葬送の教室 公演情報 風琴工房「葬送の教室」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★★

    くっきりと強く深く
    舞台に
    くっきりと、
    役者たちの秀逸なお芝居が重なり合って・・・。

    気がつけばしっかりと命を背負った
    想いたちの歩みに
    深く浸潤されていました。

    類稀な傑作だと思います。

    ネタバレBOX

    最初のシーンがシンプルに
    物語に観客を引き入れ、
    道標を観る側に置いて。

    シーンが移り
    枠組みの内側の物語がゆっくり立ち上がっていく。
    その場に人が集うごとに
    急ぐことなく、でも冗長になることもなく
    的確に、空気が醸成されていきます。

    遺族、航空会社の関係者、当時の検察医、新聞記者・・・、
    それぞれに想いがあって。
    理性で抑制された想いも
    理性から溢れだした想いも
    不要なバイアスがかけられることなく
    秀逸な解像度で描き出されていきます。
    役者達から伝わってくる想いに
    観る側が信じることができるだけの
    実存間があるのです。

    立場は違っても、
    その修羅場に立会った心情や
    その事故で失われた命に対する
    それぞれの想いの真摯さがしっかりと伝わってくるから
    立場が交錯し、
    躊躇が生まれ、
    貫かれ、
    或いは揺らぐ姿に曇りがない。
    立場の差こそあれ
    それぞれのキャラクターが、
    あの日の修羅に立会い
    失われた命を抱えて過ごした姿が、
    冷徹なほどクリアに伝わってくる。

    そして、その重さが、個々の立場に絡み合って、
    様々な軋轢が舞台を満たしていきます。
    纏うものと事故の修羅の間に挟まれて
    キャラクターたちから滲み出して来る
    それぞれの想いが
    怒りや苛立ちや痛みとともに
    観る側を巻き込んでいく。
    その中でも歩みを進め、
    冷徹に事故の再発へと向かう娘を失った男の姿に
    息を呑む。
    ひとりずつの事故への思いに加えて
    感傷でも美談でも括られることのない
    背負った命の重さに支えられたような
    執念のあからさまさに
    強く心を打たれる。

    舞台上にステレオタイプの正しさなどはなくて
    それでも、その場の人々は、
    その男の歩みに連れられるように
    それぞれの一歩を踏み出していきます。
    検察医も新聞記者も、
    殉職した姉を持つ女性も
    個々の遺族たちも、
    ・・・そして航空会社の職員たちも
    それぞれの形で歩みを進める。

    男の歩みはやがて、冒頭のシーンに行き着く。
    それは、物語の場面から
    長い時間をかけての
    達成の姿なのだと思う。
    でも、2度目のそのシーンには
    冒頭とは異なった、
    単なる達成感に留まらない
    修羅の時に身を置いたものたちへの
    深い鎮魂の思いを感じて。

    そこには残されたもの、
    そしてその事故を背負いつづけたものたちの
    質感がしっかりと宿っていました。

    観終わってから、時間がたっても
    舞台の印象がさらに様々に解けて
    心を満たす。

    作劇のすばらしさに加えて
    役者達の安定感や作り出す圧倒的な密度に支えられ
    舞台美術や照明にも
    しっかりと捉えられて。

    この舞台、
    再見するというよりは、
    時間を置いて再び観たいと思う・・・。

    本当に秀逸な舞台だったと思います。

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    2010/10/13 16:36

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