公演情報
「夏至の侍」の観てきた!クチコミ一覧
実演鑑賞
満足度★★★★★
鑑賞日2022/06/17 (金) 14:00
今回の芝居、不覚にも4度泣いてしまいました。ハラハラ涙が溢れて「あ、やばい」と思ったら、隣の女性もハンカチ目にあててたり、あちこちから啜り泣きが聞こえたり。
桟敷童子の芝居は喪われていくものへのノスタルジーが通奏低音としてあるけれども、それが単に昔を懐かしむわけではなくて、どうしようもない時代の流れや社会の変化に翻弄されながら、巨きなものに抗いそこに懸命に生きるひとを描くことで、人間の優しさや勁さ(しなやかなしたたかさ)、どうしようもない業や眩いような美しさまで、深い人間像がいつも胸に迫ります。
実演鑑賞
満足度★★★★
19日午後、東京・錦糸町にあるすみだパークスタジオ倉で上演された劇団桟敷童子公演『夏至の侍』千穐楽を観た。これは、知人の役者・もりちえが出演していた関係からである。
プログラムに書かれているように、今回の舞台は九州のとある町にある老舗金魚問屋・鍋嶋養魚の衰退を描いた作品である。かつては名声を誇った名店・鍋嶋養魚も度重なる台風の被害と女社長(音無美紀子)の長男で跡取りのはずだった繁の死によって、その嫁である菜緒(板垣桃子)と女社長の二人の頑張りでは経営は成り立たなくなりつつあり、新興の金魚問屋・丸尾養魚への身売り話が進みつつある。この話は鍋嶋養魚の本家でもある鍋嶋興業も後押ししており、身売り話は後戻りできないような状況であった。そんなところに、家出同然で飛び出した女社長の長女・みちる(長嶺安奈)と次女・わたる(大手忍)が訳ありで戻ってきて、鍋嶋養魚に一波乱を起こす。そんな中、繁の亡き後を支えてきた菜緒にも好きな人が出来、心は揺れ動く。女社長・ふみゑは堀に通じる水車を復活させ、なんとか鍋嶋養魚を立て直そうと古い馴染み客や繁の同級生等を頼りに水車の復活工事に乗り出すが、再び大きな台風に襲えあれ万事休す。復活の芽は完全に摘み取られてしまう。二人の娘は再び家を後にし、菜緒も去って行き、ふみゑは一人堀の水に古の栄光に思いをはせて幕が下りる。
題目の『夏至の侍』とは、濁った堀の水に生きる金魚の事で、それが見つかれば養魚業に勢いが付くと言われているもの。しかし、結局鍋嶋養魚の堀に夏至の侍はいなかった。
場面の要所要所で歌われる「金魚の唄」(作曲:もりちえ)のフレーズが、観る者の心に染み入ってくる。残念ではあるが悲しい物語であった。
さて、いつもなら存在感が群を抜いている板垣桃子と大手忍以上に存在感を感じさせたのが、やはりベテランの味が生きる音無美紀子と、その長女役の長嶺安奈の二人。もちろん、板垣桃子と大手忍の活躍も生きていた。ただ、板垣演じる菜緒が新たな恋に揺れ動く心を演じる場面が若干希薄だったような気がしたのは残念。
わがもりちえは、丸尾養魚の社長夫人と劇中歌作曲で見せ場を作っていた。考えれば、丸尾の社長役・瀬戸純哉はもりの旦那さんでもあるわけで、公私合体の演技か! 瀬戸純哉も桟敷童子常連として欠かせない存在となってきたのは嬉しい。
それと、相変わらず凄いとしか言いようのない舞台転換には参った。特にラストシーンの水車。その水と戯れる音無美紀子の姿は絵になるなぁ。
さて、次回は12月。楽しみにしている。
実演鑑賞
満足度★★★★★
音無美紀子と桟敷チーム、天晴れ。九州のとある町の老舗養魚店(金魚問屋、品種改良も手掛けかつては品評会で幾度も賞を勝ち取った)が、時代の趨勢に勝てず滅びて行く様を描く。
無論芝居の過程では復活の可能性は消えておらず、それは跡取り息子を台風で亡くした母(音無)の前向きな展望と執念に拠っており、娘二人が家を出ても家を離れなかった嫁(板垣桃子)との二人三脚で看板を守り来って二十年後・・たまたま、相前後して二人の娘が帰って来る、という場面から本編は始まる。
二人の娘の帰還は吉兆か凶兆か・・芝居は概ね、往事の人脈と信頼を担保に、壁にぶつかりながらも乗り越え・・という塩梅に進行すると思いきや、ある種の抗い難さ(一つの要因に帰せられない静かで大きな流れというべきもの)に取り囲まれて行く。しかしなお芝居は起死回生の余地を残すのであるが、最後に母は一人になる。
この時この母がその瞬間まで何を支えに、何を目指し、何に執着して生きてきたかが明らかになる。無言の立ち居で(つまり全身で)それを滲み出させる女優の姿に圧倒される。
実演鑑賞
満足度★★★★★
すべてが素晴らしいが、特筆したいのは、この劇団らしいすごい舞台装置。劇が始まる前、左右脇の、材木を組み上げたセットでまず驚かされた。そして、劇が始まった後は、・・・最後まで驚きが絶えない。
実演鑑賞
満足度★★★★★
それこそ三年毎に何度でも観続けたいと思っているほど炭鉱三部作が大好きであるのだが、“静”の部分というか、凛としたどこか品格のようなものが感じられた本作。クライマックスでは、今後夢に出てきそうな素敵なシーンのオンパレード。素晴らしい舞台です!!
