女は泣かない 公演情報 女は泣かない」の観てきた!クチコミ一覧

満足度の平均 4.3
1-3件 / 3件中
  • 実演鑑賞

    満足度★★★★

    女性の性被害を扱った作品で、男性には想像を超える重い題材ではあるが、不思議な感覚で面白く観た。一つにはミステリー要素のある戯曲、一つには無機的に流れる時間(の酷薄さ)を介在させた演出が、「問題」への踏み込みの深さにも関わらず男性客の凝視を可能にしていた。後者についてはユニークな美術と、抑制しつつも暗くなり過ぎない照明が印象的。長~いテーブルとこれに付随した台が、場転では必ず反時計回りに回るが、テーブルの動きはある点を軸とした回転であり付随する台はテーブルの先端を軸としてまた独自に動くので惑星と衛星の公転の早回しにも見えたり、とにかく物理学的である。
    幼少時の義父からの性虐待体験をカムアウトしその分野の研究で教鞭を取る大学教員の主人公(森尾舞)は時に別居中の夫と会い、時に「事件」の参考人として2人の刑事の訪問を受けるが、芝居の中では彼女の想念なのか作者の観念なのか、被害女性(恐らく「事件」で殺害された?)が登場し、彼女自身の中のまだ解消しない被害者性を表わす。想念の中に登場するもう一人の寡黙な男性は「元夫」とパンフにあったが芝居中そうとは気づけなかった。実は彼女の夫が、状況証拠から事件の犯人と疑われているが、刑事の訪問を疎ましく思いながら彼女自身は事件の起こった夜、睡眠薬を飲んで眠っていたため夫のアリバイを証明できないにも関わらず「自分と寝ていた」と証言していた。夫が性犯罪事件の当事者である、という可能性は、彼女が「過去」を克服した証を揺るがすものに思われ、彼女はその可能性を封印しようとした・・台詞を繋ぎ合わせると概略そういう事である。嘘は解消しない何かがある事を逆に示しており、やがて彼女は義父と実母が暮らす実家にやって来る。カラオケ店を始めたのがうまく行っているようだが、ここでの母の娘への気づかいと脆弱さ、義父の無神経さ、不遜さがキムチの匂いの如くリアルに生々しく描写される。母は哀れだが娘を助けなかった意味で共犯だと子供は思う。してやれる事をしたいと母は思うがそのどれもが虚しい仕業である事も知っており、ただ泣く以外に無い姿に「一体何が解決なのか」と途方に暮れる。
    芝居は彼女をして「嘘」の証言を刑事に吐露せしめ、夫に対して「避けていた質問を今夜、投げてみる」勇気を持たしめる。「危険だ」と告げる刑事を彼女は黙らせ、夫との対決に向かおうとする所で芝居は終わる。犯人の正解を示さないだろう事は予想通りであるが、その事によって「ミステリー」に引き寄せられていた者は、残された「問題」に向き合わされる。
    妻と夫とのやり取りは、その関係も、ユニークで確かに夫はサイコパス的に描かれていて面白い。(「羊たちの沈黙」でのレクターと女刑事とのやり取りと同種の面白さ。)
    主人公が夫との間の「曖昧さ」の中に温存した何かを手放す決意をした事は、「問題」との関連では何を意味するのか・・判らない部分が多いが、しかし「問題」が及ぼす当事者の心理を第一とするのでなく、使命に殉ずる事を潔しとする彼女が「全て良きものは真実から導き出すしかない」という信念を貫徹しようとしたと解釈するのが正解に近いかと思う。「殺人事件」は小さな事ではないが、彼女と夫との間の関係にとってはまた別の意味を持つ。彼女は犯人検挙のため、ではなく、性被害にあい、勇気をもって「証言」した女性が貶められる現実の中で、自らがとるべき態度を選択した。

  • 実演鑑賞

    満足度★★★★★

    アフタートークによると実際韓国で起きた〇〇事件に触発されて書かれた2015年発表の作品だとか。
    有名評論家の息子さんの演出意図聞きながら各場面思い浮かべました。
    水を意識して出した。
    水を飲んでるように見える人には水になってお酒を飲んでるように見える人にはお酒でとか。
    最初のシーンは演出家オリジナルで心が乾いてる主人公が周りに水を配って潤わせよーとしてるとか。
    意味なさそうなセット替えは逆時計回りで時間を戻してるとか。
    灰色の夫だが、殺された女性が出てきてる・・って事はとか。
    ドイツ在中の森尾舞さんが次観れるのは名取事務所予定では来年らしいので時間ある方はぜひ

