舞台芸術まつり!2018春

演劇企画集団LondonPANDA

演劇企画集団LondonPANDA(宮城県)

作品タイトル「平穏に不協和音が

平均合計点:21.4
川添史子
鈴木理映子
高野しのぶ
橘 康仁
山﨑健太

川添史子

満足度★★★

人と人の間にある感覚のズレ、女性性とは? 男性性とは? ……普遍的で興味深いモチーフが周到に散りばめられた作品だと思いました。ただこの難しいテーマをワンシチュエーション、二人芝居という高難度な設定にしたため、さばき切れていない箇所があり、物語展開に無理を感じる箇所が複数ありました。俳優二人はとても魅力的でした。

鈴木理映子

満足度★★★

夫婦間の「あるある」な齟齬から「ないない」(?)な秘密の暴露まで、心を開いて話し合い、分かり合いながら、離婚を選択する、そのプロセスに引き込まれました。二人が抱えてきた秘密は、多少突拍子なくも思えますが、それでも結論が出る朝までの時間を、ドキドキしながら見守ったことは確かです。
出演者のお二人も、しっかりとその場に存在しながらも、余白(謎)を残す佇まいが印象的でした。

惜しむらくは、子供の存在がほとんど感じられなかったこと。もちろん、会話には登場しますし、別れ話の発端には育児が絡んでもいます。
ですが、キレイに片付けられた部屋、「養育費はいらない」前提の離婚話、離婚後連絡がとれなくなるというエピローグには、小さな子供の影は感じませんでした。夫婦の関係によりフォーカスするためだったのでしょうか。ただ、そうだとするならば、あのラストはかなり怖いものにも思えます。

高野しのぶ

満足度★★★★

3歳の子供がいる若い夫婦の“離婚ラブストーリー”は、上演時間が約1時間20分とコンパクトにまとまった二人芝居でした。正方形の舞台の隣り合う二辺に客席があり、劇場に入って左側の客席から英語字幕が見られます。

舞台はフローリングの居間です。現代風のシンプルな棚にはフォトフレームやオブジェなどが飾られており、イスとテーブルのデザインはイームス風。清潔感のあるおしゃれな部屋で、秘密暴露大会が始まります。二人の立場や関係の変化を細やかに描く会話劇になっていました。出演者の浦川拓海さん、中村美貴さんと作・演出の大河原準介さんが、戯曲と格闘した跡がはっきりと見て取れる真摯なストレート・プレイでした。

こりっちの広告がエントランスの階段の壁に貼られており、終演後には大河原さんが「CoRich舞台芸術まつり!2018春」の宣伝をしてくださいました。

ネタバレBOX

突然、妻が離婚を切り出し夫は慌てふためきます。共働きですが、家事も子育ても妻が取り仕切り、夫は手伝う程度。そして3年間セックスレスだったことがわかってきます。離婚でなくまずは別居という流れになりますが、夫が妻の携帯電話を覗いて彼女の浮気の証拠を発見し、立場が逆転します。

妻が北海道にいる昔の彼氏とテレフォンセックスしたことや、夫に女装趣味(女性の下着を着用する)があることがバレて、果てには妻の借金、売春、変態的な性癖、夫の殺人疑惑(未必の故意)という、かなりきわどい事実も露わになります。暴露合戦へと進展していく会話の流れに納得できましたし、本気で正直に話をすることで、二人の人間がどんどんと変化していく様子も面白く拝見しました。

「どうせ離婚するのだから」とお互いの秘密を散々さらけ出し、リラックスしてきた二人は、互いの新しい側面を発見します。夫が酒を飲まないのは飲みたい気分にならなかっただけで、実はいくらでも飲めること。そしていつも一人で酒を飲んでいた妻が、一人で飲むのはさびしいと思っていたこと。二人が「全然知らなかった…(早く知りたかった)」と微笑み合う場面は、空気がほっこりと温かくなると同時に、切なさも漂っていて良かったです。

妻が夫からの子供の養育費を辞退したことに驚きました。彼女は定時までに仕事を済ませて帰宅できる職場に勤めています。よっぽどの高給取りなのか、昔の彼氏の世話になることが決まっているのか、はたまた実家が裕福なのか…と考えを巡らせました。個人的には夫と妻の職業は明かして欲しかった気もします。

序盤の演技の硬さが少々気になったのですが、私が拝見したのは初日でしたので、回を重ねるごとに柔らかくなっていくのだろうと思います。

橘 康仁

満足度★★★★

かなり面白かった。俳優の人が二人とも本当に上手だった。欲を言えば終盤にもう少し期待を越えるものがあれば尚よかったか。

山﨑健太

満足度★★

俳優の力で一応は見られるものになっていたものの、面白いとは思えなかった。二人芝居を展開するために会話の中で新事実が次々と提示されることになるのだが、それらがいずれも物語を展開するためのネタとしてしか機能していない。展開自体がエンタメとしての面白さに結びついていればそれでもよいのかもしれないが、残念ながらそうなってはいなかった。夫の女装が単なるネタの一つとして登場していた点には特に疑問を覚えた。

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