幸せの方程式 公演情報 A.R.P「幸せの方程式」の観てきた!クチコミとコメント

  • 実演鑑賞

    満足度★★★★★

     断固、観るべし! 華5つ☆。

    ネタバレBOX

     物語はズージャの自由やフレキシビリティーを支える強烈なヴァイタリティーと生き様、その根底に流れる押し留めることのできないパッション! と、プロミュージッシャンとして当然の矜りをA面に、実際にそれらを創り出している各々の生き様をB面に収録したLPとでも例えよう。生演奏が入る。処は都内から僅か1時間の離島、三国島のライブハウス/コミュニティーラジオブースを兼ねる一角。オーナーは、業務内実に口を挟まぬ理想的な人物。
     作・演は、A.ロックマン氏。タイトルを見て多くの人が、「・・・んなもん、在る訳ネエジャン!」とソッコーで否定しソウなタイトルで、先ず惹きつけ、小屋に足を運んで暮れた観客に対しては気の利くディレクター役がパーソナリティーに指示を出し、カウントダウンが始まる。Qが入ると流れてくるのは前説である。ありそうで無い、この導入、実に上手い。観客の日常的時空を殆ど重力も掛けなければ、桁外しもせずスルりとずらすだけで戯曲時空間に取り込んでしまう。脚本の良さは無論、この演出の上手さとこの演出に見事に応える役者の技量も大したものである。
     一応、物語の流れを大掴みに記しておこう。近くこの三国コミュニティーラジオは開局10周年を迎えるが、これを記念して何か記念イヴェントをやろうという声が上がり、では島出身のアーティストに出演して貰って盛り上げようということになった。無論、ギャラは跳ね上がり、そもそも、そんな著名人が居るのか? という話が出た際、1人だけ居るということが明らかになった。ベテランジャズ歌手が居たのである。ダメ元で当ってみる価値はある、とトライすると快諾された。但し10周年当日はベースメンバーが入れないと告げられた依頼者側は内部スタッフが欠員の代替をすることになった。本番前に実際に放送する局の舞台でリハを行いたいと当然の要求が歌手マネージャから入った。準備を整えいざリハ開始・・・。だがアクシデントが起こった。彼女がいきなり倒れたのだ。これは大騒動になった。引退か? とメディアはこぞって報じた。こんなことがあったある日、スタジオを訪ねてきた人物がいた。何と彼女の息子であった。息子は誠実な男で母と己との決裂の原因を話すと同時に訳あって絶縁状態にあったものの、このように母が倒れたことで放っておけない、駈け付けたのだった。本番迄の日数も限られる中、恋多きジャズシンガーの実態と、矢張りリハ中の突然の転倒シーンが上演される。1回目のそれは、仕組まれたものであったが、今回のそれは実際の生命の危機、余命宣告迄受ける深刻なものであった。息子と母の長い別離も本を正せば、彼女のアーティストらしい恋の強熱の為せる業であった。息子も齢を重ねるにつけ不完全故にこそ、人を愛する術を知った、というべきであろう。
     かくて物語は大団円を迎える。三国島で行われる今回のライブコンサートが彼女の引退公演となるのであった。メインストリームは、このような状態で進行してゆくが、サブストリームが待ったをかける。何とオーナーの借金の廉で、機材から楽器迄総てが差し押さえされてしまったのである。然し既に全国キー局での配信も決まり後は本番を待つだけ、ということになっていた。ファンからの期待も熱い。ライブ決行なるか? 瓦解するか? 
     By the way,人は不完全であるから、生きている価値がある。例えば、子供は親が一から十まで面倒を見て育てるように考えられているが、逆である。子供こそ、親を育てる育ての親なのである。こんな逆転が真であるような恰好良さが今作の果実として稔っている。脚本、キャスティング、演出、演技の素晴らしさ、また演奏の見事さ、何れをとっても水準を見事に超える秀作。観るべし!

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    2026/08/01 11:11

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