黒い砂礫

オレンヂスタ（愛知県）

公演に携わっているメンバー：12人

【団体紹介】

2009年、「名古屋大学劇団新生」出身の作・演出「ニノキノコスター」と主宰・プロデューサー「佐和ぐりこ」により設立。愛知県名古屋市を拠点に活動している。
劇団設立当初は、「エログロポップなエンタメ」を称し、実在の凄惨な事件を題材に、エンターテイメントに昇華する作風で上演。
12ヶ月連続で短編をインターネット配信、40人超のゲストによる「日替わりアフターイベント」など、一風変わった企画に積極的に取り組む。他劇団やダンスカンパニーとのコラボ公演も多数行なっており、2015〜2016年には宮城の短距離男道ミサイル・大阪のコトリ会議との合同公演にて宮城・新潟・愛知・大阪・東京のツアー公演を実施した。
近年は、コンテンポラリーダンスや人形劇の手法を演出に積極的に取り入れ、現代の社会問題を取り上げた脚本をベースに、身体表現とオブジェクトパフォーマンスと演劇を融合させた実験的な表現に取り組む。社会問題を取り上げだ鬱屈とした作品もあれば、コメディタッチで爆走する作品もあり、その時々で違った挑戦を打ち出している。

2017年には『MANGAMAN』が人形劇の新人賞である「P新人賞」にて大賞・観客賞をW受賞し、人形劇・演劇双方において新たな表現手法を提示している。
2019年に劇団結成10周年を迎え、今作はその後初の本公演となる。

【応募公演への意気込み】

本作で描くのは、エベレストに次ぐ標高を誇る世界最難関の山・K2に挑んだ女性登山家をめぐる物語です。
アイドルのように持て囃され、前人未到の冬期登頂・女性単独無酸素という無謀な条件で挑んだ末に行方不明となった彼女に、世間は憐れみや批判、様々な評価を下します。
彼女はなぜ危険を冒してまで山に登ったのか。お金のためか、自然への挑戦のためか、名誉を得るためだったのか…。「登山」というモチーフを通して、現代社会における承認欲求、社会や家族とのつながり、男女間の性差や女性の社会進出における障害などを、様々な立場から多角的に描きます。
物語の舞台は、地上と「デスゾーン」といわれる8000m超のK2山頂付近、日本とパキスタン、彼岸と浮世を行き来します。それらを身体表現やオブジェクトパフォーマンスを駆使し、舞台上へリアリティを持って表出させることに挑戦します。
劇団10周年を迎える節目の公演で、旗揚げ公演を行なった七ツ寺共同スタジオにて、劇団史上最多のセミロングランにより、新たな表現を打ち出す作品となることでしょう。

【将来のビジョン】

オレンヂスタは、ダンス、人形劇、音楽家、落語家など様々なジャンルの人々との交流を通して得た「面白いモノ」を自分たちの演劇作品に貪欲に取り込み、「今、自分たちが一番面白いと思うモノ」を具現化する作品の創作に常に挑戦してきました。
2016年以降、1年半に一度のペースでの本公演ではツアーは行わずに名古屋のみで上演してきました。それはツアーのパッケージにするために制約を設ける創作ではなく、今、名古屋のこの場所で、自分たちができる創作に全力を注ぐためにとった選択でした。
他ジャンルとの横断がしやすいことは地方都市名古屋の利点だと考えています。今後も名古屋に軸を置きつつ、古典戯曲の斬新なリメイクや海外公演などを視野に活動しています。現在の作風を研鑽しつつ、新たなモノを貪欲に取り込みながら「自分たちが今一番面白いと思うモノ」を全力で創り続けること。キメラのように未知の進化を遂げていく団体でこれからもあり続けます。