セピア色の乙女たち 公演情報 藍星良Produce「セピア色の乙女たち」の観てきた!クチコミとコメント

  • 実演鑑賞

    満足度★★★★★

     椿組を拝見。

    ネタバレBOX

     舞台美術も中々手の込んだものでグー。開演前には「林檎追分」や「ふるさと」のメロディーやダンモが流され中々良いムードを醸し出していた。然しオープニング早々、ぶっ壊れた日本語のオンパレード、ピーチクパーチク囀るような甲高い声がこれらの雰囲気を完全にぶっ壊した。な~~んだ! と絶望仕掛けたのも束の間。物語が実際に展開するのは現代である。が、それは入れ子細工の如く昭和元年生まれの祖母の大学時代、即ち太平洋戦争で大日本帝国が劣勢に陥り学徒出陣が強制される時代直前から原爆投下で決定的敗北を見、体験させられ、満州へ渡っていた祖母の母の訃報を受けた敗戦直後迄の、折角東京の大学に受かり就学したものの曲がりなりにも授業を受けることが出来たのは最初の1年、後は勤労動員され銃後の補佐役として事務職に徴用され、飢えとファシズムの要求するもろもろの規制に、偶々極めてリベラルで至極真っ当な寮長及び寮母らの甲斐甲斐しく理知的で人間的な対応に救われつつも、大空襲後の東京都下に広がる惨憺たる有様を目撃し、その余りのショックに絶望の淵に沈み掛けながらも、何とか前を向こうと孤児と化した子供たちに最後に残っていた梅干しを全部上げてしまった寮母と共に、壺の底に残っていた梅干しの汁を啜って現直しを図り一縷の光明を見出すなど等身大のリアルを戦争を体験し体験談を語った祖母の孫が出演する舞台作品として、脚本家が見事に紡いだシナリオを只管生きぬく演者達のストレートで真摯な演技が表現するという形で実現する。
     この単純だが効果的な仕掛けによって今作は心に沁みる作品として成立した。良い舞台である。実際敗戦後長い間、傷痍軍人は盛り場や人々の多く集まる上野公園等で街角に立ち、物乞いをしていた。その姿は1952年生まれの自分も散々見て来た。今作は池袋北口辺りがその場所として登場する。

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    2025/08/08 11:38

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