ミスターの観てきた!クチコミ一覧

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GARAZY

GARAZY

The Four of Mats

シアター風姿花伝(東京都)

2018/07/25 (水) ~ 2018/07/29 (日)公演終了

満足度★★★

鑑賞日2018/07/28 (土) 13:00

コリッチの上演予告を何気に観ていて、ストーリーが面白そうだなぁと思って出かけたこの舞台。7月28日、シアター風姿花伝である。

舞台となるのは、売り上げの少ないローカルな自動車修理工場。先代が亡くなり後を継いだ2代目オーナーで元スタント俳優の五賀玲司は、店の改革の一環としてインターン生の受け入れと、有名なYouTuberがMCを務める町内にあるデパート主催のイベントに参加することに。出来るインターン生に刺激されてやる気を起こす従業員達だったが、彼を雇うには店の売り上げが少なく、誰かを首にしなければならないという壁に突き当たり悩む玲司。それに、デパートの優秀な女性店員や自称サプライズ師、それに工場一体の再開発を進め今回のイベントを仕切る女社長などが加わってのドタバタ悲喜劇。結局は工場はなくなることになるが、玲司も、デパートの従業員も、そして開発会社の女社長も、その町を愛していた・・・

実は、こうして粗筋を書いていくと、事前に劇団がサイトに掲載したストーリーと微妙なズレがある。工場の従業員達とサプライズ師が懇意になる過程が曖昧だし、デパート従業員の町や工場への愛着心、開発会社の社長とその部下の交際問題、その部下と工場のインターン生が高校時代の同級生と様々なエピソードを含んだ舞台なのだが、そうしたエピソードが上手く絡み合わずバラバラに並べられただけのような構成に、コメディー作品ではあるが笑いきれない部分が多すぎた。これは、役者の問題ではなく脚本自体に問題があるだろう。もう少し熟成した脚本での公演を望みたい。

D3

D3

劇団ORIGINAL COLOR

新宿眼科画廊(東京都)

2018/07/21 (土) ~ 2018/07/30 (月)公演終了

満足度★★★

鑑賞日2018/07/22 (日) 14:00

7月22日、新宿眼科画廊スペースOで上演された劇団ORIJINAL COLOR第15回公演『D3』trackAを観てきた。この公演は、画廊で開催されている展示の一部分として上演するスタイルをとっており、tarackAからDまでとno torack,all tracksと主役を誰が務めるかで6種類の演出が準備されていた。自分の観たのは、泉川ももが主役を務めたtrackAである。従って、この『D3』という作品を語るには6種類の演出すべてを観ることが理想的なのであるが、今回自分が観ることが出来たのはtrackAのみであり、作品全体を語り尽くす物でないことを最初に断っておきたい。ちなみに、観に行ったきっかけは、顔見知りの役者・嶋谷佳恵(trackCで主役)が出演していたからである。

舞台となるのは、山端梓織(本田真唯)という女性が経営する喫茶店。その梓織が他にやりたいことがあるので店の店長の役割を従業員の二人、凉木慧真(泉川もも)と秋良納深(嶋谷佳恵)のどちらかにやってもらいたいと提案し、どちらが引き受けるか自分が休憩している間に話し合って決めて欲しいと提案し、その場から去る。急な提案に、凉木慧真と秋良納深はお互い悩み話し合う。その話し合う二人の模様が舞台の核となっている。ちなみに、山端が休憩に入る前に常連客・川崎さん(小林勇太)も登場するが、彼の役目は舞台を締めくくるきっかけ作り。結局二人のどちらが受けるのか決まらぬうちに山端が戻ってきて三人で話し合いが始まる。そんな中、常連客の川崎さんが帰り、舞台は幕となる。

上演時間がどのくらいかかったかは忘れてしまったが、この舞台の面白いのは登場人物の動きが基本的にスローであること。その中で、時折主役が普通のスピードで自分の思いを語る。ネット上に書かれた感応の中で、この劇を「実験劇のよう」と言っていた方がおられたが、一言で表現するならまさにその実験劇のような感じ。一歩間違えれば舞台全体がダメになってしまうギリギリのところでスローな空間が作り出されていたのが特徴的。

ちなみに、喫茶店が舞台と言うことで有料のコーヒー販売もあったり、客席に置かれた小机や壁に飾られた加工写真も展示品として販売されていた。

緑色のスカート

緑色のスカート

みどり人

新宿眼科画廊(東京都)

2018/06/29 (金) ~ 2018/07/03 (火)公演終了

満足度★★★

3日午後、新宿眼科画廊地下スペースで上演された、みどり人『緑色のスカート』を観てきた。
これは、コリッチのチケットプレゼントに当たった関係からである。

登場人物は、男3人に女5人の合計8人。仕事場の同僚だったり同棲関係だったりと、その8人が全員恋愛が絡んでの人間関係で繋がっている。その恋愛が、相手とのボタンの些細な掛け違いから、あるいは勘違いから徐々にズレていき相手との距離が離れていったしまう。その悲哀を描いた作品。ボーイッシュだった女性がスカートをはきスナックで働くようになったり、喫茶店の女性店員同士が同性愛に陥ったりという場面で舞台は終わっている。

