32軍壕へ メンソーレ 公演情報 沖縄俳優部「32軍壕へ メンソーレ」の観てきた!クチコミとコメント

  • 実演鑑賞

    満足度★★★★

    沖縄への郷土愛と反戦を綴った鎮魂劇。物語は、タイトルにある「32軍壕」への思いが肝。自分も知らなかったが、「32軍壕」の役割とそこでの悲惨な出来事、それを風化させないための取り組みだ。

    首里城地下にある日本軍第32軍司令部壕跡、それが2028年8月15日に公開になるという設定で、32軍壕 平和ガイド一号の大城メリサが案内リハーサルをしているが…。この公演は壕に潜む地縛霊の声を聞くこと、それは記憶を語り継ぎ 恒久平和を願うもの。同時に少なくなる語り部、曖昧になる記憶、その危惧への取り組みのよう。
    (上演時間1時間40分 休憩なし) 

    ネタバレBOX

    舞台美術は 全体を黒系の幕(岩)で囲い、その内側に茶系の幕(土)の二層で 地下にある第32軍壕のイメージ。真ん中に箱馬が2つ。
    キャストは6人、全員が沖縄県出身だという。

    物語は 暗転中、台詞だけで メリサが子供の頃、日本人離れした容姿を揶揄われる、そんな(人種)差別的な場面から始まる。月日は流れ、メリサが 32軍壕平和ガイド第一号として その予行練習をしている。本来なら まだ立ち入り禁止だが、そこに兵士や武士の恰好をした男などが現れ、沖縄愛を語り戦時中の出来事を話す。この男たちは首里城地下にいる地縛霊、それが何故かメリサには見える。

    32軍壕には5つの抗口があり、将校たちのいる第1抗口などに比べ 島民たちがいた第5抗口の環境は劣悪。そして米軍の攻撃、日本軍の抗戦により それぞれ多くの死傷者を出した。それを地縛霊がそれぞれの立場(国)から説明する、それは「人間が人間でなくなる」という怨嗟であり最悪の不条理。公演は、思いや主張を展開するだけではなく、壕は「負の遺産」であり、太平洋戦争ー特に沖縄戦における実相を後世に伝えたい との思いで描かれている。だからという訳ではなかろうが、平和を願いつつ芝居の力を借りて、楽しく解き明かす と。

    第32軍司令部の地縛霊は、沖縄戦を決して忘れてはならない、風化させない思いの象徴(亡霊)。武士の格好は組踊の衣裳。亡霊の存在をコミカルに描くことで、今ある平和・平穏な暮らしの ありがたさを表し、戦後の荒んだ心を前向きにする。その喜びの表現として、沖縄らしい組踊を音楽に合わせて出演者全員で踊り、物語としては大団円。
    次回公演も楽しみにしております。

    0

    2025/08/07 00:24

    1

    0

このページのQRコードです。

拡大