迷光、あるいは、残照。 公演情報 風雷紡「迷光、あるいは、残照。」の観てきた!クチコミとコメント

  • 実演鑑賞

    満足度★★★★★

     板上センターに円形の白いカーペットを敷いてセンターを示し丸テーブルを置いてある。テーブル周りには椅子が4脚、観客から演技が見やすいように配置されている。コーナーの一角にスタンド式の衣文掛け。オープニング時点では白衣が掛けられている。精神科医療施設という設定だ。

    ネタバレBOX

     今作で扱われるのは1人の人間の中に幾つものキャラクターが存在する解離性同一性障害である。この病の多くは、子供の頃に受けた虐待や耐え難い苦痛・苦難によって、未だ親元から逃げて自立できないという環境下、難を避ける方図も無く深く魂を傷つけられた経験により身体のみならずその心、魂に深く抜き去りがたい傷を負った経験に因って発症するケースが多い。今作は、幼少時飛び降り自殺してしまった母の体がクッションになり奇蹟的に生き残った少女が、この時のショックで解離性同一性障害を発症し成人後は娘を産んで現在は娘に面倒を見て貰いながら生活を営んでいるという状況の中で起こった不可解な連続事件で5歳の男児が死亡していた件を巡り捜査一課の刑事たちが動き出し幾つかの証言からこの解離性同一性障害の女性を容疑者として追い始め、精神障害の疑いもある為件の病院に勤務する天才精神科医師とされるひかるに、捜査協力を求めたことで展開してゆく。無論、医師には患者情報に対する守秘義務があるが、警察には、犯人と思しき者に関する情報を市民に提供して貰う権利もある。このような事情からこの病院でも可能な限り警察に必要な情報を提供することが現実となった。
     ところで、ひかるの天才性を示す場面は一場の取っ掛かりで描かれるが、シャーロック・ホームズシリーズの第一巻「緋色の研究」で有名な冒頭シーンそっくりな受け答えで少し鼻白んだ。無論、この点もひかるが警部に「殺人を犯している」旨指摘するシーンの解釈の仕方を上手く利用することで先に指摘した鼻白む印象は払拭された。流石に脚本化である。更に今作はホームズ以外の文学作品「源氏物語」に登場する光源氏ゆかりの女性が何人も登場する。無論、天才医師ひかるの名は光源氏に重ね合わされている。その為被疑者の多重な人格総てに源氏物語に登場する女人の性格が反映されている。源氏物語は読んでいて当たり前の書物だから誰しもその内容を可成り深く知っており、今作に深みを添えている。 
     但し、今作それだけでは終わらない。では、どのような展開を見せるのか? それは今作を観てのお愉しみだ。唯一つ指摘しておきたい点がある。今作で描かれる病院の院長の娘と婚約していたひかるは事件解決後、この病院を去ることになる。婚約者の妾腹の兄で副医院長を務めてきた医師が医院長に就任、ひかるは自分を捨てた母を探す旅に出る模様である。天才の抱えた自身の厳しい魂の傷が、彼の脱いで掛けた衣文掛けの白衣に憑依しているかのような感慨を齎すシーンは実に印象的である。

    0

    2026/02/13 12:11

    1

    4

このページのQRコードです。

拡大