公演情報
一般財団法人松本市芸術文化振興財団「木ノ下歌舞伎「心中天の網島」アクセシビリティ版」の観てきた!クチコミとコメント
実演鑑賞
満足度★★★★★
2015年初演、2017年再演を経て、2026年が三度目の上演となった本作。今回は「アクセシビリティ版」と銘打ち、字幕、手話通訳、音声ガイドなど、多くの鑑賞サポートが導入されています。元々木ノ下歌舞伎は、古典の名作を現代の人々へどのように伝えるか? に注力してきた団体なので、アクセシビリティへの積極姿勢は容易に理解できます。
個人的に三度目の観劇になりますが、とても素晴らしい上演でした。全編を通して、各シーンの解像度が高く、ここで何を表現し、どう物語が紡がれていくのか? が客席へ明確に伝わってきます。現代口語、歌舞伎で使われる言葉、糸井さんが作詞した歌詞など、複数の言語で上演台本が構成され、いま思うと、全編リズミカルに流れていく心地良さ、緩急なども非常に効果的でした。俳優たちも素晴らしく、初演から「おさん」役で出演する伊東沙保さんが特に素晴らしかったです。遊女との恋愛にのめり込む夫・治兵衛への態度や対応など、価値観の異なる現代人に観てもらうのに、とても苦労しそうな役どころを、奇跡的なバランスで好演していました。
終盤のラスト15分ほどは、自然に涙が出てきました。テーマ曲も、ラストへ向けた演出も素晴らしかった。「清濁併せ吞む」という言葉がありますが、人間の存在を、懸命に許容・肯定しようとする名作だと思います。