登場人物が全員何らかの関係で輪廻的に繋がっていたり、男女の恋愛が結末で同性愛になったりという手法は演劇の上ではよく使われるものなので、その中に何か新鮮みがないと舞台にグッと引きつけられない。今回は、約90分という時間の中で役者の熱演は伝わってきたが、「それで、その恋愛ってどうなるの」という素朴な疑問に対する根本的な答えがなかったように感じた。女性の淡い視線から感じた男の愚かさという点が浮かび上がってはいたが。ちょっと手を加えれば劇的に変化するような作品だったので、脚本家の感性の問題なのだろう。

翼の卵

翼の卵

劇団桟敷童子

すみだパークスタジオ倉(そう) | THEATER-SO(東京都)

2018/05/29 (火) ~ 2018/06/10 (日)公演終了

満足度★★★★★

好きな劇団の一つである劇団桟敷童子の『翼の卵』を2日午後に観てきた。知人の役者・もりちえが出ている上に、今回は客演として原田大二郎も出ると言うことで、初日を迎える前で全公演チケット完売という人気であった。

ネタバレBOX

舞台は九州のある地方。炭鉱が栄えていたときは活気のあった街も、炭鉱が閉山すると活気がなくなる。農園を経営していた篠塚一家も例外ではなく、今は母屋を解体業者・浦辺組の宿泊所として貸し出し、母で農場主の登紀子(鈴木めぐみ)、次男・史彦(深津紀暁)、三男・繁彦(松本亮)は敷地内のバラック住まい。そこに、10年前に家を出た長男・毅彦(坂口候一)が連れ子・恵子(大手忍)のいる頼子(板垣桃子)と結婚したものの借金に追われ逃げ帰ってきての大騒動。妻に暴力を振るう毅彦。彼に仕事をさせる浦辺組社長・源之助(鈴木歩己)、頼子に仕事の世話をする毅彦の幼なじみで今は西寺興業の社長・薫(稲葉能敬)と、毅彦一家を再生させようとみんなが努めるが、毅彦

がいっこうに改心しない。登紀子も頼子にまむし狩りを手伝わせてこき使う日々。その浦部組の従業員の中に、死に別れたと思っていた頼子の父親で元殺人犯・常藤耕作(原田大二郎)がいたことが、物語の核となっていく。耕作と仲良くなる頼子の連れ子・恵子(実は耕作の孫)。やがて、耕作が父であることが頼子にも分かる。しかし、母親への思いや元殺人犯という事実が親子の間に感情的な壁を作る。そんな矢先、恵子がまむしに噛まれ、命を落とす。その悲劇がきっかけとなって、耕作と頼子の間に和解の糸口が出来ていく・・・・。




いやぁ、悲劇である。耕作と恵子の関係に一筋の光が差し込んではいるが、全体的には悲劇である。偶然と必然が交錯してわき起こった悲劇である。実に悲しいが、ラストシーンで涙が出る以外、そのすさまじい悲劇に涙も出ない。

そんなすさまじい舞台を支えた中心は、原田大二郎と大手忍。そしてその脇を固めた板垣桃子と鈴木めぐみの4人であった。他の役者たちも重要な役どころをこなしていたが、上記4人の好演がなければこの舞台は成り立たない。そうした役者を揃えられたのが、桟敷童子の凄さなのだろう。

また、恒例でもあるラストシーンでの大道具(セット)の破壊的な大転換も観る者の心を打った。

東憲司、恐るべき主宰者である。




追記

劇中、数年前に上演された『エトランゼ』と重なる脚本というか演出があった。脚本家の頭の中には、「こういう状況を表すにはこんな演技が必要」というパターン化された思考があるのかもしれない。その点が残念であった。


ドブ恋9

ドブ恋9

女々

小劇場B1(東京都)

2018/05/15 (火) ~ 2018/05/27 (日)公演終了

満足度★★★★

知人の役者・古川奈苗が出演している女々公演『ドブ恋9』を25日昼に観てきた。会場は下北沢の小劇場B1。この劇場は、同じく下北沢にある小劇場・楽園と共に客席が舞台にL字2面に配置されているちょっと変わったハコ。今回のドブ恋9は、13人からなる4チームによる競演で、各チームが1話7,8分程度の小話を14話演じるオムニバス形式の舞台。自分の観たのは、4チームの中の「ダニチーム」の公演だ。

14話の話の三分の二くらいはややアダルト系の内容。ちょうど、アメリカのペーパーバックになっているプレイボーイのセクシー小話集を舞台化したような趣。残りの三分の一は切なさが漂うような内容だった。
特に印象に残ったのは中盤から後半にかけての話。客としかセックスをしたことがないデリヘル嬢と、風俗嬢としかセックスをしたことがない客が互いに相手を素人としてセックスしようとする「素人として」(びゃい。+古川奈苗)、ベテランのAV女優とAV男優がプライベートで付き合うとピュアな関係になる「熟練のピュア」(宮地大介+堀さやか)、キャバ嬢と店の送り運転手の間に芽生えたつかの間の恋心を描いた「急」(宮地大介+三浦あくり)が特に印象的だった。

