天神さまのほそみち 公演情報 天神さまのほそみち」の観てきた!クチコミ一覧

満足度の平均 4.4
1-8件 / 8件中
  • 満足度★★★★

    別役芝居に開眼(2014-15年)してより、別役グルメを様々堪能したが、今回(別役作品に関しては期待低めだった)燐光群の公演は予想を裏切って見応え十分であった。トークゲストの一人名取氏は(残念ながらトークは拝見できず)以前ある座談会で別役戯曲の舞台化の難しさを語っていたが、今回のをどう評しただろうか。よく上演され、私も過去4本程観ていた別役の最初期作品(燐光群の「象」もその一つ)が「メッセージ性」に着地させ得る(と同時に時代的制約も帯びる)のに対し、その余地がない中期以降の作品は役者、演出に自由を保証するが「面白い」舞台にするのは難しい。坂手氏が戯曲を我流解釈に組伏すのでなくそのまま料理し、成立させるとは失礼ながら予想しなかった。
    「あなたの家の前をトラが通りましたか?」と謎の問いを問う背広男を演じたさとうこうじは、20年前の黒テント『メザスヒカリノ・・(略)』で「この人にしかできない」ふーちゃん役を演じた姿を彷彿させた。全く違うキャラだし作品だが、どちらも「異界に通じる超越性」が終盤に向かって際立つ。神憑り的存在を信じさせる俳優さとう氏の独特さが古い記憶を呼び起こした模様。
    別役実は氏のトレードマークである舞台上の電柱を、水平思考に慣れた日本人観客に垂直思考を想像させるため、と説明したが、背広男はカオスである世界の創造主の使者又は預言者と見えなくもない。「不条理の真実」は絶対神の想定=人間の理解を超えて全てを支配する存在を予感させる。人間はそこに無秩序ならぬ秩序を直観し、不安や恐怖を覚えるが、己の中の何かが投影されたもののように感じ、因果関係を見出だす。(己を映す予感が恐怖を催すのか、恐怖から投影=因果を考えるのか・・私は前者と思うが如何。)不条理は超常現象とは違って道理を求める心が裏切られる実態だとすれば、一見バラバラな事象が不条理を証明するかのように構成される事によって人は不条理に遭遇したと確信する。(つづく)

  • 満足度★★★★

    世の中の不条理な出来事をやや不条理な手法で描いた不条理劇。劇そのものは非常によく分かった(と思いたい)。

    1席飛びの「ザ・スズナリ」は普段のひどさと比べるとかなり快適だった。
    観客は高齢者がほとんどで平均年齢は60歳以上にもなっていたのではないだろうか。
    高齢者はコロナで重症化しやすいと言うけれど「ザ・スズナリ」の階段の方がよほど危険だ。

    コロナ明けの観劇の2作目。何を書こうか考えているうちに最初のは忘れてしまった。今回もこれだけ(汗)

  • 満足度★★★★★

    「天神さまのほそみち」2020.7.10 19時 ザ・スズナリ

    ネタバレBOX


     別役実さんの脚本、1979年に文学座のアトリエ公演として初演は上演されたが不条理演劇と称される別役戯曲は寧ろ現実そのものである。ベケットやイヨネスコの作品がそうであったように不条理と称される演劇作品の傑作が未だ上演され続けていることをみても決してこれらの作品が荒唐無稽ではないことを明かして居よう。寧ろ余りにも正確に現実に我々が生きている社会、生きてきた社会を映し出しているように思われる。今作も無論例外ではない。日本の本質を鋭く抉り取っている作品である。主たる登場人物の内、自分が最も注目するのは弟である。何故なら彼は不作為の主体だからだ。日本の社会が鵺のようであるとの指摘は己の頭で考えることのできるまっとうな知識人なら誰しもが気付く点であり、この捉えどころの無い妖怪の論理に有効な解答を与えることが出来なかったのが現在までの知的状況だと思われる。無論、此処には演出した坂手氏が指摘するように天皇制の影も見ることができよう。何となれば鵺即ち訳の分からなさであれば、天皇制のみがそれに拮抗する日本的伝統だからである。無論、自分ここで伝統と言っているのには訳がある。
     少し脱線してみよう。日本に市民は殆ど存在しない。大多数は臣民、こう言って悪ければ畜人、或いは奴隷乃至政治的愚衆である。これは江戸時代と変わらない。江戸時代、政治・経済の中心であった江戸に住む庶民とは、士農工商のうちの工商である。商人は大名に金を貸す社会上層部の人士も居たが、人数の大多数を占める工は職人であり、落語に出てくるように読むことや書くことが出来れば、職人としては仕事の出来ないミムメモ(間抜け)であり、算盤迄出来るということになれば、これは半人前を絵に描いて壁に貼り付けたようなウツケ、本人も周りには、半人前として自己紹介する有様であった。即ち知は、仕事が出来ねえ癖に、訳の分からねえ能書きを抜かす間抜けのスットコドッコイだったのである。然し、ホントにそうであろうか? 知は、未知を切り裂く光である。それを理解できないのは。人口の大多数を占める大衆が単に政治的愚民だったからに過ぎないのではないか? 今作で描かれる一見、スラップスティックな「不条理」は、愚衆がそのように解釈するだけであって、日本社会の在り様の本質を捉えているのではないか? 第一段落で、日本には市民が殆ど存在して居ないことを述べた。市民とは、言うまでもなく、民主主義の根幹を為す存在であり、民主主義の根本的イデオロギーを体現する為には命をも賭ける人々である。為政者が市民の価値観を蔑ろにし、弾圧すれば革命を以て応えることを当然の権利として主張し得るだけの見識と己の頭を用いて真摯に思考するだけの知恵と能力を具えた人間である。この定義に当てはまる日本人は残念ながら殆ど居ない。居るのは先に挙げたような不作為の人間ばかりだ。不作為が世の中を鵺化し、鵺社会が伝統のみを根拠とし一切の合理的見直し論や、システム化を阻む愚論を正当化する。これこそが天皇制の正体ではないのか! ということを描いた作品だと坂手氏は考えたのだと理解した。
    自分は、その鵺構造そのものを時に利用し、無責任に自らの人間的価値を滅却する姑息な手段として用いつつ、多数の側に立つことによってただ、理想もなければ己の生きる意味すら掴もうとはせぬ奴隷根性で目先の利便性や利益だけに左右される手品師として日本人の大多数が規定できてしまうのではないか? という恐れに悲しみを覚えるのである。偶々、「伊丹万作エッセイ集」という本があるのを知った。このエッセイ集の中に『戦争責任者の問題』という一篇があるそうである。読んでみたくなった。
  • 満足度★★★★

