公演情報
「天神さまのほそみち」の観てきた!クチコミ一覧
満足度★★★★
別役芝居に開眼(2014-15年)してより、別役グルメを様々堪能したが、今回(別役作品に関しては期待低めだった)燐光群の公演は予想を裏切って見応え十分であった。トークゲストの一人名取氏は(残念ながらトークは拝見できず)以前ある座談会で別役戯曲の舞台化の難しさを語っていたが、今回のをどう評しただろうか。よく上演され、私も過去4本程観ていた別役の最初期作品(燐光群の「象」もその一つ)が「メッセージ性」に着地させ得る(と同時に時代的制約も帯びる)のに対し、その余地がない中期以降の作品は役者、演出に自由を保証するが「面白い」舞台にするのは難しい。坂手氏が戯曲を我流解釈に組伏すのでなくそのまま料理し、成立させるとは失礼ながら予想しなかった。
「あなたの家の前をトラが通りましたか?」と謎の問いを問う背広男を演じたさとうこうじは、20年前の黒テント『メザスヒカリノ・・(略)』で「この人にしかできない」ふーちゃん役を演じた姿を彷彿させた。全く違うキャラだし作品だが、どちらも「異界に通じる超越性」が終盤に向かって際立つ。神憑り的存在を信じさせる俳優さとう氏の独特さが古い記憶を呼び起こした模様。
別役実は氏のトレードマークである舞台上の電柱を、水平思考に慣れた日本人観客に垂直思考を想像させるため、と説明したが、背広男はカオスである世界の創造主の使者又は預言者と見えなくもない。「不条理の真実」は絶対神の想定=人間の理解を超えて全てを支配する存在を予感させる。人間はそこに無秩序ならぬ秩序を直観し、不安や恐怖を覚えるが、己の中の何かが投影されたもののように感じ、因果関係を見出だす。(己を映す予感が恐怖を催すのか、恐怖から投影=因果を考えるのか・・私は前者と思うが如何。)不条理は超常現象とは違って道理を求める心が裏切られる実態だとすれば、一見バラバラな事象が不条理を証明するかのように構成される事によって人は不条理に遭遇したと確信する。(つづく)
満足度★★★★
世の中の不条理な出来事をやや不条理な手法で描いた不条理劇。劇そのものは非常によく分かった(と思いたい)。
1席飛びの「ザ・スズナリ」は普段のひどさと比べるとかなり快適だった。
観客は高齢者がほとんどで平均年齢は60歳以上にもなっていたのではないだろうか。
高齢者はコロナで重症化しやすいと言うけれど「ザ・スズナリ」の階段の方がよほど危険だ。
コロナ明けの観劇の2作目。何を書こうか考えているうちに最初のは忘れてしまった。今回もこれだけ(汗)
満足度★★★★
鑑賞日2020/07/11 (土) 14:00
燐光群が別役不条理劇にチャレンジだが、意外にすんなりと「落ちる」芝居になっていた。75分。
不思議な対応をする人々と出会った「普通の」人が、争いを避けようとして逆に争いを起こしてしまう、というのは分かりやすい。勿論、不思議な人々の反応の理由は分からないし、「普通の」人であるはずの姉弟にも不可解な部分は残るが、こういう「巻き込まれ」型のトラブルは現実でもありそうだと感じる。そして、それが暴力的に解決されるという不条理も現実ではありそうな気がした。
燐光群の役者陣も歳を取ったが若手が育ってきているのは分かり、良い脚本に出会えば面白い舞台を作れるのだと改めて認識した。
満足度★★★★
こわごわ劇場へ行ったというのが本音である。コロナ感染を恐れてではない。劇場の過度の規制でしらじらしい空気の中で、規制した上演側だけがやってます、みたいな空気になったらいやだな、と思っていた。入場前の諸手続きで、やはりそうなるのか、とかなりがっかりしていたが、劇場に入ると、そこはやはりスズナリで別役実の世界である。
例によっての、別役劇で、市民生活の中で、てきやの広場の場所取りの不条理劇が面白おかしく展開する。文学座や新劇系を見慣れていると、燐光群はやはり言葉の訓練が足りず、最初は意識的にやっているいわゆる現代語セリフ調が浮いていたが、次第に動きとセリフが同調してきて舞台の上の人数が多くなると演出のさばきもよく楽しめてくる。経験豊富の男優陣の健闘に比べると女優陣はやや手薄な感じ。それにしても、どうしても社会派的な正邪を求めやすい坂手演出が、不条理劇でまとめてしまったのは意外でもあった。
最初の「あなたの家の前を通ったトラを見ましたか?」という問いかけを結局解決していないのもよく辛抱したと思う。それで面白いのだから成熟と言っていいだろう。席を間引いて70席ほど。これくらいだとほとんどスカスカの感じはしなかったが劇団としては赤字だろう。劇場の客席で同一方向を向いている客席でクラスターなど起きるはずはないのだから、間抜けな官僚のいう事なんか馬耳東風で、どの小屋もフルシートで客を迎えればいいのに。この頃の演劇人はおとなしいなぁ。
満足度★★★★★
難解と言われることの多い別役戯曲だが、この舞台は素直に楽しめた。場所取りをめぐる、悲しく可笑しいコメディだった。難しいことを考えると、迷路にはまる。役者の困惑とその場しのぎ、意地の張り合い、ばかしあいを、「アホだなあ」と素直に見ることができた。客席も笑いが多い。坂手洋二氏の演出家としてのうまさを非常に感じた。
満足度★★★★
期待通りなかなか刺激的な作品。ある若者がどんどん膨らみ複雑になるトラブルに巻き込まれてもがくストーリーに「虎」の男の無意味な掛け合いが唐突に割り込んでくる。観ていて混乱させられるのになぜか愉快で心地よい。ところで、客席の座席数を減らして椅子間のスペースがあのぐらい余裕があるとゆったりできて良いが、主催者側にとっては収入減になるので大変か。
満足度★★★★★
鑑賞日2020/07/08 (水) 19:00
座席1階
たまたまのタイミングということだが、別役実追悼舞台となったこの演目。別役不条理劇の中でも「最も不条理」といわれているそうだが、その面白さは抜群だ。「あなたの家の前を虎が通りましたか」を軸に進む壮絶な会話劇が展開され、恐ろしい結末へと突き進む。思わず食い入るように見てしまった。
シンプルな舞台装置。交錯する会話でも役者同士の方向性を崩さない演出が、分かりやすさを助けている。坂手演出の妙なのだろう。
何を言ってもオウム返しという、問答無用の「問答」は、何か反論を許さず決定事項には従えというような時代の空気を反映しているような気もする。
劇場は下北沢スズナリ。ギチギチの座席配置が当たり前だったのに、今回は左右に空間があり、足も伸ばせる。お客にはぜいたくともいえるゆったりの配置だが、こうなってみると、ギチギチで熱気むんむんのスズナリが懐かしい。