中にはちょっと懲りすぎて内容が空回りしているかなぁと思える話もあったが、総じて役者の演技力が物を言う作品集と言えるだろう。このシリーズも9回目か。先に挙げた印象に残った話3題は、小話舞台だけにとどめておくのは勿体ない。出来れば90分くらいの舞台に仕上げて上演してもらいたいものである。

共感

共感

劇団時間制作

劇場MOMO(東京都)

2018/05/09 (水) ~ 2018/05/20 (日)公演終了

満足度★★★★★

15日午後、シアターMOMOで上演された劇団時間制作第十六回公演『共感』を観てきた。常に意表を突くというか鋭い問題意識から立ち上げるというか、その舞台の核心が衝撃的な時間制作の作品。今回の共感とはいかなる者なのか・・・

舞台は、十三工場という刃物を扱う町工場。従業員は、社長の息子である十三佑都(田名瀬偉年)と経理の酒井弥生(武井麻妃)以外は児童養護施設出身者。社長は痴呆症で寝たきりで、佑都の妹・亜子(基村樹利)が世話をしている。その佑都の幼なじみ薬師紗季(高橋明日香)は、ストーカーから助けてもらって以来佑都に恋心を抱いている。しかし、刃物作りに才能のある佑都は仕事に生きがいを感じず、人を殺すことに喜びを感じている。それを知らされた紗季は、何とかして佑都の気持ちを理解しようと努める。真っ直ぐな感情の持ち主・紗季と歪んだ感情の持ち主・佑都は果たして共感できるのか?この2人を軸に、従業員同士の恋愛感情、婦人警官の正義感と道徳心、父親への献身の限界に達する亜子などの感情が複雑に交錯していく。
結果として、佑都は目的とする弥生殺害に失敗するも、介護に限界を感じ父親を殺してしまう妹の身代わりなることで気持ちの収まりを付ける。一方、恋人たる紗季は佑都に共感できず、佑都の殺しに関する事実(既に女子大生を殺していた)を婦警に話して心の収まりを付ける。しかし、駆けつけた婦警の前には妹の身代わりになろうとする佑都と父親殺しに悲嘆する亜子の姿があった。

いやぁ、実に衝撃的な舞台であった。人に共感することの難しさ、喜び、悲しみを、1時間45分の中に織り込んで観客に提示した脚本と役者達には頭が下がる。特に、田名瀬と薬師の熱演が、この舞台を支えていた。脇役の工場従業員たちも、おのおのその役割をきっちり果たしており、劇団時間制作の凄さをまざまざと見せつけられた。
感動というのとは違った意味で終始舞台に集中させられた自分。それは、佑都の感情のかけらのような物を自分も抱いているかもしれないという不安感なのかもしれない。

GHOSTMIX Ⅱ

GHOSTMIX Ⅱ

劇団虚幻癖

萬劇場(東京都)

2018/05/09 (水) ~ 2018/05/13 (日)公演終了

満足度★★★

9日午後、大塚の萬劇場で上演された劇団虚幻癖の番外公演『GHOST MIX Ⅱ』を観てきた。これは、知人の役者・塚田しずくが出演していた関係からである。虚幻癖の舞台は今回で2回目の鑑賞。1回目は数年前に『ロザリオと薔薇』という作品だったが、作品全体が混沌としていて劇団の特徴がつかめなかった。今回はコメディ的な作品で前回とは趣が異なりそうなので、期待して出かけた。

舞台は平成後の日本。妖怪を自由に操れる妖玉3つを巡り、それぞれ妖玉を一つづつ持つ忍者の伊賀と甲賀、それに何でも駆除会社「妖社」社長の安倍武史の3者が妖玉をすべて手に入れるべく争うことに。というのも、妖玉を3つ持った者が世界を支配できるから。
爆音の音楽・ダンス・妖怪たちの変な殺陣が入り乱れるエンターテインメントコメディショーという事なのだが、どうも脚本自体が混沌としていて、面白い場面はあるのだが大笑い出来る無いようでもなく、かといってシリアスな場面も薄く、見終わった印象が弱い内容であった。
登場人物が多めなのと、それらの人間関係が明確化されていないのが混沌の原因か。その結果、コメディも核心を突いていないので笑いが取りにくくなってしまっていた。

思うに、この劇団はこうした混沌さが特徴なのかもしれない。舞台にすっきり感、あるいは何か得るものを求める者にとっては物足りない劇団かもしれない。

レバア

レバア

西瓜糖

テアトルBONBON(東京都)

2018/04/18 (水) ~ 2018/04/29 (日)公演終了

満足度★★★★★

鑑賞日2018/04/28 (土) 14:00

座席1階D列10番

28日午後、中野のテアトルBONBONで上演された西瓜糖第六回公演『レバア』を観てきた。西瓜糖を初めて観たのは数年前。その舞台が気に入り、以後、椿組とのコラボを含め今回が4回目の鑑賞となる。

