喜劇王暗殺 公演情報 トツゲキ倶楽部「喜劇王暗殺」の観てきた!クチコミとコメント

  • 実演鑑賞

    満足度★★★★★

     初日を拝見。観るべし!

    ネタバレBOX

     板上は下手、上手に丸テーブル各1,テーブルには丸椅子。下手側壁の観客席に近い場所が丁度ベンチとしても機能するような状態になっている。ここが物語の展開する銀座のカフェ ハルである。板中央奥が太い柱に挟まれてカフェへの出入口となっており、出捌けはホリゾント下手・上手の側壁から。因みにハルの直ぐ近くに有名なサロン・ハルが在り時折サロン・ハルを目指した客が間違えてカフェ ハルに流れてくる。
     時は1932年、5月を中心としその約1年前から。因みに1932年は首相であった犬養 毅が海軍青年将校らが起こしたクーデタ、五・一五事件によって暗殺された年。犬養暗殺の要因は、農村部の極端な疲弊にあったということが出来よう。決起した青年将校らの姉や妹が貧しさの為に人買いに買われていた証言なども残っている。チャーリー・チャップリンが来日したのは丁度この時期、5月15日には首相官邸を訪れる予定が組まれていた。今作は偶々このカフェの客の1人であった櫻井の父がチャーリーの秘書・高野と知り合いであったことから様々な情報が櫻井に伝わり櫻井が実際にチャップリンが訪日する1年以上前から訪日に係る話をハルでしていたことが序盤で描かれる。常連客は地元の庶民が主体だ。とはいえ、銀座。モガは当時の流行であったから今作にもその服飾、髪型などに現れている。
     史的には、5.15事件当日、チャーリー一行は、首相官邸を訪問する予定であったが、急遽取り止め相撲を観に行った、とされている。今作は何故、急にそんなことになったのか、その謎が描かれる。実際に起こった歴史的事件を背景にチャップリンに対する人々の憧憬やチャップリンその人のお茶目で優しくスマートな人間性、秘書・高野との信頼関係の深さとサポートの妙。庶民的ファンへのチャーリー自身の共感と的を射た想像力の豊かさ、深さが完結に幾つもの挿話として描かれる。これらのシーンは圧巻。興味深いのは、これらの展開に巫女として人々の問いに解を与える目黒。彼女の解は正鵠を射、時代の不気味な未来を正確に示す。その一方で互いに惹かれ合っているにも関わらず言い出せないカップルを繋ぐチャップリンのアクションの粋が、彼の映画でも使われていた話や、その映画が実は歌舞伎にも翻案されていたのではないか? との視点迄が盛り込まれつつ、先に挙げた謎が見事に解かれる。

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    2025/11/20 10:52

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