ARCHIVE 公演情報 END es PRODUCE「ARCHIVE」の観てきた!クチコミとコメント

  • 実演鑑賞

    満足度★★★★

     初日を拝見。尺115分。

    ネタバレBOX

     金銭的に行き詰った人々をターゲットに社の近くでそれと思しき人々にぶつかる、ぶつかりそうになる等の行為を繰り返しては名刺を渡し“KO-SEIファイナンス”と名付けた更生プログラムを押し付け、高額賞金を餌に金持ちの視聴する秘密ゲームに参加させ生き残った者のみが出資者達が提供する賞金を受け取る仕組みを喧伝。男は語る。自らは次元の異なるパラレルワールドから来た、と。そして参加を募るのだ。当然の事ながら、男はターゲットの追い詰められた状況を事細かに調査済み。その上でこのようなアタック方で垂らし込み参加させるのである。まあ、ありきたりで安易な発想であるし、或る意味、退屈し退廃に埋もれた現代日本人の戯画である。実際には観客が観るという形式の芝居であるという点に多少のアイロニーも見えるかも知れぬが。然し例えばマルキ・ド・サドが描いた諸作品が当時世間に齎した程大きなインパクトは無論ない。世間そのものが、根本から当時より腐りきっているし人々の感受性そのものが既に麻痺しているからであり、倫理そのものが既に可成り壊れてしまっているからでもある。
     ゲームは誰でも知っている昔話や童話をベースにした筋書きに参加させられた債務者たちが命を的に各ゲームで指定された指示に従い指定内容を具現化することで進行する。指定内容を実行しなかったり、反する行為を続け警告にも従わなかった場合は始末される。賞金総額が生き残った参加者の人数で均等に配分される為、生き残り1人である場合に賞金は最大となる。参加者全員が多大の債務を抱え多くが多重債務者であるから参加者は皆「必死」である。出資者達(=観客)はその必死な生き残りの為の闘争を観て楽しんでいるのである。
     だが、意外にも追い詰められているハズのゲーム参加者達が命賭けの争闘故に極めて真っ当な人間性を露わにしたりもする。観ている観客の一人としては、この点に最も興味を惹かれた。ヒトを判断する際に孟子の説いた性善説と反対の性悪説があるが、そんなお伽噺でも聞くような感覚にすら襲われかねない。
     何れにせよ、このゲームの合間にゲーム参加者達が暮らしてきた世界での生活が再現されるシーンが挟み込まれそれらの生活と参加することになったゲーム世界での様々な対応が対比されることになる為、元々生活していた時空での因果関係や異空間での時空への輪廻転生やその逆も絡みつつ、個々の転変の在り様が描かれて物語が膨らむ点がグー。無論、エンタメの常として最終的に絶望の淵に観客を引き摺り込んで離さないというような残酷性はない。而も、恐らく脚本家も若いのであろう。心底悍ましい、凄みのあるキャラクターは1人も登場しない。演者達も皆若い。これらの上演条件が作品を明るいものにしている。

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    2025/07/31 11:28

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