やわらかいヒビ 公演情報 カムヰヤッセン「やわらかいヒビ」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★

    板倉チヒロすげえ
    というしかない。 というのが、まずもっての感想。

    涙、鼻水垂れ流しで理不尽さへ憤り時には熱く、時には残酷なほど
    温かい、この主人公を熱演した板倉チヒロの役者精神は、出演者が多い、
    この舞台でも輝き過ぎてました。 お陰で主人公のシンクロ度マックスです。

    「Mと1」の話を語り出した時がこの作品のハイライトと勝手に思ってます。
    この舞台の成立は半分以上彼の貢献によるところが大きいと感じました。

    そして、ラスト。 幻想的で、ほんの少し、かけら位の希望が感じられる、
    美しい光景でした。 よく考えれば残酷でもあるけど、それも含めて
    「生きる」ことに少しだけ思いをはせました。

    ネタバレBOX

    事前の想像よりも、結構ダークで残酷な物語でした。

    他の方が気を悪くしたら申し訳ないけど。。
    6月に観たひょっとこ乱舞「水」を思い出していました。
    「生きる」ことが美しいだけでなく、時に暗くて残酷だ、というテーマ、
    構成や場面転換が複雑ながら巧みに練られていること、時々入る
    冷静だけど詩的で核心を突く長台詞。

    共通点を感じました。

    登場人物が多い作品だけど、何人共感出来るかで評価が決まりそう。
    私は牧、佐々木(弟)、ラミアは好きだけど、美津子、小原、上谷、タダシは
    ド真ん中で嫌いなタイプだなぁ。 

    上谷は牧、タダシは「化学が人を傷つけない世界」に反射させて
    結局自分しか映って無いのだもの。 結局は自分のエゴが透けて
    みえてくるというのか。。 だから、自分は良くても人がどう思うか
    想像の及ばない発言を繰り返しちゃうんだよね。。

    あの場面で、「私を殺して」って、理解はものすごく出来るけど
    絶対に言えない台詞だよ。。 牧の心情を考えたら。。
    ただ、自分が男なのでそう感じるだけで、また他の人は違うかも知れない。

    思うのだけど、「アカデミー」に選抜された人達。 ある分野に
    秀でたはずの、いわば「エリート」集団なのに、自己中心が過ぎて
    子供の集団のようなイメージを持ちました。

    佐々木(兄)をいびってた連中とか、上谷と共同研究チームを組んでた
    二人組とか。 でもああいうのってエリートに限らず純粋培養されて
    しまった人にはよくありがちな性格なのだけど。

    そのアカデミーを事実上支配するのが、「大人になれない、
    永遠に子供のまま」のタダシだなんて、皮肉にも程があるよ。

    そんな人間ばかりの「ノアの方舟」なんて「進むも地獄、戻るも
    地獄」だね、まさしく。意図しての設定だったら脚本家は凄過ぎだけど。

    あと、タダシが何故末期状態の上谷を連れて帰ろうとするのか
    よく分からなかった。 最初、故意にボロボロにして、その状態を
    研究して何かに役立てるつもりなのか??と思ったけど、どうも
    ブラックホールの開発に彼女が必要らしい。 じゃ、なんで
    ボロボロにする必要があるんだろ?

    そこが腑に落ちなかったのが残念。

    それにしても、最後の場面のラミア含むセットの美しさと幻想性は
    今後ずっと覚えていそう。 でも、あれって上谷が死んで、ラミアが
    「解放」されたからこそ、のあの光景なんだよね、よく考えたら。

    「生きる」って、「生命」って残酷なものだな。
    でも、あのシーンだけでも観に行って良かった、と思えた。

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    2010/10/05 23:37

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