満足度★★★★
熱意 白と黒
すべての衛星放送が検閲された閉塞の近未来。ジョージ・オーウェルを連想させるような、管理された社会にあえて挑戦する三人の男。着想がなかなかいい。ストーリー自体楽しんで観ることができた。
約二時間の劇で、おそらくは普通の劇の二倍はあろう台詞の多さ。よ~く聞いていると、その一つひとつの台詞の中に潜む言葉が実に豊かなのである。脚本家の言葉や表現に対するセンスの良さが伺われる。
言葉の量が多いことからして、役者はその分饒舌である。しかも早口、さらに絶叫する場面がかなりの部分を占める。
脚本家にとっては想定外だったと思うが、この豊饒な脚本ははたして成功したのか。残念ながら否。
良く言えば「宝の持ち腐れ」、意地悪に言えば「舞台を忘れたデスクワークの産物」であった。
二つの意味で、豊かな言葉は、観客の心を豊かにはしてはくれなかった。
一つは単純に、早口と絶叫で、聞き取りづらい箇所がいくつもあったこと。
二つめは、饒舌の場面で、役者の演技が停止してしまうこと。歌にたとえれば、メロディーを抜いたラップを聴いて、欲求不満になっているかのよう。
通して、役者さんの熱い演技は胸を打つものがあっただけに、それが「力み」として受け止められてしまったことは残念至極。
言葉を控えめにした、演技で勝負するものを次回以降に期待したい。