抜殻を握った僕たちは 公演情報 男澤企画「抜殻を握った僕たちは」の観てきた!クチコミとコメント

  • 実演鑑賞

    満足度★★★★★

     シアターグリーン若手劇団支援企画参加作品である。新鮮で若者らしい柔らかで繊細な感性の光る作品だ。華5つ☆ 尺は約120分。

    ネタバレBOX


     物語は高校演劇部の活動を描くが脚本を担当している日暮 蛹は天才的な才能を見せ、高校生で既に小説をものして一部に熱狂的なファンを持ち、この演劇部に書き下ろした戯曲でも賞を獲るなどその才能は高く評価されていた。或る時、彼の作品の熱狂的ファンの1人桑田 幸宏が新歓時でも無いのに演劇部に入部したいと申し込んで来た。既に書籍化されていた蛹の小説と偶々観た高校演劇部の上演作品のテイストが全く同じ感性、感覚の才能を持つ人間によって書かれていたことを見破るだけの愛読者だったのである。それ迄親からも“抜け殻のようだ”と観られていた幸宏の人生は一変した。イキイキとし輝くようになったのだ。兄を大好きな妹の美紀も演劇部に入った兄の下に良く来るようになった。
     ところで登場人物名に昆虫と関りのある名前が多く登場する今作、昆虫が幼虫から蛹になって羽化し成虫になったり、種類によって何度も新たな蛹に脱皮して成虫に成る時を迎えるという生命の辿る厳粛でドラスティックな転変を劇中辿る台詞がキチンと埋め込まれていることと無論大いに関係している。前者の場合蛹の中で一旦幼虫はどろどろに溶けた状態になってから総ての器官、成虫に成った時の形を整えてゆくのである。その様は余りに過激で厳粛而も命の崖を渡ってゆく姿そのものである。この事実を知った時、子供たちの総てが命に対し畏敬の念を感じる。そういった科学的観察を通して知られている事実をキチンと書き込み、ヒトの自死への本人と周囲の者各々に波及するある意味捉え所の無い難題を考究することが、今作のテーマである。
     同時に表現する者としての作家、役者や演出家等の演劇人と、作品を受け取る側や元ネタになったモデル達の相関関係に於けるそれぞれの社会的、倫理的責務と具体的対処についての考察が今作のテーマということが出来る。
     若く繊細な感性と理知が編む今作、高く評価したい。今後の活躍が楽しみである。

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    2025/08/25 03:15

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