の福本莉子さん、和製ドニー・イェンの梶原善氏、池谷のぶえさんに江口のりこさん・・・、豪華キャストの大盤振る舞い。
    金の掛かった舞台美術は上下左右前後に可動。

    あるシーンを予告篇のように先に見せる手法。作中でそのシーンが訪れる際、デジャヴを感じて妙な気分になる。「ああ、あの描写はこれだったのか」的な。

    福本莉子さんの歌う「明日にするわ」がやたら良かった。

    ネタバレBOX

    この脚本は・・・、酷い。

    可動するセットも余り意味がない。舞台を転換する必然性がないのにガラガラ動くだけ。そもそも芝居にする程の話ではないのに、無理矢理膨らませているような。
    『アウトレイジ』のキャッチコピー、「全員悪人」を狙ったのだろうが不発。各人の欲望の目的があやふや。財産目当てなのか、復讐目当てなのか、ただの悪戯なのか。倉科カナさんが福本莉子さんの願いを叶える為に動くのもさっぱり理解出来ない。(せめて彼女だけは確固たる目的があって欲しかった)。
    財産目当てで「暗所恐怖症」の主人を無理矢理精神病院に監禁。その金の取り分を巡って仲間割れ、みたいな話。

    時系列が前後するので、更に裏に思惑がありそうだが何もない。倉持裕(ゆたか)のオリジナル脚本、江戸川乱歩が如何に凄いのかを再認識させられた。
  • 実演鑑賞

    満足度★★★★

    ダークでグロテスクだけど、どこか品のある大正レトロな江戸川乱歩的雰囲気が横溢していた。見ながら「江戸川乱歩みたい」と思っていたら、あとで原案が江戸川乱歩だと知って、なるほどと思った。とくに前作の「お勢、登場」は乱歩の7つの短編からできている。今回はキャラクターは生かしているが、話はオリジナル。

    後妻お園(大空ゆうひ)と政治家(梶原善)と医者の密談で、奥座敷の当主を無理やり精神病院に入れる。娘のあきら(福本莉子)と居候の自称作家のお勢(倉科カナ)はその一部始終を見て、表面何事もない風ながら、ひそかに彼らの罪への罰をくだすことをはかる。その量刑は常識的には全く釣り合いが取れないが、父を偏愛するあきらにとっては当然の報いだ。美しい(これ重要)お勢の魔性がそれをあおり、実行する。当主の妹の有閑マダムの池谷のぶえのいやみぶりも、江口のり子のしたたかな女中ぶりもさえていた。

    舞台装置が素晴らしく、乱歩的な錯綜した話をみごとに支えていた。(倉持氏とのアフタートークで白井氏も、前振りのコロナでの中止の話題の次に、この装置を話題にした)。スライド式の箱と障子をいくつも入れ子のように組み合わせた二階建てのセット。個々の部分が奥に引っ込んだり、舞台袖から現れたり、上下に障子が動いたり、中央に階段が現れたりと、変幻自在。手前の舞台の奥に、桟をすかした廊下ができるのも、邸宅の奥行きが出た。応接間、子ども部屋、病院、書斎、公園(マッピング映像がうまい)、井戸、電気工夫の部屋等々をスムーズに立ち現せる。

    物語も時間を「半年前」「昨日」などとテロップがてて、時間を行き来する。この入り組んだ時空構造がこの作品の肝である。冒頭の後妻たちの注射器を持っての決起シーンと、お勢とあきらの「あなたは何がしたいの?」「したいということは本当にしたいことではない。したいことはすでにしている。だから私のしたいことは、今までしてきたことの中にある」という冒頭の会話も、劇の進行とともに鍵場面として再現され、その意味が解る。

    タイトルロールのお勢は、ほとんどの間、傍観者であり、ことを行うお園が主役のようにみえる。他人のうちに入り込んだ居候が、その家のドラマを見つめ介入するのは筒井康隆「家族八景」を想い出した。

    歴史・社会とのかかわりは薄いが、女性の「子を産む道具」扱いされる無権利状況、精神病院の虐待ともいうべき患者の処遇、醜悪な金権政治がこの作品の根底にはおかれている。

    ネタバレBOX

    劇の後半に向け、あきらとお勢が夢のように語った「罰」とは、違った事件が次々起きる。「あれはただのおしゃべりだったか」と油断させるが、最後には「アッ」と思う間もなく、二人のおしゃべりが現実になる。このどんでん返しが面白かった。

    実は女学生(くらいの)あきらの無邪気な悪意が悲劇の発端になっていたというのが、さらなるどんでん返しである。あきらも「したいこと」は「すでにしていた」のである。

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