雪の中の三人 公演情報 雪の中の三人」の観てきた!クチコミ一覧

満足度の平均 3.8
1-6件 / 6件中
  • 実演鑑賞

    満足度★★★★

    一昨年末上演されたケストナーを描いた秀作舞台では、後半ナチスによる統制が文学にも及び苦渋を舐める作家が執筆欲に負けて(と脚本は描いていた)映画の脚本のオファーをついに請けたくだりがあった。あれは確か、、そう「ほら男爵の冒険」、戦後「お前もナチスへの協力者だ」となじるリーフェンシュタールにケストナーは辛うじて「俺は作品の中で抵抗した」と返す場面が印象に残っている。
    さて本作も実はナチス時代に書かれた作品だ、といった事や、それどころか作者名すらも頭から抜けた状態で舞台を鑑賞した。何時書かれたか知れない喜劇として非常に楽しく観た。
    オープニングで小間使いが多忙な仕事の僅かな合間に暢気に豪邸の主人気取りで悦に入る様を音楽に乗せて華麗に描写する演出(小山ゆうな)、これが小難しい客を武装解除させる抜群の効果。そして俳優座俳優の喜劇仕様の人物造形の巧さと、少ない台詞で心理と状況の変化を観客に知らせる瞬殺演技ポイントでの確かな仕事にちょっと感心。
    物語をざっくり述べれば・・億万長者(事業を成功させた)トブラー氏がお忍びで旅をする。そのお膳立ては会社が催した広告コンペの二等受賞の副賞である豪華なホテルへの招待券、そこへトブラーは身分を隠しボロをまとって訪れたためホテルに冷遇される。たまたまコンペの一等を取った若者が同日同じ副賞のホテルを訪れるが、行商をする高齢の母との二人暮らしで職を探している彼はホテルでも仕事は無いかと尋ねるありさま。「雪の中の三人」の残る一人はトブラーの指示で青年実業家を装い、同じホテルを訪れた部下。彼はトブラー氏のホテルでの遇され方に驚愕するが、決して知人である事を明かしてはならぬとの厳命のはざまで身悶えする役回り。ドタバタの仕掛けはトブラー氏の出発直後、父の身を案じた娘がホテルに電話し、みすぼらしいなりをした男が訪れるが実は億万長者である、彼には良い部屋を宛てがい、マッサージと猫三匹、等々を用意せよと依頼するのだが、ホテル側は一足先に訪れた若者の方を億万長者と勘違い、上げ膳据え膳をやる。方やトブラーは屋根裏部屋を宛がわれ、冬の冷気に凍えるが、心優しい若者が彼への扱いを見て素朴な義侠心を持ち、トブラー氏を自分の広い部屋へ招く。一方青年実業家を騙る部下は若者の悩み(仕事がないこと)を聞き、素朴な同情心からぜひ我が社に紹介してやろうと「実はあの会社の社長には顔が効く」と約束する。この三人が一堂に会する場面で、トブラーと部下が初対面を取り繕うドタバタで観客を笑わせた後、若者を軸に友情関係が育まれて行く。その象徴的場面は、ホテル側が「じじい」を追い出そうと雑用を申しつけるのに全てが新鮮なトブラーは買い物から雪かきまで喜んで引き受けるのだが、その雪の日に三人はホテルの庭で雪だるまを作る。だるまを囲んだ三人を空と雪は祝福する。
    美術は白亜の色調で冒頭・ラストのトブラー家邸内、劇中では件の有名豪華ホテル内、そして雪の日の戸外。中央の回転台が適宜用いられ機能的でリズミカルな劇展開を助けていた。