舞台は終戦まもない東京のある洋館。持ち主は作家先生で、戦災で宿無しの被災者を無償で住まわせている。その洋館に住む、先生以下、焼き鳥屋、黒紋付きの芸者、キャバレー?の女給、たばこを作る爺さん、どこか育ちの良い家庭の母子、先生の娘、そして一番新しく住むことになる復員兵が織りなす人間悲喜劇。後半、この話『レバア』というタイトルに関わる主人公が復員兵と先生の娘であることが明らかになるが、それが衝撃的な印象を与えるのは、それまで舞台で繰り広げられてきた戦後の日本を生き抜くために各自が知恵を絞って生み出した活きる術。それを描く過程の脚本の密度の濃さと、役者達の巧みな演技に、気持ちも身体も舞台に釘付けとなる。登場人物が全員重要な鍵を握っていて、それが連鎖的に各自の運命に関わっていく。恐ろしいというか、悲しいというか、滑稽というか、その生き様に思わず自分の人生を振り返り重ね合わせ嘆いてしまう観客がいる。
役者達は、いずれも芸達者。主人公も脇役も重要性は均等に持たされている。その脚本の完成度と、演出の巧みさに思わず脱帽状態。

今年に入って幾つか良い舞台を観てきたが、この西瓜糖の舞台を観てそれらがみんな吹き飛んでしまった。実に充実していて中身の濃い、言葉に言い表せない重みを含んだ舞台であった。
西瓜糖、恐るべし。脚本と演出と役者に人を得ると、このような重みのあり内容の濃い芝居が作れる見本のような作品になる。こうした作品に出会えて嬉しい。

ブルース・ウイルス~ダイ・ハードな1週間~

ブルース・ウイルス~ダイ・ハードな1週間~

乱痴気STARTER

Geki地下Liberty(東京都)

2018/04/17 (火) ~ 2018/04/22 (日)公演終了

満足度★★★

21日夜、下北沢のGeki地下libertyで上演された乱痴気STARTERの『ブルースウィルス~ダイ・ハードな1週間』を観てきた。前々から出演者の方数名から告知メッセージをいただき、直前まで行くかどうか悩んでいた末に出かけた舞台。当初補助席での予約だったが、劇場の受付で一般席を確保できたと告げられ、ゆったりと鑑賞できた。

その舞台とは・・・
風邪のウィルスと、それに感染した人体の免疫システムの間で起こる1週間の戦いを擬人化したもの。戦いと言っても、基本的に風邪のウィルスは撃退される訳なので、その過程をどう描くかが鑑賞のポイントとなる。基本的に、風邪のウィルスの間の友情物語と、笑いを交えて個性的に描かれた複数ある免疫システム、この二つが交錯した物に作られていた。ただ、元になるウィルスと免疫システムの戦いが淡々とした物であるだけに、それを如何に擬人化して見せられるかがこの舞台の要であるわけだが、ウィルスの友情にしても、免疫システムの個性にしても、やや強引に作り上げた感があってあまり感情移入できなかった。舞台の大道具にしても簡素すぎ。もっと映像を使うとか照明を工夫するとかして、場面場面の人体の様子を明らかにした方が良かったのではないか。
役者では、風邪のウィルスの中心的存在ライノを演じた森山綴と、ナチュラルキラー細胞ほか3役を演じた小木宏誌の熱演が光ったが、それもちょっと空回り的な印象を受けた。

思うに、演出・脚本が安易すぎるというか、密度の薄いところがこの舞台の難点であったように思う。

山の上のHOTEL・別館~2018~

山の上のHOTEL・別館~2018~

劇団カンタービレ

ウッディシアター中目黒(東京都)

2018/04/13 (金) ~ 2018/04/16 (月)公演終了

満足度★★★

演劇サイト・コリッチのチケットプレゼントに応募したところ当選したので、16日の午後に出かけてきた。自分の中で、「ウッディシアター中目黒で上演される演劇に外れはない」という気持ちがあったのだが、結果として、今回の作品は当たり外れという表現で言い表すなら外れの部類に入るであろう。見終わった時、ちょっと残念であった。

舞台は、とある田舎の山の上にあるホテルの別館。ホテルと言うより,ペンションか民宿という方がふさわしいような場所。
ここで、北川真理によって集められた超能力者の集まりが開かれる。将来の日本を超能力者の力によって救おうという会議らしい。ただ、集められた超能力者の力というのは、スプーン曲げや念写など、まぁ超能力者といっても小者たちばかりという感じ、
同じ頃、このホテル別館近くにある刑務所?から2人の服役者が脱走する。目的地は定かではないが、食料や衣服それに車など、逃走に必要な物を調達すべく山中を歩いていて行き着いたのが、このホテル別館。
脱走犯は超能力者たちやホテルスタッフを拘束して、逃走に必要な準備を整えていざ車で逃走・・・したところが、超能力者たちがその能力で拘束を解き、脱走犯たちののる車に落雷を!あえなく2人は捕まり、超能力者たちやホテルスタッフは無事に、というもの。

