墨を塗りつつ 公演情報 風雷紡「墨を塗りつつ」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★

    細かい点が気になって
    小劇場で久々お芝居らしいお芝居を観た気分です。
    戦争が人々に微妙な影を落としている。挿入曲が昔の邦画の音楽のようで、描かれた時代の雰囲気に合っていた。
    本格的な座敷のセットも良かった。セットの家の構造上、自分の席の位置からは見切れて、座敷の中がよく見えなかったのが残念。
    縁の下に転がる手桶やざる、籠の文鳥など細かいところまで小道具にも気を配った芝居だけに、気になった点もいくつか。それはネタばれで。

    ネタバレBOX

    お芝居の筋については、既に詳しく触れているかたもあり、重複するので控えます。全体に映画のような作りで、その分、暗転も小刻みなのが、舞台としてはどうなのかと思った。蒻崎さんの好演は評判通り、素晴らしかったです。蒻崎さんが演じる女性を見ていて、何年か前の殺人事件の容疑者の「実の子どもが私にはなつかないので腹が立つときもあった」という言葉をふと思い出した。
    いくら殺人現場に幼女がいたからといって、幼女には殺人の動機もなく、犯人が幼女だと周囲が容易に信じ込むのが、私にはよく理解できなかった。
    殺人の真の謎がわからぬまま終わるのも、推理小説の書き手の場合は反則で許されないのだけれど、戯曲の場合はかまわないのでしょうか。芝居としてはよくできているけれど、気になった。
    あとは、衣裳のこと。細部に凝っている芝居だとなおさら目に付いてしまう。玉音放送のときに、主人側の女性はモンペをはいていないのが時代的に不自然。また、8,9,10月と季節が変化し、この季節、薄物、一重、袷と、和服も変化するが、旧家の人が着たきり雀で夏でも袷を着ているのが気になった。終戦後とはいえ、田舎は都会に比べ、衣服を食糧に代える必要性が少なく、現在も旧家ほど古い高価な着物が残っているほど。質素な暮らしで和服がないという家なら、それなりに粗末な服を着ているのでは?モンペは数が揃わないという劇団の人の声を聞くこともあるが、知り合いに20分でモンペを縫える方法を知っている人がいるので、必要ならご紹介します(笑)。着替えや予算の都合もあるのかもしれないが、凝るなら徹底してほしい。
    もうひとつ気になったのは、人物の仕草。使用人は襟にツギなど当てて感じを出しているが、季節が変わっても、仕草がまったく変化しない。つまり、寒くても、暑くても、同じような表情で、薄着でスタスタ歩いていく。刑事が踏み込んだのも、元旦という設定なのに、ただ普通にコートを着て立っているだけで、季節感が役者の演技から漂ってこない。信州が舞台のようですが、季節の差ははっきりしている地域なのでは?
    それから、劇団も細部にこだわって作っている写実的な作品で衣裳や所作を重視するのは当たり前で、歌舞伎やシェイクスピアの時代の「正月と言ったら正月」という芝居とはまったく次元の違う話なので念のため。だったら、演劇に衣裳考証という職分はいらないことになります。
    昔の武家や格式ある戦前の旧家は、「畳の縁や敷居は主人の頭と同じ」というしきたりがあって、畳の縁や敷居を踏まず、縁に物を置いたり、座ったりしなかった。観察していたら、それができている役者もいたので感心したが、できていない人もいた。
    芝居はこういうところに綻びが出るもので、自分はすごく気になる。

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    2010/08/16 13:59

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  • 風雷紡さま

    ご丁寧なコメントをいただき、恐縮です。

    >ただもんぺに関しましては当時のいわゆる諏訪旧家の育ちの年寄りたちに取材した結果、主人格はもんぺはあまり着用しなかったという結果でした。

    そうでしたか。諏訪ってそういう土地柄なんですか。知りませんでした。それは失礼致しました。ふだんはそうでも、戦時中でももんぺを着用しなかったのでしょうか?京都みたいに空襲がほとんどないところの大家のお嬢さんでも、もんぺは強要されてたそうなので、不思議に感じてしまったのですが。

    人間ドラマのお芝居としては大変素晴らしいと思ったので、次回作もぜひ、拝見したいと思います。

    2010/08/16 17:46

    tetorapackさま

    コメントありがとうございます。この日、頭が疲れてたので幼女のことも自信がなく、tetoraさんのレビューを読み、安心したのです。それから、あの朝鮮人のシュウジという人は亡くなった美しい大奥様の櫛を大切にしていたということですが、大旦那様の殺害に手を貸したのは、そのこととも関係があるのでしょうか?それと、口のきけない下女の殺害動機がよくわからなかったです。

    2010/08/16 16:43

    ご来場本当にありがとうございました。
    ありがたいご感想にも本当に感謝です。
    美術は実際郷里の諏訪の古い蔵から持ち出した小道具、建具を使いました。
    ラジオ踏み台なども当時のものです。
    諏訪で生まれ育った私なので信州の気候の変化はもちろん承知しています。
    ただもんぺに関しましては当時のいわゆる諏訪旧家の育ちの年寄りたちに取材した結果、主人格はもんぺはあまり着用しなかったという結果でした。
    貴重なご意見本当にありがとうございます。
    所作大事ですよね。
    着物を来ていたので最大限気をつけたつもりですが…。
    サスペンスはきっかけで、戦後の価値観の大変動の中での家族・家・国家などが主題ではあったのですが、ロジックの甘さは反省点の一つです。
    今後益々精進してご満足いただけるものを作っていきますので、また是非懲りずにご来場くださいませ。
    重ね重ね貴重なご意見本当にありがとうございました。

    2010/08/16 15:39

    きゃるさん

     いや、いや、また、共通点が多いコメントに安心しつつ、興味深く読ませていただきました。

     そうですよね。全体的には、うん、うん、と何回もうなずきつつ、読んでしまうほど、私が感じた点と同じように、きゃるさんも感じられたんだな、と。

     最大にそう思った点は2つで、その1つが女性(下女でなく主人側)の衣装です。さすが、女性のきゃるさんのように細かくは感じなかったものの、少なくとも、玉音放送を聞く時点で、着物を着ているのは100%あり得ないですよね。私は、生糸が様々な軍関係の物に使われる貴重な軍需物資でもあったことから、当然、あの辺りも工場地帯は空襲のターゲットに入っている訳ですし、いつ襲われるか分からない状況で着物はないな、と。とても、しっかりした芝居でリアルなだけに、こうした点はしっかりして欲しかった、と思いました。

     2つめは、やはり自分のレビューにも書きましたが、最後に犯人は分かったものの、その動機が明瞭にされていないという点です。併せて言えば、もちろん、幼女が犯人でないことは簡単に分かるのですが、それにしても劇中で登場人物が皆、この幼女が毒をもったと簡単に信じてしまうのは、いささか首を傾げざるを得ないように私も感じました。
    なので、
    >いくら殺人現場に幼女がいたからといって、幼女には殺人の動機もなく、犯人が幼女だと周囲が容易に信じ込むのが、私にはよく理解できなかった。
    との、きゃるさんの一言に安心してしまいました。

     とはいえ、質感として、とても素晴らしい芝居だったと思います。それは自分のところに書いた通りです。

     上記の2点がきちんとしていれば、私も間違いなく☆5個を付けたはずです。

    2010/08/16 14:48

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