満足度★★★
大人が演じる「高校生」「青春」は気恥ずかしさもありますが、群像劇をスピーディーにさばき、個性的なキャラクターを書き分ける人物描写など、作家としての技術の高さを感じました。同世代の作家がモノローグで処理するような箇所もダイアローグで描き、作家の矜持を感じます。「書ける」作家にありがちな、都合良い展開や書き手のエゴイスティックな人物造形がないことにも好感を持ちました。中盤の卒業式がクライマックス感満載で「終わった感」がする構成は、一旦観客の集中力が切れるので損だと思います。かっこいい子がかっこわるさを見せた時に感じる愛おしさの発見、遠くに存在する誰かが意外な誰かを励ましていること、打ち込むことがない焦燥感など、すくいとる心理はどれも繊細。若者の新しい日々へのエールのような最後も鮮やかでした。ただ、大人の心理も描いた『保健体育B』のほうが個人的には面白く感じられ、「青春」から離れたあとの活動に、大いに期待しています。
満足度★★★
「卒業(式)」を起点/終点に、部活、文化祭、放課後など、高校生活のさまざまな場面、その断片が重ねられた青春ドラマです。リア充からオタクまで、ここに出てくる少年少女たちは、とにかくその時を大真面目に生きていて、ちょっと斜に構えた風のキャラクターでさえ、青臭さゆえの可愛らしさを滲ませていました。決して言葉数は多くはない。にもかかわらず彼らの対話やその間に覗く不安や迷いにはリアリティがあり、カラオケやダンスのシーンでほとばしるエネルギー、エモーションとの間の振れ幅も強く印象に残ります。中でも駅に佇むオタクの鉄男くんと、イケてる(はずの)同級生たちとのちょっとした交流が心に沁みました。
惜しいなと感じたのは、中盤にいったん「卒業式」が入り、そこが(かなり単純な、青春賛歌的)クライマックスに見えてしまったこと。実際はその後に改めて展開される日常〜卒業の流れの方が本筋かと思うのですが……。とはいえ、12名ものキャラクターをそれぞれ魅力的に描き、かつ、エンターテインメントとしてのステージングもできているこの集団、作品には、小劇場の枠を超えた底力があると思います。
今作は二十歳の国の「青春」からの卒業公演。
青春は、遠く離れてからようやく味わえるものですが、年を重ねれば自然と、作り手の向き合う現実に応じた表現に関心も向くでしょう。少し大人になった二十歳の国がどのように世界をとらえていくのか、楽しみにしています。
満足度★★★
高校3年の卒業式当日から始まり、過去3年間の高校生活を振り返る群像劇でした。大道具は学校によくある机と椅子のみで、それらを移動させたり組み立てたりして場面転換します。俳優が高校生らしい服装をしていることもあり、説明がなくても最初から高校生活を覗き見する気分になれました。物の助けがなくても物語が立ち上がる、シンプルな演劇の魅力があります。
『青春超特急』という題名ほど猛スピードな印象はなく、ちょくちょく停車する準急ぐらいの感触でしょうか。会話の間(ま)を長く取りすぎだと感じることが多かったです。個人的には過ぎ去る日々への感傷よりも、前のめりの疾走を観たかったかもしれません。
音楽に疎い私も耳にしたことがある日本の歌謡曲が流れ、歌われました。歌そのものに聞きごたえがある上に、歌詞や音調がエピソードに合っていて、高揚感がありました。ミラーボールもいいですね。照明、音響、群舞による晴れやかで躍動感のある場面を作るのがお上手だと思います。
満足度★★★
青春ショーケースとばかりに描かれる高校生たちのバリエーション。完成度は高くそれなりに楽しくは見たものの、このように青春を描くことにノスタルジーを反芻する以上の意味はあるのだろうか。(後悔も含めて)甘酸っぱい青春という枠組みは誰もが共有する思い出のようでいて、そこから取りこぼされてしまう人や出来事が多過ぎる。
作品としては登場人物それぞれのエピソードを均等に描いていた点に好感は持ったものの、それゆえ個々のエピソードはさほど掘り下げられず、上演全体は冗長に感じた。均等な青春などというものはあり得ない。思い切って偏った描き方をした方が青春の残酷さも浮き上がったのではないだろうか(それはやりたいことではないのだろうけど)。