DULL-COLORED POP 演出家 谷賢一
あーちゃんへ。賞をとったんだってね、すごい!。あーちゃんはいつかすごいことをするって、おかあさんはずっとわかっていたけれど、すごいね。おとうさんに言ったら、おどろいて急に立ち上がって、また腰をやってしまいました。家にもたまにかえってきてね。あーちゃんの好きな、チーズをいれたたまごやきをつくってまってます。そうそう、冷蔵庫を新しいのにかえたから、びっくりすると思うよ!。演劇がんばってね。(岡田あがさの濃紺の情念とキリキリに切迫した表現欲求を愛した演出家より)。
DULL-COLORED POP 演出家 谷賢一
小林タクシーの備える俳優的魅力は、誤解を恐れずに言えばおよそ扇情的な美貌や特権的肉体と言った旧来的な舞台俳優のパブリック・イメージとは間逆にたなびく朴訥・素朴な風貌と、彼自身がパフォーミング・アートおよび音楽、ウェブデザインなどの分野において開陳している独立したアーティストとしてのカジュアルかつ洒脱なセンスという、水と油のように相反しかねない二つの要素を平和裏に融和内包している点にあると言えよう。今回彼が演じた飲尿趣味のサラリーマンが我々に提出した問題が内外の矛盾にあえぐ現代のアンビバレントなアイデンティティであり、そのキメラ的なペーソスの味わいが現代演劇の分野において一つの異端として着目に値する価値を認められるものであるとすれば、小林タクシーという俳優の心身に蠢く二極的な志向性自体も、我々の時代を代弁し得る祝福された天賦であると断じて不遜に当たるとは、私には思えないのである。(おかあさんより)