超能力者たちの話と脱走犯の話が個別に同時進行し、それがクロスオーバーしたところに新たな展開が生まれ舞台としてクライマックスを迎えるという構成なのであるが、超能力者たちの話(誰が何のための会議?参加費用は自費?公費?なぜみんな断らずに参加?)と脱走犯の話(どこから逃げ出した?凶悪犯なの微罪なの?)の輪郭がぼやけていて,結果として二つの話が重なり時事問題などを絡めて盛り上げようとしても盛り上がりの輪郭自体がぼやけてしまい、全体的に中途半端な内容に終始していた。役者はまぁ熱演していたが、この中途半端感の根本には、、脚本の詰めの甘さという問題があると思う。ストーリーの展開自体に無理があったのではないだろうか。これでは役者達がかわいそうである。脚本家の奮起に期待したい。

星の祭に吹く風

星の祭に吹く風

TOHOKU Roots Project

あうるすぽっと(東京都)

2018/04/04 (水) ~ 2018/04/10 (火)公演終了

満足度★★★★

鑑賞日2018/04/08 (日) 18:00

座席1階I列8番

4月8日午後、東池袋のあぅるすぽっとで上演されたTOHOKU Roots Project の『星の祭に吹く風』東京公演を観てきた。これは福島出身の役者・古川奈苗が出演していた縁によるものである。これは東京公演の前に郡山を手始めに東北各地で公演を行ってきた作品で、小説『風の又三郎』を下敷きに作られた物だそうだ。

粗筋というか、舞台はある小学校。40~50代の役者による1962年の同窓会と、20~30代の役者による1993年の同窓会の様子を、ミツという女の子を核として、1962年では三郎、1996年ではヨシキとトシコを巡るかつての同級生たちの故郷に対する交錯する思いを交互に同時進行させていく2時間あまりの作品。年配者たちは方言を使い、背景に『風の又三郎』を思い起こさせる内容であり、若手たちは共通語で台詞を語り、地域開発の問題点を暗示するなど、東北との関わりを盛り込んだ内容は新鮮であった。
役者では、全編出ずっぱりでその存在感が大きかった若干20歳のミツ役広瀬咲楽の出来が菅らしかったというか、非常に印象に残った。これは、演出唐というより役者本人の持つ個性による賜物だろう。
年配の役者では、三郎役の大原研二と耕助役の横道毅の演技が秀逸。若手では、抜きん出た演技者はいなかったというか、全員がなかなかの芸達者。ヨシキ役の真山明大はシーンの核の作り手としては何かが不足していた感じがあるし、そのぶんトシコ役の小松彩夏の演技に食われた感じ。福島出身の古川奈苗と庄野有紀はシーンに明るさとメリハリ感を醸し出していて良かった。

全席指定であったが、場内に空席が目立ったのは残念。せっかくの高レベルの舞台、もっと多くの人に観てもらいたかった。告知が地味だったのと、チケット代がやや高めという印象を与えたかも。

背中を見せて

背中を見せて

独弾流GARAGARADON

ザ・ポケット(東京都)

2018/03/21 (水) ~ 2018/03/25 (日)公演終了

満足度★★★

鑑賞日2018/03/22 (木) 14:00

座席1階D列2番

22日午後、中野ザ・ポケットで上演された独弾流GARAGARADON第2回公演『背中をみせて』を観てきた。初めて見る劇団であり、今回の作品はストリップ小屋が舞台という告知だったので、ストリップ業界にも知人のいる自分としては気になって観に出かけた次第。

映画の仕事がしたくて故郷を捨てて上京しながら、結局は映画の仕事をあきらめ今はエロ雑誌のライターを務めり男。今度の仕事は自分が捨てた故郷にあるストリップ小屋の取材であった。そのストリップ小屋に興業にきたのが、ストリップ界の女王と呼ばれる如月小梅。実はその小屋の支配人はかつの彼女の恋人であり、2人の間には娘もいたのである。さらに、実は窃盗団でもある男性ストリップグループ・パープルズは色物的?に華を添える。

最終的には、ライターの男は父親と和解し、小梅も支配人と和解し娘に母親だと名乗り、あばずれストリッパーとヒモ男は真の愛情に目覚め・・・・というありがちな展開と結末に。その過程の描き方が脚本と演出の腕の見せ所だろう。ただ話を進めるだけではありきたりになってしまうからか男性ストリップという物にも触れているが、その扱いがかつて男性ストリップ団体の主催者と交流のあった自分としては不満足。窃盗団ではなく、もっと真っ正面から男性ストリップというものを見詰めてほしかった。また、それぞれの和解に至る伏線というものがやや貧弱であったのもいただけない。ただ、少なからずストリップ小屋の実態が垣間見られたことは確か。
それにしても、ストリッパーが主役の舞台で結末に決める主役のポーズが、どの舞台でも背中を向けて服を半脱ぎするというのは何とかならないものか。
それと、男性ライター役の進行説明的な台詞はちょっと不満。台詞で説明していたことを、登場人物の対話で観客に分からせる方向性が必要なのではないだろうか。
小梅役ちすんは、それなりに熱演ではあった。
本作を褒めるも貶すも、すべては脚本と演出の出来をどう評価するかにかかっている。

奴碑訓

奴碑訓

Project Nyx

東京芸術劇場 シアターウエスト(東京都)

