さるヒト、いるヒト、くる 公演情報 ポケット企画「さるヒト、いるヒト、くる」の観てきた!クチコミとコメント

  • 実演鑑賞

    満足度★★★★

    拠点とする北海道を主題とし、その土地と人の足どりを登場人物とともに観客も辿ることができる、短編ながら重要な意義を持つ意欲作である。

    ネタバレBOX

    本作の特徴は、二つの世界を描いている点にある。一方は、現在の北海道の森で生活を営む彫刻家をめぐる世界であり、他方は北海道の歴史について学ぶ学生をめぐる世界である。この二つの世界はやがて、戦時中の北海道の一家を描いた漫画を軸に混ざり、劇場全体を巻き込む。
    二つの世界を交錯させる手法もさることながら、観客もその世界に引き込む劇作術は見事である。北海道の歴史について不勉強である私でも、学生に感情移入することで、作品が描く国による北海道の搾取の問題を理解することができたし、背景を知りながらその土地に住むということについて思いを馳せることができた。特筆すべき点はその描き方である。アイヌ民族の住む土地を強制的に統合した日本への恨みや責任を糾弾するわけではなく、その土地の背景を知り、知りながらその土地に住むということにフォーカスした本作は、歴史と共に生きていくことへの誠実さと尊さを克明に観客に伝えていた。
    ただ、あまりに短時間であったために全体が駆け足であった印象が否めず、また舞台装置や衣装がややファンタジー的造形だったことは作品にとって効果的だったとは思えなかった。さらに、音響が大きすぎて台詞が聞こえない箇所があったことは決定的瑕疵となってしまっていた。
    しかし、上記のような欠点があったにせよ本作は良作と言える出来であった。加えて、昨今のヨーロッパを中心に注目されているエコロジーやサステナビリティを意識した演劇作品として、本作を評価することもできるだろう。折角作中でそれらを実践している実在の人物(作中では彫刻家たち)を取り上げているのであれば、公演自体もその試みが見られるとより良いのではないだろうか。

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    2024/06/29 02:27

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