  • 実演鑑賞

    満足度★★★★

    韓国の告発劇だが、韓国の社会事情がよく理解できていないので、隔靴搔痒である。韓国がハイテンション社会とはよく聞かされ、映画で見ることはあるが実際に触れてないのだからよくわからない。問題は家庭内性暴力で、幼児に被害を受け今は被害者の保護のリーダーになっている女性(森尾舞)が、主人公だ。しかし彼女の生活も、家庭関係も一部見せられれるがよくわからない。それを探るひとや支持する人も出てくるがその立場もはっきりしない。国内ではこれで理解できるだろうが、この舞台では思わせぶりな上にテレビドラマの劇伴のような安い音楽がガンガン鳴るので、余計わからない。初日だったせいか、俳優座、文学座系、新国立養成所と手堅い俳優たちが揃っているのに、まだ探りあって、韓国で行くか、日本流にするか、戯曲の線で行くか、決めかねている。主演の森尾舞だけは、その中で毅然と決めていて圧倒的にうまい。彼女はもっと大きな400人規模の舞台が十分支えられる実力者である。かつて演じた俳優座のブレヒトの新鮮な演技などを思い出した。
    こういう家庭内でしか描けない暴力や性の問題は既に英米にすぐれた作品が多数ある。そこへ割って入るのは、単に時事性だけでは容易ではない


この公演に関するtwitter

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  1. 【扇田拓也】演出舞台情報 名取事務所公演、終演致しました! ご来場頂きました皆様、お世話になりましたスタッフ、共演者の皆様、誠にありがとうございました! 名取事務所「女は泣かない」 作:李ボラム 翻訳・ドラマトゥルク:沈池娟 演… https://t.co/n5QpcRigYK

    約3年前

  2. 稽古前に名取事務所さんの公演「女は泣かない」観劇。レミングで演出補してくれてる辻井くんも別の日に観てて稽古後にその話題で盛り上がる。名取さんの公演には学校の後輩だけど人生の先輩の小泉将臣くんも御出演。小泉くんやっぱ華あるなあ。お疲… https://t.co/bjRIyb967v

    約3年前

  3. 名取事務所『女は泣かない』千穐楽観てきました。 舞台装置がとても印象的でした。ある時はバーカウンター、ある時はお店のテーブル…時計の針が逆回転し、同じ空間で違う場面に切り替わるのが感動。 テーブルクロスと共に一瞬にして食器が片付け… https://t.co/gXWtz8TcQN

    約3年前

  4. 続き→ 話題の公演 4.5(2) 名取事務所/女は泣かない~11/14まで 4.5(2) はえぎわ/ベンバー・ノー その意味は?~11/14まで 4.4(12) SPIRAL MOON/たましずめ~11/14まで 4.2(11)… https://t.co/h0MzEsDISr

    約3年前

  5. 名取事務所『女は泣かない』韓国の若手作家の描く性暴力。緊迫した展開の中、一見過去を克服した成功者である主人公(森尾舞)の苛酷な状況と、女性達がさらに強いられる二次被害が浮かび上がる。森尾が凛として好演。加害者(藤田宗久・斉藤淳)と… https://t.co/d0WxIT8rgY

    約3年前

  6. 名取事務所『女は泣かない』観劇。節々に刺さる台詞があり揺さぶられた。作品も演出も俳優も良かった。演出の扇田拓也さんが劇中に使用したある音楽に対する感性が自分と一致する部分があり、救われたというか自信を持つことができた。 韓国の作品… https://t.co/VtLUJWlkU4

    約3年前

  7. 昼は下北沢B1にて名取事務所『女は泣かない』を。 性暴力というヘビーなテーマながら、ウェットなトーンではなくサスペンスのような雰囲気を纏っていた。けれど、暴力加害者の無神経さや第三者の理解のなさや理不尽さ、何より被害者が心にうけた… https://t.co/FiJYwxMfPf

    約3年前

  8. 話題の公演 4.8(4) NODA・MAP/THE BEE~12/12まで 4.5(6) 演劇企画イロトリドリノハナ/セイムタイム,ネクストイヤー~11/14まで 4.5(2) 名取事務所/女は泣かない~11/14まで →続く #東京観劇カレンダー

    約3年前

  9. 話題の公演 4.8(4) NODA・MAP/THE BEE~12/12まで 4.5(4) 演劇企画イロトリドリノハナ/セイムタイム,ネクストイヤー~11/14まで 4.5(2) 名取事務所/女は泣かない~11/14まで →続く #東京観劇カレンダー