2018/03/09 (金) ~ 2018/03/18 (日)公演終了

満足度★★★★★

鑑賞日2018/03/14 (水) 14:00

座席1階I列10番

14日午後、東京芸術劇場シアターウエストで上演されたProject Nyx 第18回公演 美女劇「奴婢訓」を観てきた。これは、知人のマルチパーフォーマー・若林美保が出演していた関係からであるが、そのほかにも他劇団公演で注目している役者、例えば傳田圭菜や綾野アリスなど複数が出演していたことも観に行くきっかけとなっている。

この作品は寺山修司の作で、天井桟敷の代表作で知られる。主人不在の館で、女中達25人が交代で主人役を演じるというもの。当然ながら、出演者は女性ばかり(が前提で、例えば寺山のそっくり人形を操る男性も登場したりする)で、舞台装置に負けないくらい女性達の衣装や雰囲気は華やかというか個性的。台詞だけでなく、時にはダンスあり、時には黒色すみれの演奏(ヴァイオリン&歌)あり、そして時には役者が客席に降りて客とやりとりするシーンもあって、途中休憩を挟んでの2時間10分の舞台はあっという間に過ぎ去った。まさに、寺山の世界、美術の宇野の世界、演出の金の世界が満杯の舞台であった。

役者たちの個性と存在感も凄くて、いつもなら印象に残った役者の名前を挙げるのであるが、今回は全員すばらしい。もちろん知人・若林が開演直後に見せた赤ロープと、終演直前に見せた白布を使った空中演技は菅らしかったし、注目していた傳田や綾野の演技も秀逸であった。また、クラシック音楽の使用場面も多く、個人的に舞台に入り込みやすかった。初見参の黒色すみれも印象的な存在。
この公演を一口に言えば、演劇・舞踏・音楽・美術の総合芸術的な内容と言えるだろう。

新宿の紫のバラ

新宿の紫のバラ

めがね堂

新宿眼科画廊(東京都)

2018/03/02 (金) ~ 2018/03/05 (月)公演終了

満足度★★★

3月3日の午後、コリッチで招待券が当たったので、新宿眼科画廊で上演されているめがね堂公演『新宿の紫のバラ』を観てきた。新宿の、もっと言うと新宿眼科画廊で上演するにふさわしい芝居という事だったので、面白そうだなぁと思い期待して出かけた。小劇場の中でも小さい方の画廊地下のスペースでの公演で、行ってみるとスペース中央を舞台にして、舞台を挟むように2面に客席が配置されていた。この狭い空間をどう使って何を上演しようとしているのか。手がかりはタイトルのみである。

さて、劇の内容がよく使われる多重構造で成り立っていた。新宿眼科画廊に舞台を観に行った男性が、劇場で観客としてきていた1人の女性と出会い興味を持ち、彼女を捜し求め、出会えたら彼女を一流女優になるまであしながおじさん的に金銭的にバックアップするだけでなく、彼女を活かすための自ら脚本を書くようになる。しかし、いうの間にか脚本は彼の本心を離れて一人歩きし始め、彼女の両親の金への執着、本心では女優になりたくなかった女性の心情トロと自殺・・・。衝撃にうちひしがれる男性が気づくと、彼は劇場で舞台を見終わった直後である現実に引き戻されていた。

男性が舞台を観に行ったは、馴染みのガールズバーの女性がそこに出ていたから。彼女に渡すつもりの紫のバラは、彼女では無く一目惚れした女性との間をつなぐシンボルとなる。最近自分は芝居を中程まで見ると、「この芝居、最後はどう収まりをつけるのだろうか」という気持ちで見ることが多い。そのままスムーズにまとまって終わることもあるだろうし、何かどんでん返しがあって予想外の結果で終わることもあるだろう。今回の舞台では、今進行している内容は男性の一瞬の幻想として処理されるのではないかと予想出来てしまったことがちょっと物足りなかった。
舞台全体としては、男性役と一目惚れした女性役の役者の出来が全体の仕上がりに大きな影響を持っていたが,2人とも一応は及第点と言えそう。個人的には、この女性の母親役と劇団の看板女優役の役者に興味を持ったし、劇団で男性役を演じる役者がなかなかの快演をを魅せてくれた。
ともあれ、この舞台を見終わった自分の胸に残ったのは、切ない思いであった。

かさぶた

かさぶた

On7

小劇場B1(東京都)

2018/02/03 (土) ~ 2018/02/11 (日)公演終了

満足度★★★

鑑賞日2018/02/06 (火) 14:00

6日午後、下北沢の小劇場B1で上演されたOn7第4回公演『かさぶた』を観に行った。この劇団は、30代の大手劇団に属している7人の女優、すなわち保亜美(俳優座)、小暮智美(青年座)、尾身美詞(青年座)、安藤瞳(青年座)、吉田久美(演劇集団円)、宮山知衣(テアトルエコー放送映画部)、渋谷はるか(文学座)によって結成されたユニットで、今回は渋谷がサポートに回り6人の出演する舞台となっていた。そもそもこの舞台をなぜ観に行ったかと言えば、ある舞台でもらったチラシの中にこのOn7のチラシが入っていて何気に観ていたら出演者に尾身の名前を見つけたから。尾身の演技は、劇団桟敷童子の舞台で何回か観ていたので名前に覚えがあったのだ。

