山吹 公演情報 遊戯空間「山吹」の観てきた!クチコミとコメント

  • 実演鑑賞

    満足度★★★★★

     ベシミル。本日23日追加公演。(追記24日16:3)

    ネタバレBOX

     妖話会の5作目公演、桐生市での公演を終え、東京での公演は六本木ストライプハウスで行われている。この会場は上演空間に会場上からの階段がニュッと突き出ている。この階段と四国修善寺にある画家のアトリエに見立て敷物の敷かれた(絨毯と解しても良かろう)空間が今作の上演に係る空間である。階段下の空間には、楽器奏者、設楽 瞬山さんが座り敷物のある空間が主たる演技空間、階段の対面にナレーターが立ち、ナレーション及び画家の台詞を担当する。敷物とナレーターとの間の床部分には画家の作品群が並べられている。この劇空間の対面階段の更に奥が袖。出捌けはこの袖一カ所である。アトリエと袖に挟まれた空間が庭という想定で池がある。このように設定された長方形の劇空間を挟むように観客席。
     上演作品は泉 鏡花の「山吹」、構成・演出は篠本 賢一さん。彼は人形師も演ずる。縫子役には加藤 翠さん(和服で出演)。巡礼で有名な四国は空海が往時に関ったとされる場所が多く残り現在も実在している物も在る。舞台となる修善寺もこの一つで空海創建の寺と言われる。
     篠本氏の演技は流石に技術の高いもので、人形師の若い頃に侵した罪障が彼の内側から彼を苛み続け荒れ狂う力に心休まる瞬とてない様を、彼の良心と罪の意識との葛藤する様を、鏡花独特の美意識に貫かれた言語表現との鬩ぎ合いに対峙させようと身体化を図っているような演技に結実させている。酒を呑むシーンでは、一気に呷るように呑むが酒量はさほど多くは無い。然し痩せさらばえた身、歳も取っている上に乞食同然の暮らしぶりが伺われるから効くことは確かだろう。而もこのような身体で出会った縫子に頼むのは打ち据えられること、血を流すまでかんぷ無きまで叩きのめされることなのだ。縫子は子爵の妻であったが、舅、子舅らに責められ豊かな実家の財産を奪われる生活に完膚なきまでに叩きのめされ子爵家を出帆したのであった。そして娘の頃初めて恋の焔に焼かれた相手であった画家にここで出会った。娘の頃の心情、己の恋の在り様迄つぶさに語り死を望んでいることさえ告げた。然し画家は、彼女が死ぬことを諫めた。既に通常の生き方では己の罪障に耐えられなくなっていた人形師は、縫子の折檻だけが自らの罪障意識から精神を休ませることを告白した。縫子は漸く自らの生き得る道を見出し死を求めることを止め、池で死に腐りかけていた鯉を肴に人形師と祝言の盃を交わす。
     実質、既に挙げた篠本氏の演技と加藤さんの女性らしいたゆたうようなある種自由を湛えた演技が腐りかけた鯉を共に食べる覚悟と絡み、二人の演技にナレーションと画家の台詞を述べる中村 ひろみさんの声が被さる。演奏の設楽さんが作品の流れに応じた極めてセンスの良い演奏で効果を高める。いつもながら完成度の高い作品だ。

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    2025/11/23 11:14

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  • 皆さま
    追記しました。ご笑覧ください。
               ハンダラ 拝

    2025/11/24 16:05

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