    約3年前

  10. 名取事務所25周年記念公演『女は泣かない』(作:李ボラム)──演出・扇田拓也と女優・森尾舞に聞く | SPICE - エンタメ特化型情報メディア スパイス https://t.co/tRCpe38grB

    約3年前

  11. 【観劇】 名取事務所『女は泣かない』 戯曲の翻訳の精度が、最初から日本語で書かれたかのような自然さで、固有名詞が無ければ、韓国のホンだって、気づかないぐらい。 美術がシンプルでおもしろい。転換の演出も素晴らしい。道具を動かす俳優の動きが、歪で、不気味な空気感を醸し出していた。

    約3年前

  12. 話題の公演 4.8(4) NODA・MAP/THE BEE~12/12まで 4.6(7) JACROW/廻る礎~11/11まで 4.5(2) 名取事務所/女は泣かない~11/14まで 4.5(2) ACファクトリー/NEXT STAGE~11/14まで #東京観劇カレンダー

    約3年前

  13. 先週舞台を2つ観ました。週2観劇なんていつ以来のことでしょうか。名取事務所「女は泣かない」と、はえぎわ「ベンバー・ノー その意味は?」。どちらも胸にクッとくるシーンがありました。クッとくるまでの積み重ね。どちらもクッと14日まで。 https://t.co/JEXetCWcDD

    約3年前

  14. (劇評)名取事務所『女は泣かない』/性暴力問題とどう向き合うか 2021年11月11日付 https://t.co/Mpkat93Z89 https://t.co/8TEjW88VGH #公明新聞電子版

    約3年前

  15. 劇評 名取事務所 『女は泣かない』 性暴力問題とどう向き合うか 2021年11月11日付 https://t.co/Ow2qHddQgy https://t.co/c97dWLKvcw #公明新聞電子版

    約3年前

  16. (劇評)名取事務所『女は泣かない』/性暴力問題とどう向き合うか 2021年11月11日付 https://t.co/ke1f8303W6 https://t.co/Bj3SuM3R7t #公明新聞電子版

    約3年前

  17. 話題の公演 4.7(3) NODA・MAP/THE BEE~12/12まで 4.6(7) JACROW/廻る礎~11/11まで 4.5(2) 名取事務所/女は泣かない~11/14まで #東京観劇カレンダー

    約3年前

  18. 昨日菊地夏野さん出演の舞台「女は泣かない」を観た 性暴力を受け心に深い傷を負った女性に対し警察、世間、加害者はまるで火遊びの様なものと見なししかも女性に非があるのだと責め立て果ては家族は無かったことにしようとしてくる現実とそれらに… https://t.co/iEcQWEwK58

    約3年前

  19. 名取事務所「女は泣かない」は性暴力だけに留まらず魂にダメージを受けた人間がそれにどう向き合うかの話だと思う。誰が観ても刺さる。

    約3年前

  20. 話題の公演 4.7(3) NODA・MAP/THE BEE~12/12まで 4.5(2) 名取事務所/女は泣かない~11/14まで #東京観劇カレンダー

    約3年前

  21. 名取事務所「女は泣かない」マチネ@小劇場B1。同事務所が昨秋上演して良かった「少年Bが住む家」の李ボラム作品。今回は性暴力。予定調和と無縁な底の見えない淵を客席に覗かせるプロットも扇田拓也の演出も素晴らしい。実家のグロ地獄はじめ見… https://t.co/XLAAWkyOkH

    約3年前

  22. 名取事務所「女は泣かない」素晴らしかったです。改めて韓国戯曲のレベルの高さを実感しました。

    約3年前

  23. 4:00am 現在公演中ですが 名取事務所 『女は泣かない』 12月にある2公演の仕事します 終演後 俺流 下北沢の過ごし方 酒は ひとり しずかに ゆっくり ゆったり ほっこり https://t.co/Ji39gh8rYT

    約3年前

  24. 話題の公演 4.7(3) NODA・MAP/THE BEE~12/12まで 4.5(2) 名取事務所/女は泣かない~11/14まで 4.5(2) アマヤドリ/崩れる~11/8まで #東京観劇カレンダー

    約3年前

  25. 名取事務所『女は泣かない』良かった。被害を受けた人は様々だし、加害者も(もしかしたら)色々なのかもしれないけど、被害者を取り巻く「傍観者」の言葉と顔はいつも一緒。終わったことじゃない、忘れるのよ、良いことだけ覚えておくの。いまは幸… https://t.co/Z87L6To3cS