さて、今回の舞台はディバイジングという手法で作られたもの。あるテーマに基づいて動きと最小限の台詞で成り立っている。もちろん、舞台として完成するまでには。出演者による感性の相互理解が必要なわけで、そこには豊かな感情と高度なテクニックが演者に要求され,同時にそれをまとめる確実な力が演出者(今回は、大谷賢治郎)に求められる。
いくつかのシーンで構成された『かさぶた』の舞台は、時には「なるほど」と演者達のかさぶたの思いが伝わってきた反面、時に「これのどこがかさぶた?」と思わせるシーンもあったことは確か。ディバイジングという手法の怖さは、舞台を作り上げる過程における役者相互の感動が強すぎると、その感動を観客に伝えるというプロセスが希薄になってしまうこと。自分の観た回では終了後出演者によるトークが行われたが、それを聴いていて、役者相互の感動の度合いがやや強すぎるのではないかと感じた。かさぶたが伝わらないシーンがあったのは、そのためであろう。本人達にとっては熱演であったと思うが、受け手としての自分としては好演ではあったが演技に空回りの見えた点が残念という思い。まぁ、一つのチャレンジとしては、役者も観客もよい体験であったと言えるだろう。

プレイユニットA→XYZ『200億の客船』/東京カンカンブラザーズ『ラブ・シャーク』

プレイユニットA→XYZ『200億の客船』/東京カンカンブラザーズ『ラブ・シャーク』

東京カンカンブラザーズ

吉祥寺シアター(東京都)

2018/01/17 (水) ~ 2018/01/28 (日)公演終了

満足度★★★

鑑賞日2018/01/25 (木) 14:00

座席1階A列11番

知人の役者が出演したのがきっかけで観に行くようになったデッドストックユニオンの常連客演役者・棚橋幸代が、他の劇団公演でどのような演技をしているのか知りたくなって観に行ったのが東京カンカンブラザーズ&プレイユニットA→XYZコラボ公演の『ラブシャーク』。

豪華客船パシフィック・マリン号を舞台に、接客の長でしっかり者の支配人・鯨井朝美(棚橋幸代)を中心とした接客スタッフと、元巨船の船長だったちょっとズッコケの有村船長(農塚誓志)を中心とした運航スタッフという乗組員と、妻子どころか愛人まで同じ船に乗ってきたヤクザ、お笑い芸人と恋人、妊婦夫婦、途中救い出した難破漁船の船長といった一癖ある旅客達が繰り広げる人間模様。爆弾が仕掛けられた客船で、避難し遅れた船員と客のドタバタ劇の顛末は意外な方向に。

劇の中心はしっかりした支配人。それに対してトンチンカンな言動で笑いを誘う船長は、劇の上でのピエロという役回りか。まじめさといい加減さの対比で盛り上がったところでの爆弾騒ぎなのだが、爆弾犯人がその行動に出る動機付けがやや貧弱で、島田里央の熱演にもかかわらず切迫感が足りず、そのあたりから脚本が空回り。爆弾が実は花火だったというオチも、やや物足りない。豪華な舞台セットと役者の熱演の割に内容が薄く感じられた一番の原因は、やはり脚本の深みのなさだったかもしれない。
終わってみれば、支配人と船長の印象が残っただけで、クライマックスの爆弾騒ぎがむなしく思えた舞台だった。

ストックホルム

ストックホルム

演劇チーム 渋谷ハチ公前

赤坂RED/THEATER(東京都)

2018/01/23 (火) ~ 2018/01/28 (日)公演終了

満足度★★★★

鑑賞日2018/01/24 (水) 19:30

座席1階D列11番

知人の役者・田中惇之が出演するというので観に出かけた、初めて見る劇団の初めて見る作品。この作品は11年前に初演され8年前に再演されたという。タイトルの『ストックホルム』からどんな内容の劇なのか想像できなかったが、舞台の核になる出来事がストックホルム症候群(詳細な説明は省略する)にまつわるものであった。

8年前に誘拐監禁された女性とその犯人がすむ男のアパートでの2人の間に生まれた愛情というか奇妙な信頼関係を軸に、その隣に住む男とその恋人、居酒屋の店長とアルバイト店員、居酒屋と取引のある酒屋の店長とアルバイト店員、居酒屋や酒屋に営業しに行く文房用品会社の営業マンコンビたちの、アブノーマルとは言えないまでも形の変わった愛情の在り方が交錯したストーリー。女性よりも男性の愛情表現に問題がありそうなカップルばかりである。よって、男性役者陣の演技が舞台の成否の鍵を握っていたと言える。その点からすれば、男性役者陣の熱演は見応えがあった。特に誘拐犯を演じた工藤宏二郞と、誘拐犯の隣室に住む会社の同僚である男を演じた田中惇之の演技はなかなかの出来映え。女優陣では、誘拐された女性の微妙な心理を演じきった岡野真也が良かった。
内容的に堅苦しさもあったが、居酒屋の主人、酒屋の店長、営業マンコンビが適度な笑いを客席に起こさせて堅苦しさと緊張感を和らげていた演出と脚本もなかなか良かった。役者の演技が物を言う作品と言えるであろう。
最後には誘拐犯が捕まって誘拐監禁されていた女性は解放されたが、それは女性を幸福にする物だったのか。交錯した恋愛の形を見ているうちに、愛情とは何か、どう生まれ育っていくものなのか考えさせられる舞台であった。