    ネタバレBOX

    星一つ欠けたのは最後に僅かながらすっきりしないものが残った。
    元の脚本自体に突っ込みどころは多々あるが、三人の「友情」に照準した劇構築は私には深い感動を呼び起こすもので、そのお膳立てのための多少の無理など疵にあたらない。
    ただこの「友情」に多少関わる王様、もといトブラーの台詞が不用意に感じられる部分が。。
    (つづき)
    トブラー氏という人物が、この舞台では人の良い純真な心の持ち主として(見たところ演じた森一個人のキャラに近そうだ)形象がされていると見受けた。が、童話作家ケストナーはこの男をもっと気まま勝手な「いい気な」御仁を想定したのではないか。「人々の暮らしを見たいんだ」と語りながらお付きの者を変装して同行させたり、みすぼらしい身なりで豪華ホテルを訪ねていながら「無礼を働いたらホテルごと買収してやる!」と息巻いたり、世間知らずの億万長者である(事業を成功させた者というより世襲で高い身分を手にしているイメージ)。
    しかし本舞台では少々「まとも」なトブラー氏であるため、最後にまたぞろ「買収してやつらをクビにしてやる」という台詞を吐くのが少々耳につく。そのトブラーに対し、身分を知っても「友人」である事を許した若者が「買収するのは止めないが彼らの事情も考えてやって欲しい」と進言する。戯曲中「王様」の頭を冷やすのはこの一言のみ。そこからオチに流れるのだが、少しストーリーを遡れば・・ホテルで「億万長者らしい」と噂の的となった若者にはホテルの常連客である婦人二人がそれぞれに競って言い寄るが、すんでの所で「老人」に邪魔される事に業を煮やし、両名がそれぞれにホテル側へ老人を追い出すよう迫る。結果トブラーは追い出されるが、当然お付きの男(青年実業家と思われている)と若者(億万長者と思われている)も共に去り、憤慨した婦人二人も去る。・・つまりホテルは十分に報いを受ける。
    ついでに言えばコメディにつきもののラブストーリーは、父の身を案じてこちらもお忍びでホテルを訪れたトブラーの娘に若者は一目惚れし、その思いをトブラーに告げ「告白する」と言う。トブラーは恋に落ちた若者を応援する他なく、娘も若者と相思相愛となるのだが、トブラー放逐のごたごたで散り散りになり若者は傷心している所へ、「青年実業家」が仕事を約束したトブラーの会社に呼ばれ、そこでトブラー、その部下と再会、身分を明かされるくだりの後、娘の登場で一気に大団円となる。

    さて問題の件、トブラーはホテルを買収しようと電話で部下に所有者を調べさせるが、なんとホテルの所有者は自分であったというオチ。舞台ではトブラーは晴れやかに(やや照れ臭げに)この台詞を言っていたが、ホテルが彼を冷遇した(事をトブラーが根に持っているらしい)件がこのオチによってすっきりとは解消せずに残った。
    若者が彼を諫める台詞に、トブラーがどう応えたか、が見たかった。それはホテルの支配人の「差別的態度」とは、金で動くこの世間で、金持ちに取り入る事で日々の糧を得ざるを得ない者の悲哀でもあり、トブラー氏はそれを学びにお忍びの旅に出たのではなかったか・・という物語の初期の動機がいささか置き去りにされた感が残るのである。従って最後の間抜けな台詞が、何等かの自省の契機であったと捉えるなら、自分をいじめた従業員のホテルのオーナーが自分であった事実に、さすがに王様も抜いた鉾を納めるしかないが、そこで彼は差別主義的ホテルに対する責任として自分を恥じるのか、単に自分の能天気さに呆れるだけの正気を取り戻そうとするのか、舞台としてはリスキーだが何か「心の動線」を観客に追わせる間があって、その後「笑うしかない」自らを大いに笑う、というのが一案として浮かぶ。
    まぁそうは書いてもラスト如何では揺るがない力強さのある喜劇であった。
    唐突だがどこか「鬼滅」に通じる温かさがある。
  • 実演鑑賞

    満足度★★★★

    エーリッヒ・ケストナーの1934年の作品。有能な若者ハーゲドルンが失業中で全く仕事に就けないことが1929年からの世界恐慌の真っただ中であることを示している。しかしそれ以外に何か世相を表す事柄は見つけられなかった。1933年にはヒトラーが首相になっているのだがそれにもまったく触れられていない。強いて言えば、こんな時代でも金持ち連中は優雅に暮らしているのだと告発していると読めないこともないがちょっと無理筋だ。素直に多くの失業者を励ますものだと捕えよう。