    約3年前

  26. 昨日、一昨日と小泉将臣さん出演の名取事務所『女は泣かない』を小劇場B1で観てきました✨ アフタートークのある公演を選んで正解。初めての観劇後はモヤッと…しかし演出の扇田さんのお話を聞いてネタばらし的なことにはなるほどと。目を背けが… https://t.co/uz3EgSuLpT

    約3年前

  27. 名取事務所『女は泣かない』を観た。ボラムさんの作品が好きで、追いかけている。今回の作品はなんとも言えない消化不良な感じがある。決して悪い作品だったと言いたい訳ではない。答えのない戯曲、もしかしたらボラムさんの作品の真骨頂かもしれない。希望がある、これもボラムさんの作品の良さ。

    約3年前

  28. 名取事務所「女は泣かない」を拝見しました 人は無自覚に人を傷つけてしまう 家族でも知人でも夫婦でも他人でも 観てて笑ってしまうほどやるせない怒りを感じました 互いに話して理解するって、とても大切な行為だと思いました 💼👠

    約3年前

  29. 傷つけた側はすっかり忘れて(あるいは忘れたように振る舞えて)も、傷つけられた側が、その記憶から逃れるのは難しい。声を挙げようとすれば、傷つけられたことを証明せよと求められる。舞台「女は泣かない」が突きつける、事実の重苦しさ。どうしたら、そういう社会を、空気を変えられるのかな……

    約3年前

  30. 名取事務所『女は泣かない』 韓国人作家による性被害を巡る女性たちの戯曲を男性演出家が挑む意欲的な作品。解決することなどなく、終わりの無い虚しさ。哀しみ。憎しみ。怒り。寂しさ。溢れ出すそれらを観客は、どう受け止めるのかが問われる。家… https://t.co/8PB4oJ3nqB

    約3年前

  31. 今週の小劇場B1 名取事務所 「女は泣かない」 2021年11月5日(金)~11月14日(日) 作 李ボラム 演出 扇田拓也 全席指定 前売¥4,500 当日¥5,000 ほか券種あり 詳しくは… https://t.co/a6UesUIWnE

    約3年前

  32. 今日は、下北沢小劇場B1で名取事務所「女は泣かない」。 https://t.co/xQbpfagIEa

    約3年前

  33. 【友野翔太info】名取事務所「女は泣かない」(李ボラム作/扇田拓也演出)@下北沢シアター711、昨晩の初日を観ましたが、素晴らしい仕上がりの80分です。是非、下北沢へお越しください。14(日)までです。当日券もあります。(安部)… https://t.co/uu86DO6ZzM

    約3年前

  34. 名取事務所『女は泣かない』初日 性暴力問題を中心に描かれる3人の女性。ミステリー仕立ての運び。美しい美術と照明。80分があっという間。物語の続きは観客が各自で綴るスタイルが良い。 一晩経って朝が来たけどまだ考えている。

    約3年前

  35. 名取事務所25周年記念公演『女は泣かない』(作:李ボラム)──演出・扇田拓也と女優・森尾舞に聞く | SPICE - エンタメ特化型情報メディア スパイス https://t.co/GxPOCgHnTV

    約3年前

  36. 名取事務所25周年記念公演『女は泣かない』(作:李ボラム)──演出・扇田拓也と女優・森尾舞に聞く | SPICE - エンタメ特化型情報メディア スパイス イープラススパイスさんに取り上げていただきました😊 https://t.co/aoXWH5svHe #eplus

    約3年前

  37. まもなく演出作品が幕を開けます。 名取事務所「女は泣かない」 2021年11月5日〜14日@下北沢B1 性暴力の被害に強く目を向けた作品。社会にとって、とても重要なテーマです。チケットご予約承ります。 https://t.co/c75DauEA78

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  38. 名取事務所25周年記念公演『女は泣かない』(作:李ボラム)──演出・扇田拓也と女優・森尾舞に聞く https://t.co/HM65YJa9Cs https://t.co/WjAmOdB4ge

    約3年前

  39. 11月の舞台おすすめしています。 『アルトゥロ・ウイの興隆』、名取事務所『女は泣かない』、SPAC『桜の園』について触れています。が、今月も他にも観たい作品たくさんありまして……舞台上演が増えてきて嬉しいです!! https://t.co/2KbLpiV2wF

    約3年前

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