実演鑑賞
満足度★★★★★
鑑賞日2022/06/08 (水) 14:00
座席1階
東憲司が以前からずっと練り上げていたという九州の金魚問屋の物語。桟敷童子がこれまで演じてきた炭鉱三部作などのように、時代の流れとともに滅びゆく産業への悲しくも優しいまなざしに包まれた秀作である。
客席を毎回驚かす舞台美術。今回は派手さはないものの、やはり最終局面で登場するセットは、それまで物語に没頭してきた客席の心をわしづかみにする。詳細は見てのお楽しみだが、今作もやはり、期待を裏切らない。
冒頭は風雨が吹き荒れる台風の場面から始まる。天井から激しく滴り落ちる水は、アングラ劇団がテント公演で見せるシーンをほうふつとさせる。この台風で跡取りの息子を失った老舗金魚店「鍋島養魚」は、母親(客演の音無美紀子)と息子の嫁(板垣桃子)が必死になって切り盛りをしていくが、やがて水路がよどむほど没落してしまう。新興の金魚店が買収するため老舗の設備などを値踏みしているところに、厳しい母や金魚問屋の生活が嫌でかつて家を飛び出してしまった姉妹が戻ってくるところから物語が展開していく。
夏至の侍とは、どこに隠れていたのか泥水のような水路の中で生き続けていた幻の金魚。これが、売り物になる金魚がいないため金魚鉢に浮かべられたブリキのおもちゃの金魚と対比するように、物語を盛り上げていく。生きるためには町の一時代を築いた伝統産業から身を引き、すべてを売り払ってスーパーのレジ打ちをして暮らさなければならない母と義理の娘の苦悩と、それでも夢(夏至の侍)をどこかであきらめきれない母の心の叫びが交錯する後段が、客席の心を揺さぶった。終盤では周囲に静かなすすり泣きの声も漏れていた。
音無美紀子のストイックな演技と、義理の母親と老舗を陰に日向に懸命に支えてきた嫁の一歩下がったスタンスを表現した板垣桃子の姿は印象に残る。
炭鉱三部作などで見事な子役を務めた大手忍が、今作でも実力を発揮し存在感を示している。
実演鑑賞
満足度★★★
「金魚金魚、鬼祓えや厄祓え、全てを流せや永久に
金魚金魚、生まれ変われや人となれ、命を繋げや永久に」
この印象的な劇中歌、作曲はもりちえさん!
昭和49年7月、記録的な台風が大分県に上陸。舞台はここから開幕する。由緒ある老舗の金魚問屋、その跡取り息子が新婚3ヶ月の妻を遺して水死。残された一家は、女主人(音無美紀子さん)、長男の嫁(板垣桃子さん)、女子高生の長女(長嶺安奈さん)、次女(大手忍さん)。その後二人の娘は自由と夢を求め家を捨てて出て行くことに。
昭和60年夏至が近付いたある日、それぞれ現実に敗れ果てた二人の娘、あてどなく足は実家へと向かう。
ステージ上部から降り続ける雨。裏返り、奥へと可動するセット、舞台美術は流石の出来栄え真骨頂。皆が差す何本もの黒い傘が印象的な場面転換を生む。
「夏至の侍」とは、夏至の水門開きの時、何処からか生まれ育った溜池に帰って来る金魚のこと。身体中傷だらけになりながらも生命力に満ち溢れた縁起のいい存在とされる。水車は台風で壊れたまま何年も放置され、水は腐り淀んだ死に池にもう金魚なんか育ちはしない。しかし閉業目前の金魚問屋の溜池で水面を跳ねる赤い金魚を見た者が現れる。
鈴木めぐみさん演ずる本家の女主人の優しさに救われる。
この劇団の顔といえば、客入れのもりちえさん。誰もが間違いなくファンになる。