    鑑賞日2020/07/11 (土) 14:00

    燐光群が別役不条理劇にチャレンジだが、意外にすんなりと「落ちる」芝居になっていた。75分。
     不思議な対応をする人々と出会った「普通の」人が、争いを避けようとして逆に争いを起こしてしまう、というのは分かりやすい。勿論、不思議な人々の反応の理由は分からないし、「普通の」人であるはずの姉弟にも不可解な部分は残るが、こういう「巻き込まれ」型のトラブルは現実でもありそうだと感じる。そして、それが暴力的に解決されるという不条理も現実ではありそうな気がした。
     燐光群の役者陣も歳を取ったが若手が育ってきているのは分かり、良い脚本に出会えば面白い舞台を作れるのだと改めて認識した。

  • 満足度★★★★

    こわごわ劇場へ行ったというのが本音である。コロナ感染を恐れてではない。劇場の過度の規制でしらじらしい空気の中で、規制した上演側だけがやってます、みたいな空気になったらいやだな、と思っていた。入場前の諸手続きで、やはりそうなるのか、とかなりがっかりしていたが、劇場に入ると、そこはやはりスズナリで別役実の世界である。
    例によっての、別役劇で、市民生活の中で、てきやの広場の場所取りの不条理劇が面白おかしく展開する。文学座や新劇系を見慣れていると、燐光群はやはり言葉の訓練が足りず、最初は意識的にやっているいわゆる現代語セリフ調が浮いていたが、次第に動きとセリフが同調してきて舞台の上の人数が多くなると演出のさばきもよく楽しめてくる。経験豊富の男優陣の健闘に比べると女優陣はやや手薄な感じ。それにしても、どうしても社会派的な正邪を求めやすい坂手演出が、不条理劇でまとめてしまったのは意外でもあった。
    最初の「あなたの家の前を通ったトラを見ましたか?」という問いかけを結局解決していないのもよく辛抱したと思う。それで面白いのだから成熟と言っていいだろう。席を間引いて70席ほど。これくらいだとほとんどスカスカの感じはしなかったが劇団としては赤字だろう。劇場の客席で同一方向を向いている客席でクラスターなど起きるはずはないのだから、間抜けな官僚のいう事なんか馬耳東風で、どの小屋もフルシートで客を迎えればいいのに。この頃の演劇人はおとなしいなぁ。

  • 満足度★★★★★

    難解と言われることの多い別役戯曲だが、この舞台は素直に楽しめた。場所取りをめぐる、悲しく可笑しいコメディだった。難しいことを考えると、迷路にはまる。役者の困惑とその場しのぎ、意地の張り合い、ばかしあいを、「アホだなあ」と素直に見ることができた。客席も笑いが多い。坂手洋二氏の演出家としてのうまさを非常に感じた。

  • 満足度★★★★

    期待通りなかなか刺激的な作品。ある若者がどんどん膨らみ複雑になるトラブルに巻き込まれてもがくストーリーに「虎」の男の無意味な掛け合いが唐突に割り込んでくる。観ていて混乱させられるのになぜか愉快で心地よい。ところで、客席の座席数を減らして椅子間のスペースがあのぐらい余裕があるとゆったりできて良いが、主催者側にとっては収入減になるので大変か。

  • 満足度★★★★★

    鑑賞日2020/07/08 (水) 19:00

    座席1階

    たまたまのタイミングということだが、別役実追悼舞台となったこの演目。別役不条理劇の中でも「最も不条理」といわれているそうだが、その面白さは抜群だ。「あなたの家の前を虎が通りましたか」を軸に進む壮絶な会話劇が展開され、恐ろしい結末へと突き進む。思わず食い入るように見てしまった。
    シンプルな舞台装置。交錯する会話でも役者同士の方向性を崩さない演出が、分かりやすさを助けている。坂手演出の妙なのだろう。
    何を言ってもオウム返しという、問答無用の「問答」は、何か反論を許さず決定事項には従えというような時代の空気を反映しているような気もする。

    劇場は下北沢スズナリ。ギチギチの座席配置が当たり前だったのに、今回は左右に空間があり、足も伸ばせる。お客にはぜいたくともいえるゆったりの配置だが、こうなってみると、ギチギチで熱気むんむんのスズナリが懐かしい。

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