    こちらの予想と寸分も違わない単純なストーリー進行はどうかと思うが役者さん達は濃い目のキャラを見事に演じていてそちらは十分に楽しめた。

    ハンス役の加藤頼さん、横内正さんの「リア王」での忠臣ケント伯の演技が印象に残っている。この舞台でも枢密顧問官の執事という同じような役柄で実に良い味を出していた。

  • 実演鑑賞

    満足度★★★★

    身分の変更や入れ替えという古典的なネタを用いた喜劇で、ややもすると先が見えて陳腐になりそうなものだが、俳優座の実力ある俳優たちの手にかかれば、さすがにしっかりした水準の芝居になっていて、楽しめた。

  • 実演鑑賞

    満足度★★★

    貧乏人の格好をした億万長者が、高級ホテルで見事冷遇され、最後は追い出される。でもほかでは得られない「友達ができた」。友達は、億万長者と勘違いされた貧乏な青年。青年の恋愛の行方まで絡んで、出来過ぎなくらい出来過ぎのハッピーエンド。ケストナーってこんなに甘い作風だったかな?と思ったけれど、厳しいナチス政権下だからこそ、明るい芝居を作ったのかもしれない。

    ヒルデ役の佐藤礼菜の可憐さ、上流夫人役の瑞木和加子、安藤みどりの弾けたコミカルな演技がよかった。召使役の加藤頼も、板につかない富豪役から、召使に「仮装」するとイキイキするあたり、見事だった。

    ネタバレBOX

    狭い稽古場公演だが、手動の周り盆のある舞台を3方から客席が囲む形だった。
  • 実演鑑賞

    満足度★★★★

    他の方が言われてますが、上品なコメディという言葉がぴったりくる作品でした。

    品のない笑いではなく、また登場人物皆が幸せになれるような佳作です。

  • 実演鑑賞

    満足度★★★★

    鑑賞日2021/03/24 (水)

    価格4,800円

    24日19時開演回(105分)を拝見。

    『飛ぶ教室』などで知られるドイツの作家・ケストナーの本作品は、悪役的登場人物にも温かな視線を注ぐ上品なコメディ。
    若手からベテランに至るまで、俳優座の芸達者な演技陣が心から役柄を楽しんでいるように映った、舞台・客席共に幸福な105分間だった。

    ネタバレBOX

    舞台中央に配した円形舞台のテーブルを、登場人物達が回していく演出が好みだった。

    【配役】
    エドワード・トプラー(シュルツェの偽名で自らの会社の広告懸賞に応募、二等に入選)
    …森一さん
    フリッツ・ハーゲドルン(同懸賞で一等入選。才能はあるが無職の青年)
    …田中孝宗(たなか・たかむね)さん(夢と不安を抱えた青年らしい、実に新鮮な演技。20代後半の方かと思っていたが、年齢を知ってビックリ!)
    ヨハン(トプラー家の執事)…加藤頼(かとう・らい)さん
    ヒルデ・トプラー(トプラーの一人娘)…佐藤礼菜さん
    クンケル夫人(トプラー家関係)…平田朝音(ひらた・ともね)さん
    イゾルデ(トプラー家関係)…坪井木の実さん(ひょうきんな坪井さんを拝見できてハッピー♪)
    キューネ支配人(高級リゾートホテル支配人)…川井康弘さん
    ポルタ―(高級リゾートホテル関連)…松本潤子さん
    マレブレ夫人(高級リゾートホテルの常連客)…瑞木和加子さん
    スパリウス夫人(高級リゾートホテルの常連客)…安藤みどりさん
    ボーイ/スノーマン(高級リゾートホテル関連)…山田定世(やまだ・さだとし)さん
    ハーゲドルン夫人(フリッツの母。イゾルデが買い物に行く肉屋の主人)…青山眉子さん

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