満足度★★★★★
拡張リフレイン
拡大する世界と自意識との間の調整に精一杯であった頃の、その隙に起こったもの。
自分自身への一生懸命さは、その場にいて、一緒に過ごしていたはずの存在さえ容易に見え辛くさせる。
嗅ぎ取り間違いでなければ、作中で、日曜に起こる事のいくつかの小さな予感と、一回の重要な予兆は匂わされていたように思うのだが、それぞれの切実な視点のリフレインが、小さなそれらの断片をするりと見過ごさせてしまう。
気付くのはいつだって起こってから。しかし後から思い起こす光景もまた、何気ない。そのことがせつなさに拍車をかける。
題材を見ていてふと、藤田氏が眼を向けているのは90年代の子供なのかなと思ったり。
子供の身体の再現率には毎度ほれぼれする。本心の包み隠せてなさ、下の子に対する容赦のなさ、語彙の追いついてなさ、細かい動作で積み上げられる生命感。召田実子の見事な幼児感。