恋愛疾患特殊医療機 a-Xブラスター

恋愛疾患特殊医療機 a-Xブラスター

萬腹企画

シアターグリーン BOX in BOX THEATER(東京都)

2018/01/11 (木) ~ 2018/01/14 (日)公演終了

満足度★★★

13日午後、池袋のシアターグリーンで上演された萬腹企画『恋愛疾患特殊機 a-x ブラスター』を観た。これは、ネットで交流のある役者・越智春奈が出演していた関係からである。

人前でいちゃつくカップルを恋愛疾患として強制的に排除というか治療する政府が組織した秘密機関の話。そこでいちゃつき撃退平気ブラスターを作った芋堀博士(実家から失踪)の消息を求める娘姉妹が絡み合う空想科学コメディとでも言える内容。映像なら特撮であろう場面を黒子が補助することで観客の笑いを誘っていた。
この機関に属するのが,日本でのオリジナルメンバー2人に海外からの助っ人3人の計6人。いや、厳密には彼らに指示を出すオペレーターが各1人いるので、8人というやや大所帯。これに越智扮する女性総理など政府関係者や撃退されるいちゃつきカップルなど、出演者が多くて、どの役をその役者が演じたのか今になってみると頭の中はごちゃごちゃ。しかし、なかなか笑える内容であった事は確か。人前でいちゃつくことが平気というか好きな自分など、こういう組織があったら標的にされそうだ(苦笑)。

アベサダ:リローデッド

アベサダ:リローデッド

美貴ヲの劇

OFF OFFシアター(東京都)

2018/01/10 (水) ~ 2018/01/14 (日)公演終了

満足度★★★

12日夜、美貴ヲの劇・新春カットオフ公演『アベサダ:リローデッド』のうち有末剛による緊縛が舞台途中に挟み込まれる特別公演を観に行った。この日の昼間には、正規公演外に緊縛のある小舞台が上演されている。

舞台は、アベサダの話と妻のいる男を好きになり、その男が死んだとの知らせを受けて使ったことのあるラブごてるの一室で通夜を営む3人の女たち(相席屋、ヘルス、アプリという通称でお互いを呼び合う)をクロスオーバーさせたもの。パンフレットによると、「自分の気持ちにケリをつけるのは自分なんだ」というのがテーマらしい。好きな男とのケリの付け方に性器切断と通夜という方法があるということだろう。純愛のケリの付け方は実に難しいようである。
緊縛シーンは、サダが吉蔵を殺した後に挿入されていた。縛られるサダ役あべあゆみの色気と左胸に見え隠れする刺青が悩ましい。
サダ役あべあゆみと相席屋役ひきのさつきの2人芝居的な側面もあったような気なする。

上演時間は緊縛シーンを含めて約100分。
会場は、下北沢のOFFOFFシアター。

「標〜shirube〜」

「標〜shirube〜」

劇団桟敷童子

すみだパークスタジオ倉(そう) | THEATER-SO(東京都)

2017/12/12 (火) ~ 2017/12/25 (月)公演終了

満足度★★★★★

17日、知人・もりちえの所属する劇団桟敷童子の公演『標』を観てきた。最近、数人の団員が退団したのを受けて新しいメンバーに加え、演劇集団円から数名の出演も得て、新生桟敷童子の本格的始動開始第1回公演とも言うべきもの。

舞台は戦争末期から終戦後にかけての寂れた港町。生け贄を捧げると現れるという蜃気楼に死んだ夫などとの再開を夢見る女性7人が、脱走兵で生け贄になるのを承諾した男3人をいざ生け贄にしようとすると、蜃気楼を生むために必要な海風が止まってしまい困惑する一同。そこに脱走兵をを護送していた上官(実は彼も脱走兵)や生け贄行事を止めさせたい港町の人々が加わり、蜃気楼を巡って鬩ぎ合う。やがて、蜃気楼で夫が帰ってきたという女性や、上等兵の拳銃で撃たれて命を落とす女性も出てきて、7人の女性は1人となり生け贄行事も立ち消えに。蜃気楼を呼ぶ神への「ホ~ホ~ホ~。ホッダラホイヨ~」という呪文が耳に残り、最後に舞台全体に広がる紅の風車が目に焼き付く、笑いも起こるが悲しい物語。

見終わって思ったのが、この舞台の発想が、過去の上演作『風撃ち』を主軸に『海猫街』をスパイスとして加えたような印象であったこと。「生け贄」「最後には1人になって待つ女性」というテーマが、作者である東憲司の頭に染みついているようだ。

役者としては、主演ワタリを務めた演劇集団円の朴璐美の演技が秀逸。また、元教師で女7人衆の1人リュウを演じた板垣桃子の演技も良い。男性陣では脱走兵4人が時にはコミカル時には悲しい演技で魅せた。その他の役者達も、手堅い演技でさすが桟敷童子という思い。全18公演ほぼ完売という力はさすがであろう。次回作『翼の卵』も期待したい。

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